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おじさんの砂漠探検

「ぐ、ぉぉぉ……」


 朝……超、頭、痛い。

 完全な二日酔い……っていうか、暑い。なんで俺パンツ一丁で砂の上に寝てるんだ?

 ってか、周り……ひでえ。多くの獣人が倒れ……いや、酔い潰れてる。倒れてるのは男ばかりで、女性の獣人は片付けをしている。

 俺は起き上がり、傍に落ちていたシャツ、ズボンを履いてフラフラ歩く。

 すると、バレンとアオが近づいてきた。


「おはようございます。ゲントクさん……大丈夫ですか?」

「ああ……バレンか」

「……おじさん、昨日は楽しそうだったね」

「ううう……飲みすぎた」


 頭がガンガンする。ううう、なんかこういうの毎回あるな。

 バレンが俺の背中をさすり、アオがコップに魔法で水を満たして差し出してくれた。

 遠慮なく受け取り、俺は一気飲み……ああ、染み渡るぜ。

 オアシスを見ると、太陽の光でキラキラ輝いて見える……ああ、落ち着いた。


「ふう、ありがとうな。いやー……はっちゃけたわ。ははははは」

「ゲントクさん、すごく酔ってましたね……まさか、全裸でオアシスに飛び込むなんて思いませんでしたよ。皆さん、笑ってましたけど」

「……おじさん、サンドローネさんにキスしようとして殴られてたよ」

「え」


 な、何をしたんだ俺は!! な、なんか怖い予感がする。

 すると、サンドローネとリヒター、ユストゥス、バルジャンとロッチャ夫妻、リオが来た。

 サンドローネを見ると、めちゃくちゃ怖い顔で睨んでくる。


「……おはよう。変態さん」


 あ、これヤバイやつだわ。

 俺は背中が冷たくなり、とにかく頭を下げる。


「さ、サンドローネ……その、なんかやらかしたようだから謝るわ。すまん!!」

「……まあ、いいわ。私も少し酔ったし」

「……なあ、俺、何したんだ?」

「……リオ様。ゲントクも起きたようなので、仕事に入りましょう」

「ああ、そうだな。ははは、ゲントク……謝罪は仕事で返すといい」


 ううう、朝っぱらから背中が冷たいぜ……もうアホな飲み方絶対にしないぞ。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、切り替えて行こう。

 サンドローネを見ると、やや厳しい目付きだったが言う。


「ゲントク。これから会議だけど、あなたは参加しなくていいわ」

「え」


 ま、まさか……俺の顔を見たくないから、ってこと?

 ううう、俺の馬鹿……酒乱の変態野郎め!! バカバカ!!


「何を勘違いしてるのか知らないけど、まず最初に話すのはインフラ関係についてよ。国を作る以上、住居、城、街道整備、下水設備とかを最初に話し合うわ。そこに関しては、あなたの突発的な閃きは必要ない。アレキサンドライト商会で請け負うから」

「あ、そういうことか」


 なるほどな。

 周りを見ると、テントばかりでろくな建物がない。あるのはデカいオアシスだけだ。

 必要なのは住居だ。そして街道、下水設備、流通、物流関係……そういうのを、アレキサンドライト商会が請け負うのだろう。

 建物の建築とか、国内に通す街道とか、難しい話は俺にはわからん。


「ゲントク、あなたはユストゥスと護衛の二人、砂漠の案内人を連れて、サハラ王国内を見て回ってちょうだい。そこで、あなたが見た物、思いついたことを、その都度ユストゥスに説明して」

「……そ、そんなことでいいのか?」

「ええ。私が見た限り……あなたは会議室でアイデアを出すより、実際に現地で見てから何かを思いつくことのが多いでしょうからね」

「さっすがサンドローネ、俺のことよくわかってんじゃねぇか」

「ふん。護衛だけど……」


 と、アオ、バレンが前に出る。


「私とバレン」

「アオは小回りが利くし、ゲントクさんやユストゥスさんの周囲を守ることに長けています。言っては悪いですが……ロッソやリーンドゥ、ヴェルデなどは大技で一掃するのが得意ですしね。それに、砂漠地帯ならボクとアオが『水』の魔法を使うことで、ゲントクさんやユストゥスさんを冷やすこともできるでしょう」

