第五十六章 運営管理室 2.奪われる(?)レアスキル
「話を戻したいんだが……根刮ぎにされたレアスキルの補填はどうする?」
あぁ、それもあったかという表情で、他のスタッフたちが会話に戻る。
「別に、同じものを配置しておけば良いんじゃないか?」
「あぁ。まさかあの少年も、そぅ何度もスーファンの宿場にやっては来ないだろう」
「だな」
この件については話が丸く収まりそうな雰囲気であったが、ここで一人のスタッフが手を挙げる。
「あのぉ、良いですか?」
運営管理室の梃子入れのために、最近になって移動してきた女性スタッフで、名前は一言夕子。一言姓は記紀に登場する一言主神に由来するというが、彼女については「一言多い子」というのが衆目の一致した見解である。
「……何だ?」
平素から余計な一言を発言してはしばしば顰蹙を買っている彼女だけに、チーフの木檜も警戒気味である。まったく、人事も何でこういう人材を寄越したのか……いや、優秀なのは認めるが。
「シュウイ君の事ですけど、今、トンの町にいますよね?」
それがどうしたと言いかけて唐突に、とある一語が一同の脳裏に閃く。
――新規参入――
「トンの町に新規参入組が……彼らのためのレアスキルが、洗い浚い持ってかれるんじゃ……」
「……それでも、レアスキルを配置しない訳にはいかんだろう」
「役立ちそうなレアスキルなら捨てられないんじゃ? それならトリックスターにも拾えないだろう」
「そうすると、第二陣を優遇していると非難されるぞ」
予想していなかった問題点を突き付けられて硬直するスタッフたち。いや、無意識に考えまいとしていたのかもしれないが。
「待て、既にあの少年が持っているレアスキルを配置するというのは?」
「……同じレアスキルを二つ拾った場合、どうなるんだ……?」
「…………」
「……検証されていません……」
「レアではない普通のスキルなら、どうなる?」
「確か……強化されたような……」
不吉な予言に静まり返るスタッフたち。
「……レアスキルは一度にセットせず、様子を見ながら追加しよう。トリックスターはそろそろナンの町へ移る事を漏らしている。彼がトンの町を抜けたら、一気にセットすれば問題無いだろう」
「……そうですね。多少手間は増えますが、先々の面倒を考えたら、許容範囲でしょう」
一気にげっそり老け込んだ感じのスタッフたち。
「トリックスターが攪乱するターゲットって、運営側じゃないのか……?」
「現状ではそう言われても反論できんな……」
この企画は失敗だったのか?
「いや……今はそうでも、この先きっと活躍してくれる筈だ!」
「……そうでなきゃ、俺たちが浮かばれんよな……」
自分たちだけ貧乏籤を引くのは納得できないという心情から、シュウイの行動を支援する側にスタンスを移すスタッフたちであった。
「え~と……?」
「そっとしておいてやれ……」




