表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
214/931

第五十九章 トンの町 3.運営管理室

「どういう事だ!?」

「初級を取得したのに、解放されたレシピは二種類だけなのか!?」

「なぜだ!」



 運営管理室はまたしても怒号の中にあった。



「え、えぇと……【分離】とか【抽出】とかは制限無くできるみたいですけど……」

「当たり前だ! そんな単純なものはレシピとは言わん!」

「複数の手順を経て作成するレシピはどうなんだ!?」

「……やっぱり、あの二種類のポーションだけですね……」



 頭を抱えたスタッフたちは、中嶌(なかじま)を解放すると、今度は(たい)()に詰め寄った。



(たい)()、どうなってるんだ?」

「待て、今、(とく)()が『語録』を見てるはずだ」

(とく)()!」

「『(わた)()語録』には何て書いてあるんだ!?」



 「(わた)()語録」……それは、彼の行方を辿る事もできず、邪道アーツの詳細を調べるのも道半ばの運営スタッフが、次善、いや三善の策として(まと)めた、在社中の(わた)()の言動を収録したデータベースである。こんな妙な事を言い出したのが誰かは判っていない――いい加減ハイになっていた誰かだろうとは思うが、多分本人も憶えていない――が、怪しげなその名称に反して、案外に使える手引き書となっていた。



「待ってくれ……これかな? 〝見慣れた筈のものも、視点を変えてみると新鮮に見える事がある。プログラムでも、以前に作ったものとは別のプロトコルで作ってみると、思いがけない発見がある〟……」

「…………」

「他に……無いか……?」

「……あぁ、こういうのもあるな。〝ピタゴラスの定理も、その証明法は何通りもある。既に判っている事実を、敢えて別の解釈で証明するというのは、知的遊戯としてもエレガントなものではないか〟……」

「……何がエレガントだ……」

「つまり……これって……」

以前に作った事のある(・・・・・・・・・・)ものについてだけ、【調薬(邪道)】とか【錬金術(邪道)】の初級で作るレシピが解放される、って事ですかぁ?」



 朗らかな声で一同に留めを刺した――と言うか、(かい)(しゃく)を行なった――のは、新たに配属された新人の一言(ひとこと)(ゆう)()。周りから「一言多い子」と認識されている(一応)才媛であった。

 その声にがっくりと(くずお)れるスタッフたち。


 何しろシュウイは調薬も錬金術もほぼ初心者。つまり、作れるレシピが元々少ない。従って、折角取得した【調薬(邪道)】でも、作れるレシピはほとんど無い。まして、シュウイが収奪する激レア素材を使ったレシピなど、入手するのはいつの事になるか……



「……何だってそんな仕組みにしたんだ、(わた)()のやつは!?」

「……元々、邪道スキルは普通の調薬や錬金術の上位互換っぽかったしな。取得者が初心者だなんて事態は想定しなかったんだろうよ……」

「どうする……? このままでは俺たちの(もく)論見(ろみ)が……」

根底から崩れる(・・・・・・・)な」



 しれっと言い放った(とく)()に一同が殺気の籠もった眼を向けるが……



「俺たちは既にルビコン川を渡ったんだ。それを肝に銘じて、何か打開策を考えるしか無いだろう」



 この男は不貞不貞(ふてぶて)しく言い放つのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