第七十八章 「キャプテン」 11.付喪神~改めて~(その1)
【鑑定EX】の説明が丁度終わった頃合いで、ワイルドフラワーの残り三名がシュウイたちのところへやって来た。どうやら掲示板への報告が済んだようだ。
「お疲れさま。その様子だと大分反響があったみたいね」
「いや~……突っ込みが鋭くて参ったよ。事情通のNPCからの確かな情報だって押し切ったけど」
――成る程。確かにサンチェスは〝事情通のNPC〟には違い無い。
「それで……どんな感じだった? 手遅れなんて事は……?」
「今のところ問題は報告されてないみたい」
「ほら、少し前に餌付けについての情報がアップされたじゃない? アレを読んで、暫く様子見を決め込んでいたプレイヤーが多かったみたい」
「ん。そのせいで決定的に不幸な事態には至っていない模様」
それは好かったと胸を撫で下ろすシュウイたち。
「まぁ、これでどうにか重荷を下ろせた……って、何でそんな目でこっちを見るのさ?」
「ごめんなさいね。リーダーたちが報告している間に、こっちで新たな進展があったのよ」
声色と表情だけは申し訳無さそうに、カナが不吉な台詞を放った。
「そ……それって、まさか……?」
「場合によっては……掲示板への報告をお願いするわね、リーダー♪」
「――――――っ!!!(泣)」
・・・・・・・・
「まさか、道具にレベルが発生するなんてねぇ……」
「ん、想像もしなかった」
一頻り我が身の不幸を嘆き悲しんだワイルドフラワーのリーダー、エリンがどうにか落ち着いたところで、サンチェスとシュウイからもたらされた爆弾情報が伝えられる。――同じ道具を長期間使用しているとレベルが存在するようになり、レベルが上がった道具には魂魄が宿って、道具自体の性能を補正する――と。
「……とは言っても、魂魄云々は現時点ではサンチェスの証言だけなんだけどね。……ただ、シュウ君の杖にレベルが存在しているのは確認できたし、説明文に〝付喪神〟っていう単語があったのも確認できたんだけどね」
「問題があるとすれば、誰にでもレベルを確認できる訳じゃないって事だな。現に俺には見えなかったし」
タクマの言うとおり、レベルの低い【鑑定】では、道具のレベルまでは確認できなかった。のみならずレベルが高い場合も、通り一遍の【鑑定】では確認できず、それと意識しない限り表示されない仕様らしい。どちらかというとアタッカーの役割を担っているタクマやセンは、そこまで【鑑定】のレベルを上げていなかったため、道具――具体的にはシュウイの杖――のレベルを確認できなかったのだが、そのせいで却って、低レベルの【鑑定】では確認できないという事実が明らかになっていた。
シュウイの場合は、【従魔鑑定Tri】や【素材鑑定W】がそれなりのレベルにあった上に、複数の鑑定系スキルが【鑑定EX】に統合されたという事情もあって、杖のレベルを確認できたようである。
「はぁ……これもやっぱり掲示板案件かな?」
「えぇ。ただ……今すぐに上げていいものかどうかって気もするのよね」
何やら考え込んだ様子のカナを見て、「?」という表情のメンバーたち。
「今現在で確認できた事例がシュウ君の杖一つでしょう? 報告するにはデータが少な過ぎる気がするのよね」
「ん~……だったら、サンチェスさんに訊けばいいんじゃないかな? 話のきっかけを作ったのはサンチェス船長だし」
――というシュウイの提案を容れて、一同がサンチェスから訊き出したのは……
「……え? 付喪神って、そうなんですか?」
「然様。低ランクと言いますか……攻撃力などが低く補正効果も持たない、或いは低い初歩的な武器を大事に育てた方が、付喪神が宿り易いと聞きますな」
他の多くのVRゲームと同じくSROでも、プレイヤーが最初に入手する武器は効果の低いものである。プレイヤーのレベルが上がるに連れて、次第に上級の武器に乗り換えていく。それが普通であり、最適解であると思われていた――今までは。




