第七十八章 「キャプテン」 15.サンチェスさんの従魔学講座~実習篇~(その2)
近在を少し廻ってモンスターの解説をしてもらおうという話になった訳だが、一つ問題があるのは時間の事である。長逗留を決め込む肚の「ワイルドフラワー」はともかく、シュウイとタクマはそう長っ尻をする訳にもいかない。シュウイは新人二人の指導があるし、タクマにしてもクエストの後始末をパーティメンバーに押し付けて来ているのだ。
ここまでのあれこれで意外に時間を費やし、現在の時刻はそろそろ昼前になろうかとしている。なら、少し早いが昼食を摂った後で軽くその辺を見て廻り、夕方前にシュウイとタクマが離脱すればいいという事に話が纏まった。ちなみに、昼食を作るのはタクマである。
そして現在、サンチェスの先導で森の中を歩いている訳なのだが……
「お嬢様方のご希望を考えるに、偵察役や警戒役がお奨めでしょうな」
「偵察?」
「警戒?」
サンチェスの提言に、一同揃って首を傾げる事になった。
「あ……でも、モフモフ板にそんな事が上がってたっけ。ホーンドラビットをテイムしたら、警戒能力が高くて助かってるとか」
――ちなみにモフモフ板とは、使役術師向けの掲示板の事である。
「そう言えばテムジンさんも、偵察は重要だって言ってたっけ……」
「偵察にしろ警戒にしろ、重要なのは解るけど……」
「あたしたちの希望って?」
そう。それが解らない。どちらかと言えばメンバーの間では、壁役のモンスターを希望する声が上がっていたのだ。
「何、簡単な事ですよ。お嬢様方はできるだけ早く、この近在で使役獣を確保するのをお望みでいらっしゃる」
「……そういう事……。確かにこの辺りという条件では、あまり強力なモンスターは捕まりそうにないわね」
「そういう事です。そして逆に、この辺りで見られる者たちが今後も役に立つ状況を考えるならば――」
「……必然的に警戒役か偵察役になる訳ね」
「そういう事かぁ……」
言われてみれば当然の話だ。
トンの町では――ある意味チュートリアルフィールドのような扱いのためか――ウルフ系やベア系、果てはタイガー系に至るまでの様々なモンスターが出現したが、ここイーファン近郊の山中では、それら哺乳類系のモンスターはほとんど出現しなくなっている。爬虫類系や節足動物系のモンスターでいいのなら、それなりに強力なものもいるのだが、「ワイルドフラワー」の総意としてそういうモンスターは願い下げとなっている。その条件で戦闘向けの使役獣が欲しいのなら、トンの町まで戻って哺乳類系の戦闘役と契約するしか無いのだが……
「時間が惜しいし、新規参入組でごった返しているトンの町に行くのは……」
「トンで火に入る夏の虫?」
「誰が巧い事を言えと……けどまぁ、そういう事だよね」
「新人たちの指導を押し付けられるのが目に見えてるわよね……」
「ん。指導依頼を受けるに吝かではないけど、今は自分たちのクエストを優先したい」
となると、この辺りで戦闘向けでないモンスターと契約するという結論になる。
「けど、今までにそれっぽいモンスとか見なかったんだけど?」
「当然、逃げ隠れしていたのでしょうな。戦闘力が低いのですから」
「あぁ……そういう事……」
「納得できる話だよね」
「という事で、僕のお薦めはスライムですな」
「「「「「「「スライム?」」」」」」」




