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護衛を雇おう

「ヴェルデ、俺の護衛になってくれ!!」

「え?」


 襲撃者の撃退から一夜明け……俺はロッソの別荘へ行き、ヴェルデにお願いをした。

 昨日の襲撃の件を説明すると、ヴェルデは考え込む。


「ゲントクを狙った襲撃ね……しかも、腕利きの魔道具技師が狙われているって情報もある、か。シュバン、情報収集を」

「はっ、お嬢様」


 シュバンは一礼し、部屋を出て行った。


「で、護衛の件だったわね。ロッソたちもいつ帰るかわからないし、私で良ければ引き受けるわ。もちろん、報酬は払ってもらうけどね」

「もちろんだ。三食おやつ付きで護衛を頼む。せめて、俺専用の装備が完成するまでは」

「装備って……ああ、全身鎧だっけ」

「ああ。というわけで、さっそく頼む」

「わかった。マイルズ、護衛の支度をお願い。私はこのままゲントクと一緒に行くから」

「かしこまりました。お嬢様」

「じゃ、ゲントクの職場に行こっか」


 ヴェルデ……メチャクチャ頼りになるな。

 俺はヴェルデと二人で職場へ向かい、いつも通り店を開けるのだった。

 

 ◇◇◇◇◇◇


 店を開けたはいいが、気が気ではない。

 昨日、俺を狙った襲撃者は、そのまま警備兵に引き渡した。

 サンドローネにも報告が言ったはずだが、まだ何も来ない。

 俺は、事務所で書きものをしている……アーマーの武装を考えているんだが、襲撃の件を引きずっているせいで、いいアイデアが浮かばない。


「ナノテク技術は無理だし……いずれはスーツケースタイプの持ち運びできるアーマーが欲しいな。でもまあ今は……うう、アイデアが思いつかん」

「ちょっと。ブツブツ言うのはいいけど、この私が護衛しているんだから、何があっても大丈夫よ。現に今も、ここから半径二百メートル内の『呼吸音』や『声の振動』に網を張って、怪しいヤツがいないかチェックしてるんだから」

「え……二百メートル? しかも、声?」

「声ってのは空気の振動でしょ。私は『風』が得意だから、魔力で網を張って周囲を検知するなんて、朝飯前……まあ、疲れるから一日はできないけど」


 すっげえな。そういやヴェルデも規格外なんだった。

 ヴェルデは目を閉じ、耳を澄ます。


「聞こえてくるのはどうでもいい会話ね。暗号で会話してる可能性もあるけど……まあ、私がこの建物内にいるって気付いてると思うし、手出しするなんて馬鹿なことはしないと思う」

「頼りになる」

「あら? この気配は……サンドローネさんね」


 ヴェルデがそう言った三分後、サンドローネが入って来た。

 すげえ、ヴェルデの『空気レーダー(適当に命名)』はマジで当たる。

 サンドローネはソファに座り、ヴェルデを見てから俺に言う。


「護衛を雇ったなら安心ね」

「ああ。昨日のこと、聞いただろ?」

「ええ。あなたを狙った誘拐犯……正確には、魔道具技師を狙った誘拐犯ね」

「……物騒だな。怪しい犯罪組織でも背後にいるのか?」

「……ミカエラが、魔道具技師をかき集めた動きが関係しているかもね。あなたは知らないかもだけど……魔石に魔導文字を書くことのできる魔道具技師は貴重な人材よ。どの魔道具商会も欲しがる人材ね。誘拐までするのは聞いたことがないけれど」


