第七十八章 「キャプテン」 9.運営管理室(その2)
付喪神の件が友人たちの間で物議を醸す事になる訳だが、その前に、シュウイが【鑑定】を拾った経緯について見ておく事にしよう。
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「……おい……あの子がまたやらかしたみたいだぞ」
モニターを監視していたスタッフの一人がそう言うと、運営管理室の他のスタッフたちがわらわらと集まって来た。
「今度は何をやってくれたんだ?」
「妙なスキルを入手したようだ。【鑑定EX】となっているな」
「EX? エグゼクティブの事か?」
「何で〝重役〟が出てくるんだよ」
「いや、コンピューター用語でもあるだろう。監視プログラムという意味で」
「エクセキューションだとしたら、〝強制執行〟とか〝処刑〟っていう意味があった筈だぞ?」
「エクスプレスで〝高速〟な鑑定なのかも……」
「……ボケを演じても突っ込まんぞ。普通にエクストラ〝特別な〟鑑定と考えるべきだろう」
一頻り現実逃避に浸った後で、管理室のスタッフたちは問題に向き合う事にした。
「で、この【鑑定EX】とやらは、一体どこから出て来たんだ? 少なくとも、俺は初めて耳にするスキルなんだが」
「安心しろ。俺だって初耳だ」
SROは何しろスキルの数が膨大なので、運営管理室のスタッフと雖も全てのスキルを把握している訳ではない。畢竟、この【鑑定EX】のように、初見初耳のスキルに出くわす事も珍しくはないのであった。
「初見なのはいいとして……どこで拾ったんだ?」
「トンの町のレアスキルは緊縮状態に置いてある筈だろう」
「とすると……イーファンの宿場で拾ったという事か?」
「どうなんだ? 中嶌」
水を向けられた最年少スタッフの中嶌がログをチェックしていたが、
「……えぇと……厳密に言えば拾った訳じゃないですね。……拾わなかったとも言えないんですが……」
「何?」
「どういう意味だ?」
曖昧模糊とした返答に眉を顰めた一同であったが……
「……【鑑定】を拾ったら、それが化けたという訳か……」
「あの少年が持つ【従魔鑑定Tri】と【素材鑑定W】、ついでに【古道具屋】の【目利き】スキルが統合された結果、【鑑定EX】に進化したみたいですね」
淡々とした中嶌の説明を聞いて、がっくりと項垂れるスタッフたち。
「マジか……苦肉の策も不発だったって事か……」
「不発ならまだマシだった。明らかに暴発だろう」
「レアスキルの数を減らしたのが、完全に裏目に出た訳だな……」
――もうお解りであろう。
シュウイの「スキルコレクター」っぷりに危機感を抱いたスタッフたちは、トンの町におけるレアスキルの配備数を――一時的に――減らすという挙に出たのである。
第二陣の新人たちは扱い易いスキルを相対的に多く得る事ができ、シュウイは癖のあるレアスキルに頭を悩ます必要が無くなり、運営管理室はシュウイのチートっぷりに胃痛を覚える事態が減る――三方満足の結果となる筈であったのだが……




