第八十三章 トンの町 18.新人たちの相談(その2)
唐突なモックの発言を聞いて、可愛らしく首を傾げるエンジュ。
「――大きな話?」
「少なくとも、シュウイ先輩一人の考えじゃないと思います」
シュウイは昨日イーファンの宿場に出向いた筈。そこで何らかの情報を得たとして、エンジュの姉が所属するパーティもその場に居合わせたのだろう。その上で、得られた情報を吟味した上でのアドバイスとなると……
「……多分ですけど、何かまだ明かせない情報を持っているんじゃないかと思います」
「――って事は?」
「えぇ、ここはアドバイスに従っておいた方が良いでしょう」
――そう言われても、
「……あたしたちって、戦闘職じゃないんだけど……」
「……高い武器とか持ってても、多分使いませんよね……」
どちらかと言うなら、職業に関わる方面で気合いの入った道具を揃えるべきなのだろうが……
「……転職すらまだなんですよね、僕ら……」
「初心者以前の状態なのに、道具に拘るどころじゃないよねぇ……」
「と言うか、そんな道具に出会う機会すらあるかどうか……」
「抑今の僕たちじゃ、そんな道具を手に入れても、宝の持ち腐れですよねぇ……」
う~んと考え込む二人であった、今は当面の問題をクリアーするべきだろう。
「調理道具と……何よりも調味料を入手しないと……」
「ナントさんの話だと、結構色んな種類がありそうな口ぶりでしたよね……」
「けど……そういう話って、掲示板に出た事が無かったよね?」
「基本的に住人の店にしか置いてないってところがネックなんだと思います」
「そう言えば……最初に例の薬剤店を訪ねた時も……」
「えぇ、入店の許可を貰えた途端に、店が認識できるようになりましたよね」
何らかの条件を満たしていないと、住人の店を認識する事すらできないようだ。だとすると、今まで情報が上がってこなかったのも納得できる。
「条件を満たしたプレイヤーは、多分ですけど、住人に迷惑がかかるのを懸念して、この情報を拡散していないんじゃないでしょうか」
「さっきの騒ぎの事を考えると、否定できないよねぇ……」
先程のPvPの発端となったのはナントの店だが、問題が大きくなったのは、ナントに肩入れした住人とプレイヤーが対立する構図になっていたためだ。それを考えると、傍迷惑なプレイヤーが暴走する可能性は無視できない。
「多分、大丈夫そうなプレイヤーにだけ、一本釣りみたいな形でこっそりと情報が流れているんじゃないでしょうか」
「問題は、あたしたちがどうなのか……って事よね」
「……シュウイ先輩から色々と紹介してはもらいましたけど……先輩抜きで店を訪れるのは初めてですからねぇ……」
第二陣が参入するまでほとんどボッチに近いレベルでトンの町に居座っていたシュウイは、プレイヤーよりも住人の知り合いの方が多くなっていた。その甲斐あってと言うべきか、市場を始めとして色々な店の主に顔を憶えられ、住人相手の店にも知己が増えていた。二人はそれらの知り合いも、シュウイから紹介してもらっていたのである。
「……とにかく、先に市場を廻ってみましょう」
「そうだね」