「暑いの、大変だしね」


 なるほどな。

 少し離れた場所で、こっちをジーっと見るロッソと目が合った。

 ブランシュがロッソに何か言うと、二人が手を振る。

 ウング、リーンドゥも連結馬車の方にいた。どうやら切り離しをしているらしい。


「移動は、切り離した連結馬車の一両目を使います。アオ、ヒコロクに引いてもらえるんだよね」

「うん。一両だけで十分」


 そういや、そんな話したっけな。

 移動は切り離した一両目。連結馬車をヒコロクに引っ張ってもらう。

 ヒコロクは、すでに馬車とドッキング。ヤタロウはウングとリーンドゥがブラッシングしていた。

 と、ここで獣人が二人来た。リオが二人を紹介する。


「ゲントク。砂漠の案内はこの二人に任せる。砂漠地帯、湖、森のことなら何でも知っている」

「初めまして。犬獣人のドギーと申します」

「妻のベスです」


 ドギーさん、黒い体毛の純血の犬獣人、ベスさんはハーフの白髪犬獣人だ。

 そして、ベスさんの足にしがみ付く一人の少女。


「わうう……」

「こら、離れてなさい」

「くぅぅん。やだー」


 濃い灰色の髪をした女の子だ。灰色の犬耳、犬尻尾を持ち、毛皮の服を着ている。

 三歳くらいかな……ユキちゃんたちと同い年くらいか。

 ベスさんが申し訳なさそうに言う。


「申し訳ございません。娘のシアです。叔父夫婦に預けていたのですが……」

「わうう」

「ははは。そのくらいの子供なら、お父さん、お母さんと一緒がいいんじゃないですか?」


 イヌミミ少女……ユキちゃんたちとはまた違う可愛さがあるな。

 俺は暑さ対策に用意したドロップ缶を取り出し、シアちゃんに一つ渡す。


「ほら、飴なめるか? おいしいぞ」

「わふ……なにこれ」

「飴だ。口に入れて、舐めるんだ」

「わうう……ん、おいしい!!」


 シアちゃんは飴を口の中で転がし、目を輝かせた。

 頭を撫でると、イヌミミがパタパタ動き、尻尾もブンブン揺れる。

 イヌミミ……ちょっと硬いな。クロハちゃんのオオカミ耳はシュッとして大きいけど、シアちゃんのイヌミミは少し小さくて硬い。手触りも少し違う。

 

「わううー、おじさん、ありがと」

「いいぞ。そうだ、シアちゃんも一緒に行くか?」

「わふ?」

「げ、ゲントク様。さすがにそれはご迷惑では」


 ドギーさんが言うが、俺は首を振った。


「馬車は広いですし、一人増えても問題ないですよ。それに、何日か掛けて回るんだし、このくらいの子供が親から離れ離れになるのは、さすがに寂しいでしょう」

「わふう」


 シアちゃんを抱っこしてみると、思った以上に甘えてくれた。

 俺の首元をクンクン嗅ぎ、首筋を噛んでくる……くすぐったいわ。

 俺はユストゥスに聞く。


「ユストゥス、いいか?」

「まあ、私としては問題ありません」

「じゃあ決まり。ドギーさん、ベスさん、案内よろしくお願いします」

「……わかりました。では、よろしくお願いします」

「ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」

「わううう」


 シアちゃんをベスさんに渡すと、甘えるようにベスさんの胸に顔を埋めた。

 さて、行くメンバーも決まった。


「じゃあサンドローネ、俺たちはいろいろ見て回るわ」

「ええ。あなたが思いついたこと、気付いたこと、どんなくだらないことでもいいから、ユストゥスに言うようにね。それと、わからないこと、気になったことは随時、ドギーさん、ベスさんに言うこと」

「ああ、わかったよ。ようは砂漠のリゾートっぽいアイデアを出せばいいんだろ」

「そう。ふふ、期待しているわ」

「わううー」

「……ふふ、可愛いわね」


 と、サンドローネは手を伸ばしてきたシアちゃんを撫でた。

 さて、準備はできた。


「おっさん、気を付けてねー……はあ、アタシが護衛したかったなー」

「おじさま、気を付けて。アオ、頼みましたわよ」

「……任せて」

「ゲントク。そっちにシュバンを乗せたから、食事の用意とか雑務を任せていいからね」

「ウング、リーンドゥ、そっちは任せるよ」

「……おう。オマエも、オヤジをしっかり守れよ」

「いいなあ。ウチもそっちにがよかったよー」


 さて、こっちはロッソたちにお任せだ。

 俺たちは馬車に乗り込む。


「おお、これはすごい……これが『文明』ですか」

「綺麗……知らない物ばかり」

「わうう、キラキラしてるー!!」


 馬車の中が珍しいのか、ドギーさん一家が驚いていた。なんか新鮮でいいな。

 

「ドギーさん、最初はどこに行きます?」

「そうですね。まずは、オアシスから西にある、『アナイアレイトジャングル』に行きましょう。国土の六割を誇る樹林で、かつて多くの獣人たちが暮らしていた森になります。今でも、少数の獣人たちが暮らしていますよ」

「アナイアレイト、ジャングルか……」


 さてさて、砂漠のジャングルか。何があるのかね。


 ◇◇◇◇◇◇


 ちなみに、俺はここで、まさかの出会いをすることになり、大いに驚くのだった……ふっふっふ。いやホントマジで、すごい出会いだぜ。

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ドギーさん、娘さんがゲントクさんにすぐに懐いてちょっぴりショック 出会いの相手が気になります
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