 え……そうなの。

 魔導文字はただ書けばいいモンじゃない。その文字の意味を理解した者が彫ることで、真なる効果を発揮するとは聞くけど。

 俺はアレキサンドライト商会の専属だけど、フリーの魔道具技師はいくつもの紹介と『契約』し、魔石に魔導文字を彫ったり、魔道具を作ったりするとか。

 『専属』か『契約』か。商会からすれば『専属』のがいいに決まってる。

 でも、ミカエラがフリーの魔道具技師を大量に集めたりして、小規模の魔道具商会がけっこうなダメージを受けたらしい。

 ただでさえ、魔道具技師の四割くらいが、クライン魔導商会と専属契約しているしな。


「それに……魔道具を犯罪に利用する悪党もいるわ。魔導武器の始まりも、闇に落ちた魔道具技師から生み出されたとも言うしね」

「…………」

「ゲントク。気を付けなさい……私の方でも、探りを入れるから」

「ああ、わかった。それと、お前も気を付けろよ」

「ふふ。私、こう見えて強いのよ」


 そう言って、サンドローネは出て行った。

 ヴェルデは紅茶を飲みつつ言う。


「悪の組織ならいくつも潰してきたけど、魔導武器はめんどうなのも多いわね」

「魔導武器。俺の専門じゃないし、あまり興味ないから知らんけど……どういうモンなんだ?」

「そうね。簡単なのは、剣とか槍に『熱』や『炎』の魔石を組み込んだ属性武器とか。盾に『硬』の魔導文字を組み込んだ硬い盾とか」

「へー、俺でも作れそうだ。まあやらんけど」

「でも、自分用に作るんでしょ?」

「ああ。俺がイヤなのは、俺の考えた武器とか技術が大勢に広まって、それが誰かを殺したりすることだ。俺自身が自衛のために使うならいい」

「ふーん。ね、なんか作ったのなら見せてよ」

「いいぞ。まあ、リパルサー……いや、『収束雷電砲(サンダービーム)』と『熱剣(ヒートブレード)』搭載の手甲しかないけど」

「へえ、面白そう」


 俺は、隣の空き地でヴェルデに《ビーム》を見せ、驚かせるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 夕方、シュバンとマイルズさんが合流した。

 マイルズさんはけっこうな荷物を持っている。


「お嬢様。スノウ様に、しばらくゲントク様の元に泊まると説明をしてまいりました。このままゲントク様の元へ行けますので」

「そ、ありがと」

「え、うち来るのか?」

「三食おやつ付き、って自分で言ったじゃない」


 そういや言ったっけ。

 まあ、うちは広いし、空き部屋いっぱいあるからいいか。

 そしてシュバンが言う。


「お嬢様。裏の情報屋から仕入れた情報ですが……どうやら、とある犯罪組織が新たな魔導文字を開発したそうで、それを利用した魔導武器を作るために、魔道具技師を誘拐しているそうです」

「へえ……さすがシュバン。いい情報ね」

「まま、待った!! は、犯罪組織!? おいおい、そういうのは警備隊に報告しないと!!」

「待った。あのね、裏の組織っていうのは、表に痕跡が残るとすぐに消えるわ。そして、痕跡を徹底的に消す……警備隊が動き出すころには、もぬけの殻ってパターンね。シュバン」

「はい。そもそも、オレが利用した情報屋も、犯罪組織の中にある情報屋なので。表立った瞬間、全てが消えるでしょうね」


 もし物語の主人公とかなら、「俺らで潰そう!!」とか「じゃあ、隠密行動だな」とか言うんだろうけど、俺としては消えるなら消えて欲しい。

 警備隊に報告し、表立って動き、犯罪組織が察知してもぬけの殻になってほしい。

 自分で動いて犯罪組織を潰すとか、そういうのは物語の世界だけにしてくれ。正義感だけで動いて最善の結果になるのは、都合のいい物語の世界だけだ。


「と、とにかく、俺は関わりたくないぞ……なあ、その犯罪組織、どっか別の国に行ってもらおうぜ。犯罪組織が動いてるってことを警備隊に報告するだけで、この辺りからはいなくなるんだろ?」

「……まあ、それも手だけど。あんたはいいの? ここじゃないどこかで、魔道具技師が攫われて、怪しげな魔導文字を利用した魔道具がいっぱい作られて、それが殺しとか戦いに利用されることになるのかもよ?」


 ぶっちゃけ、戦争とかにならなければ問題ない。

 俺じゃない誰かが、その犯罪組織を潰すかもしれないし……俺やアツコさんみたいな異世界人がどっかにいて、正義感あふれる偽善チート主人公野郎が解決してくれるかもしれない。

 

「……とりあえず、お前たちは護衛をしっかりやってくれ。ロッソたちが戻ってきたら、この話を共有しよう」

「まあ、アオやウングが動けば、犯罪組織は数日で潰滅するでしょうね。あの二人は元アサシンギルドの、マスターアサシンの称号を持つ凄腕だし」

「……いちおう、完成を急ぐか」


 俺は、まだインナーだけの『自己防衛スーツ』を眺めるのだった。

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