第八十章 その頃の彼ら 1.モックとエンジュ
シュウイたちがイーファンの宿場で目紛るしく出来する事態と情報に翻弄されている頃、トンの町に残されている者たちはどうしていたかというと……
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「……おぃ……おぃ、ちょっとそこのチビっ子……お前らだよ」
自分たちの事らしいと気付くのに少し時間がかかったが、ようやく振り返ったモックとエンジュの前には、プレイヤーらしき数名の男たちがいた。
エンジュは――やや不安な様子を滲ませながらも――キョトンとしていたが、モックにはその顔ぶれに心当たりがあった。
「確か……ログイン初日に冒険者ギルドでお会いしましたよね? 住民の方たちからの指導をギルドに申請した時に」
モックの発言でエンジュも思い出したらしい。ははぁというように頷いている。
心なしか、思い出してもらった男たちもほっとしたような様子である。
「思い出してもらったんなら話が早い。一体何があったんだ?」
「……何……とは……?」
薮から棒に問い詰められても、何をどう答えるべきか判らない。……いや、それ以前に、何の事を言われているのか判らない。
事情が解らず不思議そうな二人に向かって、もどかしげな様子で男たちが……いや、第二陣のプレイヤーたちが問い直す。
「だから……坊主たちが紹介された、あのプレイヤーだよ」
「何だか知らんが、随分金回りが良さそうじゃないか? 一体何を教わったんだ?」
「住民たちにも伝手ができたみたいだし……」
あぁそういう事か――と、納得する二人。
シュウイの狩りの巻き添え……もとい、お零れに与ってドロップ品のお裾分けを貰い、資金面では大きく潤っている。あのシュウイの連れという事で、ギルドの職員や住民にも顔を憶えられている。
金とコネの獲得という点で見れば、第二陣の中でも頭一つくらい抜きん出ているように思えるだろう……端から見れば。
「だから……先輩プレイヤーですよ。確かに住民じゃありませんけど、住民たちの間に有力な伝手を持ってらしたんで……」
この町にいるシュウイの知人は、圧倒的に住民の方が多い。
……と言うか、第二陣が参入するまでプレイヤーはほとんどいなかったのが、ここトンの町である。一足遅れてSROに参入した上に、「スキルコレクター」のせいでこの町から出づらかったため、シュウイの知人は必然的に住民の比率が高くなっていたのである。伝手の一つや二つ、できようというものだ。
それと聞いて臍を噬む新人たち。あの時、指導を断らなければ……と悔しがっても後の祭りである。
ならばせめて――というつもりなのか……
「……な、なぁ……どこに連れて行ってもらったんだ? 良かったら……」
〝教えてもらえないか〟――と続けようとしたところで、途端に表情の抜け落ちるモックとエンジュ。それを見てドン引きのプレイヤーたち。これは……何か地雷を踏んだか?
「……何かを得るためには、相応の犠牲というか……苦難を乗り越える必要があるんですよ。……皆さんには王道を進むようお勧めします……」
――それ以上の質問はできなかったプレイヤーたちであった。




