第六十三章 運営管理室
本作のコミカライズ版2巻(最終巻)が7月24日に発売となります。書き下ろしSSとして、トンの町防衛戦直後のシュウイの日常話が載っております。宜しければお手にとってご覧下さい。
後書きにもご報告があります。
「おいっ!! 一体何があった!? あのスキルは何だ!?」
今日も今日とて運営管理室には怒号が飛び交っているが……最近はこの状態がデフォルトになりつつある。あの、「シュウイ」というプレイヤーがSROに参入してからは。
「【奪刀術EX】……聞いた事も見た事も無い気がするんだが……」
「いや、本当に記録に無いぞ。少なくとも、こっちのデータベースには登録されていない」
「だとしたら……どういう事になるんだ?」
「人間様が作った覚えのないスキルが、ゲーム内に出現した。そういう事だろう」
一人のスタッフがボソリと呟いたのを聞いて、冗談じゃないという表情を浮かべる一同。
「待て、先走るな。メインAIが叛乱を起こして新たなスキルを作った訳じゃない」
管理室のセカンドチーフを務める大楽が、浮つきだしたスタッフたちを鎮める。……が、その大楽にしても、何が起こったのかは能く解っていない有様であった。なので、
「中嶌、徳佐、何か判ったか?」
先程からログをチェックしている二人に確認を取る。
「あぁ……俺は武術とかには明るくないから断言はできんが……【捕り手術】の方は、あの少年のパーソナルスキルだろうな。SROで設定したものとは少し違うが、少なくとも【捕り手術】の範疇に入るとメインAIは判断したようだ」
「そこまでは俺にも理解できる。その先はどうなっている?」
「それなんだが……【捕り手術】の中には、相手の武器を奪って制圧する技術があるみたいだな? その動き……力でなく技で武器を奪い取るという行為がトリガーとなって、【掏摸】が発動したらしい。……あの少年は【掏摸】の発動に慎重だったみたいだが、こういうケースは想定してなかったんだろうな」
(「そりゃあな……俺たちだって想定できなかったからな」)
(「無理もないとは言えるんだが……」)
「で、問題はここからだ。【捕り手術】の奪刀の動きと【掏摸】がシンクロした結果、従来の【捕り手術】の範疇には収まらない技法が誕生した。メインAIはこれもスキルであると認識し、従来のスキルとは一線を画している事から、新たな命名が必要であると判断したようだな」
「……その結果が、あの【奪刀術EX】という訳か……」
「あの少年が奪刀の動きをとった場合、間違い無く【掏摸】が同時に発動する。その結果、従来の【捕り手術】の範疇には収まらない技術が〝確定的に〟発動する。ならばこれは新たなスキルである――そう考えたのか……」
「CANTECの社員としては、メインAIの成長を喜ぶべきなんだろうが……」
「この調子でスキル認定を乱発されたら、堪ったもんじゃないぞ?」
スタッフ一同の怨みがましい視線を向けられた運営管理室チーフの木檜は、
「解った。この件に関しては、俺から上の方へ諮っておく。ただ……『トリックスター』の少年が取得した【奪刀術EX】については、今更どうこうする事はできんぞ?」
「それは仕方がありません」
「彼が面倒を引き起こすのは、もう諦めました」
「せめて、その面倒が他のプレイヤーに波及する事だけは阻止して下さい」
「具体的には、彼の友人のタクマとかいうプレイヤーが化けるのを防いで下さい」
口々に嘆願するスタッフたちに一つ頷くと、木檜はゲーム内の運営管理室から「ログアウト」した。
本日20時に新作「なりゆき乱世~お姫さまと埋蔵金~」を公開します。宜しければこちらもご覧下さい。




