第百六十一章 プリズン・ブレイク~脱獄クエスト第二弾~ 3.裏事情
そもそも地元の闇ギルドが、闇墜ちプレイヤーとしても微妙さを拭えない三人組に声をかけ、剰え脱獄の手引きまでしてくれたのは何故なのか。その原因を辿って行くと……何と言うか、これまたシュウイのやらかしに起因していた。
いや、〝やらかし〟呼ばわりは公平でないかもしれない。シュウイの行動にはどこにも非難されるような部分は無かったのだから……一般的な目線では。
――話を端的に要約すれば、シュウイがゴロッキーとフダッキーを捕縛したのが切っ掛けであった。
ペンチャン村の「芋掘り鉱山」、そしてそこから得られる良質な鉄鉱石は、予てから闇ギルドの垂涎の的であった。何とかしてその鉄鉱石を手に入れんものと、闇ギルドが派遣したのがゴロッキーとフダッキーのコンビであったのだ。
御し易そうな異邦人を引っ掛けて、面倒なメタリワームを片付けさせる。そこで村人たちが出て来れば、異邦人と村人の抗争に発展するだろうから、自分たちはその隙に鉄鉱石を頂戴してトンズラをかませばいい。
聞いただけでは抜かりの無さそうなこの計画は、〝引っ掛けた〟異邦人が選りにも選って、【看破】スキルと「見習い保安官」ジョブ、留めに『治安の執行者』称号のトリプルホルダーであったという奇跡的な巡り遭いの悪さによって、敢え無く水泡に帰す事となった。【看破】に敏感に反応した「見習い保安官」のジョブと『治安の執行者』称号が手配犯リストとの照合を行ない、その結果をシュウイに通達したのである。
解り易い悪人面に加えて身分の詐称と犯罪歴まで曝露されては、〝美味い話〟で引っ掛かけられる訳も無い。あっさりと御用になって幕引きである。
で――これに困ったのが闇ギルドである。
鉄鉱石の入手に失敗しただけでなく、エージェントとして密かに村に派遣していた、ゴロッキーとフダッキーの二人まで失う事になった。早急に人員の補填を図る必要があるのだが、異邦人によって少なからぬギルドメンバーが討伐・捕縛されている現状では、それも中々難しい。
ここでPKプレイヤーと協力できれば闇ギルドとしても都合が好かったのだが……どういう訳か〝村人は補充困難な人的インフラ〟を唱えるPKプレイヤーたちは、一般民衆に手を出す事を良しとしない。何なら地元の闇ギルドとも反目しかねない有様である。
これでは二進も三進もいかない……筈であったが、如何なる神――邪神だって神は神――の微笑みか、モンスタートレインによるテロ行為――地元の闇ギルドから見ても如何なものかと言いたくなる暴挙――によって収監中の異邦人の犯罪者と、折良くコンタクトをとる事ができている。ここは彼らを取り込んで、人員の補填を図るのが上策ではないか? 力量のほどは未知数だが、それでも数合わせの使いっ走りぐらいにはなるだろう……
……という、割と身も蓋も無い気の迷いから、元「背徳の四徒」である剣士のゴーマ、魔術師のボウ、盗賊のダラクという三人組を脱獄させる事になったのである。
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「……てな訳で、お前さんたちにゃちょいと手を貸してもらいてぇんだわ」
「俺たちとしてはそりゃ構わないぜ」
「そうそう、こんな面白イベント、スルーする訳にゃいかないって」
「あぁ、そうだな」
「イベント……?」
プレイヤーならではの気楽なノリで、揃って首を縦に振る三人組。その軽さにどことなく不安を覚えたものの、既に匙は……いや、賽は投げられた後である。行く手に「不安」の二文字がちらつこうが何だろうが、もはやこの道を進むしか無い。
――では、そんな三人をどこに配属してどう使うか。
闇ギルドとしても些か頭の痛い問題であったのだが、
(「おぃ……確か『ドクター』が人手を欲しがっていたよな?」)
(「あー……必要なのは理解するが、志願者が全く出て来なかったアレか」)
(「丁度好いイケニ……いやいや、貴重な補充人員だし、あっちへ廻すか」)
……という、何やら不安な会話の結果、三人組の配属が決まった。




