第三十四章 トンの町防衛戦 8.微睡みの欠片亭
さて、少し遅くなったけど宿に戻ってスキルのチェックだ。シルにご飯も食べさせなきゃならないし。別にケインさんたちはシルの事を知ってる訳だし、ナントさんの家で出してやっても良かったんだけど……酒のつまみっぽい食事に食指が動かなかったのか、僕の懐で眠ったままだったんだよね。わざわざ起こすまでもないかと思って、そのままにしておいたんだけど……。
「シル、起きたんならご飯食べるかい?」
そう訊くと、シルは当然という顔付きをして待っているので、いつものように果物を出してやったんだけど……マンゴーをじ~っと見て待ってるのは、果実水を作れって言うんだね? まぁ、僕も飲みたい気分だから良いけど……味が微妙な乾燥果実が増えるのもなぁ……。タクマのやつにあったら押し付けようか。
そんな事を考えながら、【錬金術(邪道)】の【分離】スキルで果実水を作ってシルに与える。僕もお相伴にあずかるけどね。何か……【分離】スキルだけが上達しているような気がするな。気のせいかもしれないけど。
シュウイはしばらく微妙な表情で考え込んでいたが、何にせよ上達するのは良い事だと割り切ったのか、さばさばした表情でスキルのチェックを始めた。
う~ん、やっぱり隠密系と警戒系のスキルの上昇が早いな……カナちゃんが言ってたように常時重ね掛けの恩恵なんだろうか。【狙撃】が上がってるのは投石紐での投石が原因かな? クロスボウは今日は一回しか使ってないし、【投擲】と【飛礫】もスキルレベルが上がっているから、多分そうだね。【聴耳頭巾】のレベルが上がったのは、ホビンたちと会話してたからかな。あれ……? 【火魔法(オーク)】がLv1に上がってる? え? 使ってもいないのに、何で?
不審に思ったシュウイはログをチェックしていたが……
あ~……これかぁ。今日狩ったオークメイジの一頭が【ファイアーランス】を持っていて、それが【火魔法】に統合されたみたいだな。……それにしても、オークたちから奪ったスキルがショボいなぁ……。まぁ、レアなスキルを集めるだけで、役に立つスキルを集める訳じゃないからね。しょうがないかぁ……。【大食い】って……オークキングから奪ったスキルがこれかぁ……。微妙どころかはっきり使いづらいスキルだよねぇ。あ、タクマに奢らせる時に使ってやろ。それと……【闇魔法の素地(オーク)】ねぇ……。闇魔法に対する適性と耐性が少しだけ上がるのかぁ……。オークキングの【咆吼】に対抗できたのは、このスキルのお蔭もあるんだろうな……。悪いスキルじゃないと思うけど……。ま、今後闇魔法持ちの魔物を狩っていけば、何か拾えるだろ。それに、アンデッドをテイムできるようになるかもしれないしね……うん、別にそうしたい訳じゃないけど。
あれ……【暗器術 初級】ってアーツが生えてる。しかもLv1? ……バグ・ナクに加えて吹き矢なんか使ったからかな? まぁ、貰えるものは貰っておこう。
あとは……お? 『ホブゴブリンの友』っていう称号だったのが、『ホビンの友』に変わってる。スキルの名前もだ。芸が細かいなぁ……。
さて、大体のチェックは済んだね。明日はギルドへ顔を出して、それからケインさんに火魔法を見せてアドバイスを受けなくちゃ。
お休みなさい。
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★《シュウイのスキル/アーツ一覧》
レベル:種族レベル8+
スキル:【しゃっくり Lv2】【地味 Lv5】【迷子 Lv0】【腹話術 Lv2+】【解体 Lv8+】【落とし物 Lv9+】【べとべとさん Lv3】【虫の知らせ Lv7+】【嗅覚強化 Lv6+】【気配察知 Lv6+】【土転び Lv3+】【お座り Lv3】【掏摸 Lv0】【イカサマ破り Lv4】【反復横跳び Lv4】【日曜大工 Lv2】【通臂 Lv1+】【腋臭 Lv1】【デュエット Lv5】【般若心経 LvMax】【弓術(基礎) Lv5】【狙撃(基礎) Lv6】【投擲 Lv5】【器用貧乏 Lv3】【飛礫 Lv5】【擬態 Lv2】【ウェイトコントロール Lv3+】【隠蔽 Lv2】【疾駆 Lv3】【給水 Lv3】【古道具屋 Lv1】【聴耳頭巾 Lv4】【大食い Lv0】【闇魔法の素地(オーク) Lv0】
アーツ:【従魔術(仮免許)】【召喚術(仮免許)】【杖術(物理) 皆伝】【調薬(邪道) 初級(仮免許)】【錬金術(邪道) 初級(仮免許)】【火魔法(オーク) Lv1】【土魔法(ホビン) Lv0】【水魔法(ホビン) Lv0】【暗器術 初級 Lv1】
ユニークスキル:【スキルコレクター Lv7】
称号:『神に見込まれし者』『ホビンの友』
従魔:シル(従魔術)
ご存じの方もおいででしょうが、コミカライズ版掲載紙の「月刊バーズ」休刊に伴い、本作の掲載媒体が「デンシバーズ」に移行します。コミカライズ版第四話の配信は7/30になります。