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異世界の学園

 翌日。仕事休みで遊びに来たロッソたちに聞いてみた。


「なあお前たち、学校って行ったことあるか?」

「アタシはない。村にいた昔教師やってたおじいちゃんが、子供たち集めて文字とか計算とか教えてくれた」

「……私、組織で習った」

「わたくしは教会で習いましたわね」

「私はあるけど」


 と、果実水を飲みながらヴェルデが挙手。

 

「おお、それでどんなところだ?」

「どんなところって……勉強するところよ。毎日毎日、勉強勉強……正直、面白いところじゃないわね」

「時間割とか、どんな感じだ?」

「時間割? よくわかんないけど、文字の書き方、歴史、淑女教育とか、裁縫とか……」

「うげえ、つまんなそう」


 ロッソが舌を出して嫌そうな顔をすると、ヴェルデも「まあね」と頷いた。

 アオがまんじゅうをモグモグ食べながら言う。


「おじさん、学園に興味あるの?」

「ああ。今度、それに関する依頼を受けることになってな……俺、魔道具職人なのに、最近は料理とか日本の知識しか披露してない気がする」


 今度保温弁当箱を作ってサンドローネに提案してやる。

 すると、アオが挙手。


「おじさん、お手伝い必要?」

「うーん、どうだろうな。まあ、知恵を出すのにあたって、この世界の学校……ヘミロスとジェミニーがどういう学校を作ってんのか気になるところだが」


 少し考えたが、学校なんて異世界も日本も変わらん気がする。

 すると、ドアがノック……噂の二人がやってきた。


「わお、同じ顔……でも、ムネの大きさ違うわね」


 おいロッソ、俺も気付いたけど指摘しない……というかできない部分の指摘を声に出すな。

 ほんの一瞬、ゲミニー(貧乳)がピクリと反応した。

 だが、すぐに笑顔になる二人。


「ごきげんようゲントク様」

「さっそく始めましょう」

「お、おう。とりあえず座ってくれ。俺が何をすればいいのか話を聞くから」


 ロッソたちも気になるのか帰らない。

 俺の前に双子が座り、ロッソたちも囲むように立っていた。

 うーん、別にいいんだが……アオ、俺の隣というか、腕にくっつくのやめてほしい。


 ◇◇◇◇◇◇


「まず、お前たちのこと、教えてくれよ」


 そう言うと、ヘミロスとゲミニーが顔を見合わせ語り出す。

 

「私たちは、アツコの話を聞いて『学ぶ』ことに興味を持ちました」

「そして、学ぶことの大切さを、私たちだけでない、いろいろな種族、人たちに広めたい……そう思っていたら」

「アツコが『まるで先生だねえ』と言いました。センセイとは何か?」

「アツコは『人にものを教える人』と言いました。そして、教育という制度を聞き、私たちは決意しました」

「学ぶことを、世界に広めようと。そして、世界中に『学園』を作り、今に至ります」


 相変わらずテレパシーみたいな喋り方しやがる。

 するとヴェルデが言う。


「学園制度は『双子座の魔女』が築いたって聞いたけど……」

「おや、あなたはヴェルデさんですね」

「エーデルシュタイン・ジェミニ学園を中途退学された」

「え……私のこと、知ってるの?」

「当然」

「学園に在籍する者は全員、知っています」


 すっげえ……記憶力やべえな。

 話を聞くと、この世界にある学校は全て、双子座の魔女が提唱した『学園制度』を元に作られているらしい。

 その学園制度だが……うーん、ちょっとなあ、って感じだった。


「……えっと、早朝八時から十二時まで座学。昼食にパンとミルクを支給し、午後三時まで勉強。そのあとは自習……帰宅のタイミングは三時以降なら自由」


 休み時間は個々のタイミングで。ただし午前中は三十分のみ、午後は十五分だけ。休憩は基本的にトイレ休憩のみ。

 授業内容は、教師が制作した問題用紙をひたすら解く。わからないところを監督教師に質問する形式。


「…………おいおい」


 拷問かよ、ってくらい面白さゼロで厳しさしかない学園だった。

 ロッソたちもその内容を見て。


「アタシ、学校行かなくてよかったわ」

「……私も」

「うーん……わたくしも」

「私は通ったわよ。でも、私の通ったところは、午後は礼儀作法の勉強だったわね」

 

