第八十三章 トンの町 13.「ナントの道具屋」(その5)
先日拾ったばかりのスキルだが、思わせぶりなスキル名からすると、野営料理に特化した料理スキルなのかもしれない。……であれば、ここはシュウイも調理器具を購入しておくべきか? 幸いと言うべきか、熱源となる携帯ストーブは、調薬にも使うので所持している。荷物を容れるアイテムバッグも、PKから奪った分が複数ある。多少荷物が増えたところで大丈夫だろう。
シュウイはナントに相談して、調理に向いたナイフを買う事にしたのであった。
「うぅ~……ここまで状況が厳しいとは……」
「調味料も塩くらいしかありませんからねぇ……」
頭を抱えている新人二人であったが、
「「いや、あるよ」」
先輩二人が事も無げに言い放った台詞を聞いて、思わす顔を上げる事になった。
「「……はい?」」
「や、だから」
「あるんだって、調味料」
「「――はいぃ!?」」
店の中だというのに、思わず大声を出す新人二人だが……無理もない。
ゲームの中に碌な調味料が無いというのは、プレイヤー全体の怨嗟のようなものになっていたのだ。
「いや……実際に塩味以外の味付けの料理って、あったじゃん?」
「そう言われれば……」
「でも、掲示板とかには……」
「プレイヤーメイドじゃないから、あまり知られてないみたいだよ?」
「住人の皆さんは使ってるみたいだけどね」
――と、先日タクマから聞いたばかりの――そして、「ワイルドフラワー」の心を折ったばかりの――情報を開陳するシュウイ。
ちなみにナントの方は、住人の同業者やお得意さんから教えてもらったらしい。
「ただし忠告しておくけど、その調味料さえあれば誰でも料理ができる――なんてチートなものじゃないからね?」
リアルのカレー粉のように、これさえあれば何でも食える――というような神通力までは発揮してくれない。それでも――
「醤油みたいなもんだから、使い易くはあるんだけど。……魚醤か肉醤の一種らしくて、少し癖が強いかな」
だとしても、そんな有り難い代物があるのなら、これは入手しておく一択であろう。
「――どこに売ってるんですか!?」
「住人がやってる雑貨屋なら、大抵どこでも扱ってるみたいだよ」
「ちなみにウチでは扱ってない」
――という身も蓋も無い答を聞いて、力無く頽れた二人であった。
・・・・・・・・
「そう言えば、イーファンでエンジュのお姉さんに会ったよ」
「え? 姉がいたんですか?」
「うん。お姉さんが『ワイルドフラワー』のメンバーだって知ってたら、エンジュたちも連れてったんだけど……ごめんね?」
「いえ……あの……姉が何か失礼な事をしませんでしたか?」
外面は優秀な姉のポンコツな一面を知る妹としては、そっちの方が気がかりであったのだが……
「あはは……」
初対面で「朱の君」呼ばわりされたシュウイは、乾いた笑いでそれに答えた。……笑う以外どうしろと言うのだ。
「あの……すみませんでした……」




