第百六十八章 その頃の彼ら 9.「ワイルドフラワー」~アラシの場合~(その3)
とりあえず、アラシには刺繍を頑張ってもらおう。生憎と「ワイルドフラワー」には【刺繍】のスキル持ちはいないため、十全な指導をする事はできない。しかし、これが運営のロードマップ上にあるのなら、何を刺繍するかはアラシが心得ているのではないか。
「【魔道具作成】が目標なんだから、魔法陣とかそういうのを刺繍するんじゃないの?」
「そういう事ってできるのかな?」
「それについては、それとなく情報を集めてみるしか無いよね」
「えぇ。何だったら、住人の魔道具職人に訊いた方が早いかもしれないわ」
「あー……確かにそっちの方が良いかも」
「変な噂にもならないだろうし」
「何ならあたしたちが技術を習って、アラシ君に指導してもいいんだし」
「……それもありかもしれないわね。貴女の知り合いに知ってそうな人、いるかしら?」
「う~ん……心当たりを当たってみる。幸い、ナンの町の人たちの好感度は、それなりに稼げてる感じだし」
――という訳で、「ワイルドフラワー」で【魔道具作成】のスキルを持つエリンとサフランのうち、比較的手が空いていそうなサフランがその任――住人からの訊き込みと、その先のアラシの指導――に当たる事になった。
アラシの使役主でありながら、【魔道具作成】のスキルを持っていないミモザ――金策用に取得したのは【調薬(基礎)】だった――は、至って不本意そうな表情である。
「無念……」
アラシの教育のためだけに、【魔道具作成】のスキルを取りかねない様子であったが、
「召喚獣と召喚主が、同じスキルを持っててどうすんのさ」
――と、メンバーたちから引き留められて断念する。
尤も、断念に至った最大の理由は、傍らでアラシが〝そうそう〟と言うように頷いていた事に拠るのだろう。
「……何か……想像以上に賢そうよね」
「アラシ君、ミモちゃんの事を宜しくね」
〝任せておけ〟とでも言うかのように、さっと前脚を一本挙げて諒解のジェスチャーを示すアラシ。……どうやら頼れる相棒が見付かったようだ。
----------
《「ワイルドフラワー」の新規使役獣一覧》
個体名:パピィ [召喚獣]
種族:ハイディフォックス(幼体)
レベル:種族レベル1
種族固有スキル:【隠蔽 Lv1+】
取得スキル:【風魔法 Lv2】
個体名:ミック [使役獣]
種族:ミミックジャガー(変異種;幼体)
レベル:種族レベル1+
種族固有スキル:【擬態 Lv1+】
取得スキル:【風魔法 Lv1+】
個体名:アラシ [召喚獣]
種族:トラップスパイダー(幼体)
レベル:種族レベル1+
種族固有スキル:【紡糸 Lv1+】【糸細工 Lv1】【掘削 Lv1】
取得スキル:【刺繍 Lv0】
取得予定スキル:【魔道具作成】
---------




