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第六十章 ナンの町 3.召喚術と死霊術

 サントから水を向けられた形の四人――斥候役の獣人パリス、壁役のバルト、魔術師のマギル、回復役のエルフの僧侶ウィリス――は、揃って微妙な表情になった。



「……おい?」



 どういう事だと問いたげなサントに向かい、魔術師のマギルが代表して答える。



「いや……一応召喚には成功した。ただ、バリスの方は……(そもそも)死霊というのに出くわさなくてな」

「確かめられなかったって事か」

「面目無ぇ」

「いや……これは仕方がないだろう……と言うか、そういうケースもある訳か」



 考えてみれば、今までモンスターには数々出くわしたが、アンデッドの類に出くわした事は無い。そうすると、死霊術の確認はもう少し先の事になるのか?



「運営がその辺りを考慮してない筈は無いし、実際に死霊に出くわした者もいるらしいが……」

「それが……どうも大概夜の事だったらしくてなぁ……」

「「あぁ……」」



 視界が限られる夜間は戦闘に不利になるため、夜間の活動は控えるプレイヤーが多い。ついでに言うなら、SRO(スロウ)内での夜間はリアルでは深夜になるのと、連続接続時間が最大六時間までという縛りがある事も、夜間の活動を避ける理由になっている。死霊に出会うのが夜間に限られるとなると、死霊術を選んだ者はかなり苦労するだろう。



「いや、その辺りの情報は事前に判っていて、それを承知で死霊術を選んだ連中らしいんだがな」

「……そうまでしてアンデッドに(こだわ)る心情が理解できんが……バリスのように後付けで死霊術を取った者には悪い話だな」

「それがそうとも言えん。連中は夜間を中心に活動していたらしいが、昼間に死霊に出くわす事もあったらしい。でな、所謂(いわゆる)アンデッドと死霊とは、出現条件が違うんじゃないかって話になってきてるらしい」

「と言うと……バリスのように情報収集が主目的というんなら、そこまで不利でもないのか」

「けど、今回は空振りだったんだな?」

「そういう事だ。どうも、当てもなく郊外を歩くだけじゃ、死霊に出くわす確率は低いらしい。で、日が落ちてから墓地か教会の周りを歩いてみるかって話になってるんだが……」

「良いんじゃないか?」

「あぁ。今は死霊術の検証を優先して良いだろう。俺たちにとっても益のある話だしな」

「すまん」

「で、死霊術はそれで良いとして……」



 言いながら、サントとタクマの視線はマギルの方に向かう。



「その……頭の上に乗っかってんのが、召喚術の成果ってやつか?」



 魔術師マギルの頭上には、やや小柄なフクロウが機嫌好く鎮座していた。



「……鋭い爪を持ってるように見えるんだが……痛くないのかよ?」

「不思議とな。(もっと)も、他の連中だとどうなのかは判らんが」

「確認しようにも、マギル以外には寄って来ないからなぁ」

「まぁ、それは良いとして……何でフクロウなんだ?」



 召喚獣については、タクマも以前に聞いた事がある。実際に戦った相手がリストに載るのではなかったか?



「あ、いや。()く判らんが、最初の一体についてはそうでもないらしい」

「え? そうなのかよ?」

「俺もそれは知らなかったぞ?」

「あぁ……話してなかったか」

「うっかりしてたな……」



 改めて、以前に検討した内容を説明するマギルたち四名。説明を聞いたタクマとサントは、一応納得した表情になる。



「つまり、そいつはランダムな選択の結果ってやつなのか?」

「それにしちゃ、随分マギルに(なつ)いてないか?」

「それなんだが……お前ら、憶えてないか? 以前にドロップ品の肉をフクロウに投げてやった事があったろう?」

「……そう言えば……そういう事もあったっけか……?」

「思い出した。確かプレーリーウルフの肉だよな。レアではあるが美味くないって話だったから、タクマが捨てろっていったんだ」

「……そうだっけか?」

「で……その時のフクロウなのか?」

「その時のフクロウかどうかは判らんが……他に思い当たる節が無い。あの時肉を投げてやったのがマギルだったろ?」

「そう言えば……そうか」



 改めてフクロウを眺めるタクマとサント。



「モフモフだな……」

「あぁ、モフモフのフワフワだ」

「モフモフの亡者どもが騒ぐんじゃないか?」

「何で出しっ放しなんだ?」

「いや……送還を嫌がるんでな」

「「はぁっ!?」」



 聞けば、〝無理矢理送り返すと、召喚獣の好感度が低下する恐れがあります。それでも送還しますか?〟というウィンドウがポップしたらしい。



「そりゃ……二の足も踏むか……」

「調べてみたらな、召喚獣の好感度が高いと、(まれ)にある事らしいんだ、これが」

「で、そういう()報者(ほうもの)()ぜろとか、掲示板に書いてあってな……」

「「おぉ……」」



 再度フクロウを眺めるタクマとサント。相変わらず上機嫌で頭上に止まっている。



「まぁ、良いんじゃね?」

「だな。名前は付けたのか?」

「あぁ。ルヴァにした。フクロウはミネルヴァ女神のお使いだっていうからな」

「従魔登録は済ませたのか?」

「いや。……召喚獣も登録する必要があるのか?」

「判らんが……送還を嫌がるようなら、登録しておいた方が良くないか?」

「……そうかもしれんな……」

ミネルヴァ神はローマ神話に登場する女神で、ギリシア神話のアテナと同一視されています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今話でもパリスとバリスが混ざっているようです。誤字報告に対応していないようですのでこちらにて。
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