第七十八章 「キャプテン」 8.【鑑定】と拾得スキル
「鑑定」結果に記載されている「付喪神」とは一体何なのか。先程のサンチェスの言動はこれを指しているようだから、サンチェスに訊くのが手っ取り早いだろう。
――と、質問しようとしたところで気が付いた。
(……あれ? 僕、【鑑定】持ってなかったよね? なのに、何で杖の鑑定結果が出てるの?)
慌ててウィンドウを見直したが、そこにはやはり【装備アイテム】と表示されている。【素材鑑定W】であれば、【素材アイテム】と表示される筈なのに。
(え……? 何で道具の鑑定なんかできたのさ?)
この時シュウイは、嘗て一度使ったっきりの【古道具屋】というスキルの事も、そのサブスキルとして【目利き】というスキルがある事も、綺麗さっぱり失念していた。なので慌ててログを見直す。結果的にはこれが奏功したのであるが、そこには……
「……【鑑定EX】ってのが生えてる。……他にも色々拾ってたみたい……」
この呟きに反応したのが友人たちである。先程から友人が妙な挙動を示しているのは、思わせぶりなサンチェスの発言が切っ掛けとなったのだろうが……だとしても、一体何がどうなっているのか?
「えぇと……シュウ君は【鑑定】を持ってないって言ってなかったかしら?」
友人一同を代表する形で質問を放ったのはカナであった。
「うん。正確には、〝キャラクリで取る予定だったのが強制的にリセットされた〟んだけどね。その後も拾えなくて、【素材鑑定】と【従魔鑑定】で遣り繰りしてた」
「……今回いつの間にか、その……【鑑定EX】っていうスキルを拾ったって事でいいのかしら?」
「ん~……少し違うみたい」
シュウイがログを確認した限りでは、拾っていたのは【鑑定】のようだ。イーファンの宿場へ来るに当たっては夜行馬車以外に選択肢が無かったため、馬車の中でログアウト・ログインする羽目になった。結果として、いつもは宿の自室で行なっているステータスのチェックができなかったため、拾ったスキルの確認が遅れていたのである。一気にスキルが増えているのは、どうも第二陣のプレイヤーたちが停車場で捨てたスキルを拾ったらしい。
「……その【鑑定】が、いきなりEXに化けた訳?」
「うん。ログを見た限りだと、【従魔鑑定Tri】と【素材鑑定W】、あと【古道具屋】の【目利き】ってスキルも一緒に統合されて、【鑑定EX】になったみたい」
こんな事ってあるんだねーとシュウイは感心する事頻りであるが、聞いている友人たち――ついでにサンチェスと運営管理室――は頭痛を覚えていた。以前にも【従魔術】【召喚術】【死霊術】の三つが【使役術】に統合された前科があるが、どうやらこれはこのゲームの基本的な仕様らしい。
「……いや……鑑定系のスキルを三種類揃えるようなやつは、そういないと思うが……」
「……シュウ君、それで、その【鑑定EX】はどういうものなの?」
「ん~……単に一つに纏まっただけみたいだよ? 操作の上では簡便になったと思うけど。性能とかは使ってみないと判んないけど……僕、普通の【鑑定】って使った事が無くてさぁ……」
どこか情け無さそうなシュウイのカミングアウトに、思わず目頭が熱くなる友人たち。今まで余計な苦労を忍んできた訳だし、【鑑定】がEXに進化したくらいよいではないかという気になる。
「……けど、何だって今頃になって【鑑定】が生えたんだ?」
「ん~……さっきも言ったけど、拾ったみたい。……時間的に考えて、乗合馬車の停車場じゃないかな?」
「第二陣のやつらが捨てたってのか? けど、【鑑定】みたいに使えるスキルをなんだってまた捨てたりしたんだ?」
「さぁ? そこまで僕には判んないかな」
一同うち揃って首を傾げる事になったが、そこには些か奇妙な経緯があったりする。
「ま、それはともかくとして、【鑑定】以外のスキルも拾ったのか?」
「うん、幾つか拾えてるけど……使い勝手とかはまだ判んないかな。最低でもLv3くらいには上げてみないと」
「おぅ……そうだな……けどなシュウ、あからさまにヤバそうなスキルとか、あるか?」
「ん~……名前で見た限りだと大丈夫みたいだけど……」
「まぁ、何かあったら報告しろよ。で、それはそれとして――だ。鑑定結果を見て驚いてたのは何なんだ?」
「うん、あのさぁ……」




