第百六十一章 プリズン・ブレイク~脱獄クエスト第二弾~ 4.新たなる門出?
「って訳で、お前さんたちにゃドクター・ヘイの助手を頼みたい」
「ドクター・ヘイ?」
「あぁ。例の軟化薬を創った錬金術師だ。本来のコードネームは『H』なんだが……どうにも本人が嫌がってな」
「Hなドクター……」
「そりゃ嫌がりもするだろうよ……」
「……まぁ、ギルドでもその心情は理解できたから、そのまんま『ドクター・ヘイ』で通してる」
実は件の軟化薬、闇ギルドでさえ人体実験はまだだったのを、〝どうせアイツら死なないし〟――という暴言的な発案によって三人組に投与されたのだが、そんな事まで馬鹿正直に話すつもりはギルド側にも無い。まぁ、ドクター・ヘイがうっかり口を滑らせる可能性はあるにせよ、それはそっちの問題であって、ギルド当局は一切関知しない。
「けどよ、錬金術師の助手ったって、俺たちゃそんなスキルもアーツも持ってないぜ?」
「まぁ、念のためにスキル枠は空けてあるから、取得できなくもないけど……」
「悪堕ちした時点で、市販されてるスキルオーブの購入は難しくなってる筈だからなぁ……」
件の錬金術師とやらに師事すれば、ひょっとしてスキルの一つも生えるのだろうか? それとも、ギルドの方でオーブを用意してくれるのか?
「あ~いや……悩んでるとこを悪いが、お前さん方に頼みてぇのはそっちじゃねぇ。実験d……あ、いや、細々した雑事やなんかの方だ」
「……今、〝実験台〟って言いかけなかったか?」
「気のせいだ」
「〝細々した雑事〟に三人も必要なのか?」
「〝数は力だ〟って云うからな。足りないよりゃ余る方が良いだろう?」
「「「………………」」」
三対のジト目が突き刺さったものの、闇ギルドの男は〝暖簾に腕押し〟〝糠に釘〟〝蛙の面に小便〟〝馬耳東風〟といった体の涼しい顔である。これ以上追及を図ったところで益は無いと悟った三人組、諦めたように今後の事を訊く事にする。自分たちはどこに行けばいいのか?
「その――ドクター・ナントカの研究室みたいなとこへ行く訳か?」
「もしくは秘密の研究所?」
「マッド・サイエンティストじみてきたな……」
「いや……んな怪しい研究所、ナンにあったか?」
「あったとしても壊されてるんじゃ?」
「あー……ツインヘッドグリフォン三体が大暴れしたらしいからなぁ」
自分たちが引き起こしたモンスター・トレインを、まるで天災か何かのように語る様子に、闇ギルドの男も呆れたが、それはさて措き当座の問題から。
「いや、さすがに目立つ研究所なんかは建ててねぇよ。飽くまで闇に隠れて生きる存在だからな、俺たちゃ」
「あぁ、迂闊に人に姿を見せられないか」
「そういうこった」
「で――具体的には何処に?」
「あぁ。取り敢えずはナンの町を離れてもらう事になる」
何しろナンの町は、今や半壊の有様である。幾人かは復興の手伝い――闇ギルドとしても、ナンの町の早期復興は望ましいので――に残るとしても、冒険者が過度に集中している現況では、ナンの町を主な活動の場とするのは難しい。本拠も移した方が良いだろう。
ならば何処に手を出すかという話なのだが……抑の話の発端となったペンチャン村には、シュウイという手強い用心棒が縁付いたようだし、迂闊に手を出すのは危険が大きい。
そんな状況で闇ギルドが活動できそうな、そして実入りが大きそうな場所は……
「お前さん方にゃシアの町に移ってもらおうかと思ってる」
「「「シアの町!?」」」
次回から三話ほどのリアル会になります。




