第八十三章 トンの町 17.新人たちの相談(その1)
さて、「ナントの道具屋」を後にしたエンジュとモックの二人であるが――
「一人で五人組のパーティを相手にして……凄かったよね……シュウイさん……」
「数の暴力なんて、それを上回る暴力の前には無力でしたね……」
口を衝いて出るのはやはり、先程の虐殺場面……ではなく、PvPの感想であった。
第二陣の新人が相手とは言え、五人組のパーティをたった一人で翻弄・瞬殺してのけたのである。種族レベルの差がどうこうとか言う以前に、もっと根本的なところに、超えられない格差があるような気がする。
「何だか色々と変なスキルを使ってたような気がしますけど……」
「けど……スキルって、あぁも一方的に相手を翻弄できるもんなの?」
――だとしたら、スキルを持つ者が圧倒的に有利ではないか。
「カウンタースキルとかもある筈なんですけど……先輩が使ったスキルが、物凄く珍しいスキルだったんじゃないでしょうか」
「相手の人たち、揃って変な反応してたものねぇ……」
何よりケッタイだったのは、武器を持っていない方の手で斬りかかろうとしていた剣士の様子であったが……それ以外にも……
「……壁役の人……突然盾を奪われてたよね……」
「その前に、魔術師が詠唱の途中でシャックリをしたのも、怪しいと言えば怪しいですよねぇ……」
ともあれ結論としては――
「僕たちにはちゃんとした……多分、ちゃんとした……指導をしてくれてますし……」
「……方法に少し思うところが無い訳じゃないけど……結果だけみると、有効だったのは間違い無いものねぇ……」
「シュウイ先輩の指導を受ける事になったのは、一応幸運と言えるんじゃないでしょうか……?」
モックの語尾に疑問符が付いているのは、
「……あの笑顔が少し気になるんだけど……」
戦闘中にシュウイに降臨――もしくは憑依――した「微笑みの悪魔」のせいらしい。ただ、
「……まぁ……今のところ、僕たちには――少ししか――実害はありませんし……」
「……差し引きしたら利益の方が大きいよね……」
――という結論に落ち着いたようだ。
「……そう言えば……先輩のサジェスチョン、どう思います?」
「中古でも品質の良いものを買っておくようにって言われた事?」
「えぇ。理由は教えてもらえませんでしたけど、重要な事っぽかったですよね?」
「……そう言えば……」
――エンジュが思い出したのは、昨夜の姉の言動であった。
〝シュウイ君の指導を受けてるんだよね?〟
〝SROの話? うん、色々と指導してもらってる。……結構大変なところもあるけど、得られるものは大きいかな〟
〝それは良い。これは私からの忠告。シュウイ君の言葉には、真摯に耳を傾ける事〟
「……って、妙に思わせぶりな事を言ってたんだよね……」
ゲームの外でのアドバイスを受けたと聞いて、ふむと考え込むモック。
「……エンジュさんのお姉さんって、確か攻略組の上位でしたよね?」
「うん、『ワイルドフラワー』っていうパーティ」
「――って事は……これは結構大きな話なのかもしれませんね」




