第八十六章 篠ノ目学園高校 7.放課後(その5)
「残念だけど、当面はそこまで手が回らないわね。従魔の件で確かめたい事が色々できたし」
――あっさりと袖にされる。
「俺たちもトンの町まで戻る訳にはいかんしなぁ……掲示板に流して善意の参加者を募るか?」
「……話が広がると面倒じゃない? 悪くすると蒐君の事がバレかねないわよ?」
「まぁ、その点は俺も気になってるんだが……検証班の連中は知りたがるんじゃないのか? 黙っていてバレたら更に煩そうだし」
「確かに……」
匠の指摘に考え込む要であったが、
「バレないようにすればいいんじゃないのかな?」
――という、茜の身も蓋も無い正論の前には、抗する力を持たなかった。
「……まぁ……報せたからどうなるって訳でもないし……ある意味で建設的な判断かもな」
――というところに話が落ち着いて、次なる話題は……
「……領主に謁見――って……」
「また凄いクエを掘り出してきたな……」
「……言っとくけど、僕のせいじゃないからな?」
蒐一はそう力説しているが、だったら誰のせいだと言うのだ?
「……原因を追及するのは、不毛でしかないから止めましょう。蒐君はこのクエストを受けたのよね?」
「うん。もうすぐ試験だから、会うのは試験明けって事にしてもらってる」
「なら、こいつもその結果を待つしか無いな」
「前例の無い事だし、対策も講じようが無いわよね」
「でさぁ……みんなは試験前、どうするつもり?」
さすがに試験直前までVRゲームに入り浸る訳にはいかない。親も教師も好い顔はしないだろうし、万一赤点でも取った日には、ゲーム自体を禁止される可能性が高い。課金とかは別にしても、VRゲームは色々と金食い虫である。親の反感を買って好い事など何も無い。
「……いや……さすがに俺だって試験前には控えるぞ?」
「匠……問題はそれだけじゃないぞ?」
気付いてないのかという顔付きで、蒐一が警告を発するが、案の定キョトンとしているのが二人。
「はぁ……いいか匠、実際にログインしてるかどうかに拘わらず、テストの点が悪かったら、それはゲームのせいにされるんだぞ?」
理不尽にして無慈悲な予測を突き付けられて、一気に顔が青褪める二人。
「VRゲームに手を染めた以上、せめて平均点はとらないとな」
「親も納得しないでしょうね」
要まで追い討ちに参加するのを見て、絶望的な表情を浮かべる匠と茜。
「はぁ……二人は試験前、ログイン禁止な。勉強は僕と要ちゃんで見てやるよ。……いいよね、要ちゃん?」
「幼稚園の頃からの腐れ縁だものねぇ……えぇ、私は構わないわ」
ログイン禁止という無慈悲な宣告と、試験勉強のお手伝いという救済措置に、悲喜交々の表情を浮かべる二人。
そして――そんな二人に見せ付けるように、
「……僕も試験前はログインを控える――しないとは言わないよ?――つもりだけど、要ちゃんは?」
「茜ちゃんがログインしないのに、私だけログインっていうのも何だしね。……あぁでも、さっき話した子は、種とか苗の世話があるから短時間でも毎日ログインするって言ってたから、メールの遣り取りぐらいはするかもね」
「ふぅん……」
要の発言を聞きながら、蒐一は内心で考えていた。
未チェックのスキルを確認するぐらいにしておこうかと思っていたが……例のズートの実の発芽試験、他人に任せっぱなしというのは……幾ら何でも拙いのではないか?
(……種子を配っただけで、自分は何もしないっていうんじゃ、クエストのクリアーにはならないかもしれないしなぁ……。少しくらい試してみるべきかな?)
この決断がまたぞろややこしい展開を引き起こすのだが……今の蒐一にそれを予測する手だては無かった。
……そろそろ学習してもいいのではないかと思うが……
次回からはゲーム内の話に戻ります。




