第百六十四章 カンチャン村滞在記(一日目) 1.宿泊所自室
いつもの時間にいつものようにSROにログインしたシュウイ。
何やらワールドアナウンスがあったようだが、そこは先陣争いに一掬の関心も寄せないシュウイの事。〝よそはよそ、うちはうち〟とばかりに我が道を行くのが彼のスタンスである。
そんなシュウイはこの日のスケジュールについて考えた。いつもならエンジュとモックとも相談して……となるのだが、今日から暫くはいつもと違って単独行動になる。
そろそろ期末試験が迫っているというリアルのスケジュールに鑑みると、いつもどおりのログイン時間を確保するのが難しくなるだろうという事で、試験が終わるまでは各自の都合で動こうという事で合意したのだ。
ちなみに、これはシュウイ……というか蒐一の幼馴染みたちも同様で、今日明日の土日までは普段どおりにログインするが、その後の三日間、言い換えると「試験前週間」が始まるまでの三日間、匠と茜はログイン時間を一~二時間に自粛、試験前週間と試験期間中はログイン禁止という事になっている。ちなみに、蒐一と要は自主判断に任せるという事で、これは親も納得してくれている。
また、この期間中は学校で会ってもSROの話はしない事になっている。それというのも匠と茜が、〝SROの話題を振られると自慢されてるみたいで、自主規制を守れるかどうか怪しいから〟と訴えたからであった。
まぁ、その辺りの事情は脇へ置いて、要は今日というこの日に何を行なうかという事なのだが、
「うん……やっぱりお墓参りが優先だよね」
図書館自習室での談論の結果、優先してやっておいた方が良い案件として、①墓参り、②御神酒造り、③【人形遣い】の試用、④【5トンの術】の試用、の四つが挙げられていた。
このうち①と②はシュウイ個人の必要性から、③と④はそれに加えて他のプレイヤーの便宜を考慮して――という理由によるものだ。
優等生的な判断では、まずは公共の利益を考えて……となるのだろうが、幼馴染みたちの判断は、〝緊急性が無い以上、ゲームの中くらいは私利私欲を優先させるべき〟という、或る意味で身も蓋も無いものであった。
況して匠に言わせると――
〝墓参りについちゃ早くしないと、好感度が下がるかもしんねぇからな〟
――だそうである。
……それは誰の、いや何の好感度だろうか。
幽霊からの好感度というなら、慎んでご遠慮申し上げたいところだが、
〝それを別にしても、マナーってもんがあるだろ〟
……この意見には、蒐一としても頷かざるを得ない。況して自分に危険を教えてくれた「恩人(?)」の墓に参ろうというのだ。ダラダラと先延ばしにするのは不敬だろう。
それには蒐一もシュウイも同意するが、小さな問題が一つあった。
……その「お墓」はどこにあるというのか。
幼馴染みたちの言に拠ればカンチャン村にある筈だというが、土地鑑も何も無い初めての場所で、どうやって一個人の墓など探すのか。
尤も抜かりの無い幼馴染みたちは、ちゃんとこれにも答を用意してくれていた。教会を訪ねろというのである。
成る程、SROで墓地を管理しているのが教会である以上、そこを頼れというのは尤も千万な話である。ただ……
「……幽霊のお墓を探しに、教会の墓地へ行くのかぁ……」
……オカルト嫌いという個人的事情に鑑みて、頗る気乗りがしないだけだ。
「けどまぁ、そんな贅沢を言えるような状況じゃないよね」
――斯くして、シュウイはカンチャン村に到着した早々から、墓地を訪ねる事を余儀無くされたのであった。




