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第五十七章 ナンの町 2.「ワイルドフラワー」(その2)

少し短いです。

 SRO(スロウ)には数多(あまた)のスキルが存在しており、プレイヤーはスキルを取得する事でそのスキルを使えるようになる。ただし……SRO(スロウ)初心者が陥り易い誤解なのだが、スキルを取得する事とそれを使いこなす事は別物である。実際のところ、スキルレベル1というのはそのスキルの適性を得る程度であり、そのスキルを繰り返し使ってレベルを上げないと、大して役には立たない。


 その点は【魔力操作】も同じなのだが、生憎(あいにく)とこのスキルはあくまで補助スキルであり、レベルアップの実感が得にくい。早い話が、【魔力操作】スキルを持っていなくても、魔法のレベルは普通に上がるのである。しかも(たち)の悪い事に、普通に魔法を使っているだけでは【魔力操作】はレベルアップしにくい……というか、普通の魔法のレベルアップが優先される。【魔力操作】を鍛えようと思ったら、住民(NPC)の魔法職――少なくとも初期設定では、プレイヤーにはこの情報は欠片(かけら)ほども明かされていない――から鍛錬法を習って訓練を重ねる必要がある……。


 そういう訳で、バーバラに弟子入りした「ワイルドフラワー」の面々は、この二日間というもの【魔力操作】のレベルを上げようと懸命だった訳だが、ここへきてようやくセンが課題をクリアーした……というのが先程の状況であった。



「ほらほら、そろそろ時間だよ」

「え? もう?」

「師匠~……もうちょっとでできそうなんですぅ」

「駄目駄目、仮にも魔術を学ぼうって者が、この世界のありようを知らずにどうすんだい。さっさと見聞を広めてきな」



 バーバラに弟子入りした時点で、「ワイルドフラワー」の面々はバーバラの家でログイン・ログアウトできるようになっていた。家に弟子のための部屋が用意されていたのである。以前に住み込みの弟子――この世界の住人(NPC)――を取っていた頃の名残だそうだ。なので修行のし放題……と喜んだ「ワイルドフラワー」であったが、そうは問屋が卸さなかった。

 バーバラは弟子が二時間以上魔術の修行を続けるのを許さず、いろんな経験を積めと言って追い出されるのが常であった。魔物や獣がどう生きているのか、何が得意で何が不得意なのか、何を好み何を嫌うのか、それらを事細かに知っておかねば良い使役者にはなれないというのが彼女の主張であった。


 そして、それを別にしても……



「魔術師たる者、魔力の流れ、物の()り方、その(ことわり)をよく見ておかなきゃ話にならないよ。部屋に閉じ籠もって肝心の世界ってものを見ないようじゃ、真っ当な魔術師になんかなれるもんかね」



「……と、毎回そう言われて追い出されるんだけど……」

「具体的に、何をどう見れば良いのか……」

「師匠もそこまでは教えてくれないんだよね……」

「ねぇ、カナちゃん、何を見れば良いのかな?」

「セン……あんたはもう課題をクリアーしたんでしょうが?」

「いえ……師匠は『まず』って言ってたから、当然その後に続く課題がある筈よ。恐らくだけど、師匠が言っていたように『魔力の流れと物の()り方、その(ことわり)』を見極めるのが、この弟子入りクエストの要諦(ようてい)じゃないかしら……」

「え……けど、あたしたちはまだ【魔力操作】も(ろく)にできていないんだけど……」

「その状態で師匠が私たちを追い出したという事は、【魔力操作】スキルとは別のスキルが焦点になるんだと思う。……想像だけど、【魔力感知】を鍛えろって事じゃないかしら」

「え? ……だったら、カナは【魔力感知】のレベルが上がってるんだし、すぐにでもクリアできんじゃないの?」

「いえ……これもあくまで想像なんだけど……【魔力感知】と【魔力操作】双方のレベルが上がって初めて、次の段階に進めるんじゃないかしら」


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