第一王位継承者
カレンさんの案内で会議室に向かったところ、
ギルド長だけでなく、組長までいた。
まず、新しいギルドカードが交付された。
古いカードと交換で
ギルド長からひとりひとりに手渡しだ。
このために呼んだのかな?
Bランクは、金色だ。カッコイイ。
「さて、お前らに来てもらったのは他でもない」
「指名依頼ですか?」
そういう要件だったか。
組長がいるということは、組長からの依頼か。
「ここからは、俺が話そう」
組長が説明を始めた。
「頼みたいのは、極秘での護衛依頼だ」
「どういうことです?」
「とある方が命を狙われているため、この町でかくまっている」
「へぇ……」
ココロは何か心当たりがあるようで、驚く素振りもない。
「しかし、王都に戻らなきゃならなくなった」
「その方を王都まで護衛、
さらに王都滞在中も護衛してもらいたい」
「何日も常時護衛ってのは、受けることはできないです」
組長は、ちょっと困った顔をした。
まさか、そんな依頼が通ると思ってたんだろうか?
「王都では、近衛騎士も護衛につく。
まずはそいつらをお前の『銅像』で選別してもらいたい」
「選別した近衛騎士に任せると?」
「そうしたいんだが……」
組長は言いよどむ。
「全部、クロってことを心配されてるんですね」
「あぁ」
「選別するまでもなく、全員クロですよ」
さらっと恐ろしいことを言った。
だけど、ココロのことだ。
『世界の知識』で裏が取れてるんだろう。
「な!」
組長も驚いていた。
「お前、どこまで知っている?」
「さぁ?」
ココロは少し思案した上で、口を開いた。
「王都でも護衛してあげたいですけど難しいです。
うちの盾役は優秀ですけど、ボクらはそうじゃありません。
盾として行動中は、食事もできないんです。
食事中は、完全に護衛能力を失います」
そうだよ。
『アーティファクト』装着中はご飯食べれないんだよ。
ココロはさらに続けた。
「護衛対象の方にも能力を使ってもらうなら、
少しは可能性があるかもしれませんが……」
「お前、護衛対象が誰か知っているのか?」
「えぇ、そういう方は、ひとりしか知りませんが?」
組長は大きなため息をついた。
誰だろう?
「全部お見通しってことか、とんでもないなお前ら」
「うちのパーティリーダーは、すごいでしょ?」
「あぁ、そうだな」
俺は何もお見通しじゃないけどな。
「改めて紹介しよう。
我が国の第一王位継承者カレン・ナノ・ユグドラシル殿下だ」
カレンさんは、王族だったらしい。
「えぇぇ!?」
俺だけが立ち上がってそんな声を上げた。
ユーマは、いつも通り、なにがあっても動じない。
ココロは、すでに既知の案件のようだ。
ちょっとバツが悪い。
俺は、椅子に座りなおした。
「わかった。少し依頼内容を変えよう。
王都までの護衛を頼みたい。
報酬は1日金貨5枚(50万円相当)。
王都に着いてからは、そちらの判断に委ねる。
滞在してくれるなら、その日数分の報酬も支払う。
護衛に失敗しても、それまでの報酬は支払う」
ココロは少し考えた末、とんでもないことを言い出した。
「ボクらはただの冒険者ですけど、
護衛をすることで、貴族出身の近衛騎士とか、
王族とか、騎士団長とかを殺すことになりますけど、
それって罪に問われないんでしょうか?」
「「「えっ?」」」
組長とギルド長とカレンさんが、想定外の答えに慌てた。
俺もビックリしたけどね。
「それは、クロ確定ということか?」
「はい。でも、証拠は何も持ってませんので、とても不利です」
「ううむ……」
「護衛のために、相手が攻撃してきた時、
手加減できる相手じゃないので、
間違いなく殺すことになりますよ!」
そう言って、ココロは候補者の名前を書きだした。
ウラナ・イオ将軍兼第1騎士団長
ヤヴァン・イオ公爵
ソレサー・セン近衛騎士団長
ドナドナ・ドナ近衛騎士団副長
第1王子:ミハクズ・ダオ・ユグドラシル
第2王子:ゲキヤ・クナ・ユグドラシル
サイショ・ウダイ宰相(ウダイ公爵)
「あとは、その配下の人たちが仕掛けてきますけど?」
全部初めて聞く人たちだ。
組長たちの顔が青ざめていた。
本当に大物ばかりなんだろう。
「仕掛けてきそうではなく? 断言するのだな」
「えぇ」
組長は、少し考えた末、こう言った。
「お前らをAランクに推挙する。
Aランクなら公爵同等の権限を持つ。
だけど、王族だけは殺さない方向で頼みたい」
これに対して、ココロがとんでもないことを言い始める。
「Sランクにしてくれたら、王族殺しでも大丈夫なのでは?」
こいつ、ホントに王族殺しまでするつもりか!
っていうか、Sランクなんて伝説の存在じゃないの?
「お前……。いや、でも、確かにそうか」
「しかしなぁ……」
このためだけにSランクというのは無理があるだろう。
カレンさんが、妥協案を提示する。
「Sランクにするけど、表向きは公表しないのはどうですか?」
「どういうことだ?」
俺もわからん。
「悩んでおられるのは、外聞を気にして……ですよね」
「まぁ、そうだな」
気にしてたのは外聞だけなのかよ。
「ふだんはBランクとして行動し、ギルドカードもBランク。
でも、何か問題があった時だけ、
Sランクのギルドカードを見せて対処するんです」
そういうのアリなの?
「同じ名前でなければ、アリかもしれないな」
アリなのか?
「複数の名前で行動してるヤツもいるしな」
いるのかよ!
「お前ら、今とは別な名前を考えられるか?」
ココロがこんな案を出してきた。
「それなら、名字で登録しようか。
ボクは、ユウキで。ユーマは、タテワキで。サクタはカミキで。
パーティ名は『アーティファクト』とかでどう?」
「うん、いいね」
「あぁ」
「決まりみたいだね。じゃ、Sランクの方は、その名前で」
「それじゃあ、急いで用意してくる」
ギルド長が、バタバタと会議室を出ていった。
その間、カレンさんがココロと話をしていた。
「なんでも、お見通しなんですね?」
「ある程度までしかわかりませんけどね」
「はぁ……」
カレンさんはため息をついた。
「ホントにわかるんですね。すごすぎです」
「ふふっ……『真実の耳』で試しましたね」
「そこまでわかっちゃうんですか!」
「ウソを言ってるか見抜く能力でしょ?」
「はい。その通りです」
なんだか、よくわからない会話をしている。
俺は、完全に蚊帳の外だ。
ギルド長は、1時間もせずに戻ってきた。
そして、俺たちにSランクのギルドカードを配布した。
Sランクのギルドカードは、魔金という素材らしい。
虹色に自発光している。めっちゃキレイ。
「それが、使わずに済むといいんだが……」
「今回の依頼だと無理ですね」
「相変わらず言い切るんだな」
「えぇ」
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