 学園によって内容が違うようだが、基本的にこのスタイルらしい。

 異世界の学園事情……知ってよかったような、知りたくなかったような。

 すると、ヘミロスが言う。


「実は、エーデルシュタイン・ジェミニ学園の生徒数が増えまして、今ある校舎では手狭でして」

「ファルザンに相談したところ、新しい土地と校舎の手配を協力すると言われました」

「そこでゲントク様の話をリチアから聞き、アツコと同じ世界からきたあなたなら、アツコのいた世界の学園に対するアイデアを聞けると思いまして」

「あー、なるほどなあ」


 納得した。

 まあ、アイデアというか、普通に学校のシステムを説明すれば劇的に変わるだろう。

 

「ゲントク様、一度、私たちの学園に来ていただけませんか」

「え……行くのか?」

「ええ。見ていただきたいのです」


 アイデアだけ出してじゃあお任せ、ってわけにはいかんのか。

 まあ……この世界の学校に多少の興味はある。


「わかった。じゃあ、見学に行くよ」

「感謝します」

「では、ご案内いたします」

「え、今から?」


 というわけで……この世界の学園、『エーデルシュタイン・ジェミニ学園』へ向かうことになった。


 ◇◇◇◇◇◇


 職場から馬車で一時間、エーデルシュタイン第八区画にある貴族街の中に学園はあった。

 馬車から降りたのは俺、双子、ロッソにアオにブランシュ。ヴェルデは「私はここ退学になった経緯あるし行きたくない」と帰った。


「ここが学園かあ……デカいなあ」


 デカい正門……っていうか、金属の扉だった。

 なんだろう……この、刑務所の入口感。門があまりにもゴツく、入ったら出れないような感じ。

 壁も高いし白一色……なんか、入るの怖いんだが。

 すると、双子が門に近づくと門が開いた。


「それでは、中を案内します」

「どうぞ皆さま」


 双子は中へ。


「……アタシ、なんか行きたくないな」

「……私も」

「あら、わたくしは少し興味ありますわね」

「俺は……まあ、仕事だし行くけど」

「ふふ。ではおじさま、エスコートお願いしますわね」

 

 ブランシュは俺の腕を取ると、アオがムッとして逆の腕を取る。


「……行く」

「お、おう」

「なになに、アオも行く気満々じゃん。ああもう、アタシも行く!!」


 ロッソに背を押され、俺たちは学園内に入るのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 今日は休校なのか、人が誰もいない。

 校舎内は普通……貴族が通う学園と聞いたから華やかなのを想像していたけど、飾り気のない廊下、教室内は横長のテーブルが並び、木製の椅子が並んでるだけだ。

 黒板もない、掲示板もない、テレビも……まあこれはあるわけないな。

 

「ゲントク様、気になることでも?」

「ああ。授業でやった習字もなければ、黒板もない。ロッカーもないし、掃除道具入れもない……教室というよりは使ってない会議室みたいだな」

「……はあ」


 意味わからんよな。うん、改善点は多そうだ。

 さて、校舎内を見回ったが……全部同じ作りの教室だった。

 あと、トイレと職員室くらいしかない。ここ、マジで『勉強する建物』だ。遊び心もないし、勉強するしかない。


「…………」

「ゲントク様」

「何か?」


 思わず双子をジッと見てしまう。

 美人なのは間違いないが、面白さというか、ユーモアセンスがなさそうだ。こんな面白味のない学校になっちまうのも仕方ないかもしれん。

 

「おっさん、美人に興味津々なかんじ~?」

「……おじさん」

「ふふ。おじさまも男性ですわねえ」

「違うっつの。なあヘミロス、ジェミニー……俺の言う通りにやってくれるのか?」

「はい。ゲントク様のアイデアは、我々魔女を何度も危機から救ったと聞きます」

「なので、あなたのアイデアを期待しています」

「よし。じゃあ、俺のアイデアをまとめて、必要になる魔道具も作ってみるわ」


 とりあえず、もっと面白味のある学校にしてやる。

 必要そうな魔道具も……くっくっく、楽しみにしておけ。

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― 新着の感想 ―
知識チートをやりたいからって、現地人を馬鹿にするのはどうなの? しかもこの二人は現地でも指折りの知識人なんでしょ? 学校という箱物を作って1000年もの間運営し続けてもロッカーや黒板も思いつきません…
ジェミニ?ゲミニ?
某浜田が行ってた学校かな?(すっとぼけ
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