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『俺だけドロップ率∞のバグスキル持ちだった ~底辺探索者のダンジョン配信が、いつの間にか世界最強チャンネルになっていた~』  作者: やまご


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第91話 最初のユウト

夜だった。


屋上には風だけが吹いていた。


誰も軽口を叩かない。

リゼでさえ静かだった。


第90話で見た記憶――


若い俺。

観測者に似た“白い誰か”。

そして最後の言葉。



お前に託す。



その意味が、重かった。



リゼが缶コーヒーを揺らしながら言う。


「……で? どういうこと?」



白い観測者が現れる。


今までより少しだけ輪郭が薄い。

こちら側でも緊張しているのかもしれない。



「仮説を共有する」



カイが腕を組む。


「聞こう」



観測者は静かに告げた。



「ユウト・カグラは単一個体ではない」



「複数世代にわたり継承された“干渉核”の保持者である可能性が高い」



沈黙。



リゼが真顔になる。


「……要するに?」



「お前は初代ではない」



俺は空を見た。


なぜか、驚きより納得が先だった。



最初から馴染みすぎていた力。

理由もなく分かる戦い方。

初対面のはずなのに、懐かしい感覚。



全部、繋がる。



アリアが俺を見る。


「継承って……人格も?」



「不明」



「ただし、記憶断片と選択傾向は残留している」



つまり。



俺の“俺らしさ”の一部は、前の誰かから来ているかもしれない。



妙な気分だった。



カイが低く言う。


「起源を知る必要があるな」



観測者が頷く。



「封鎖領域の最深部に、初期記録が存在する」



「接触を推奨」



リゼがため息をつく。


「また潜るのね」




数時間後。



再び屋上。

接続陣が展開される。



アリアが隣に立つ。



「今回も行く」



「止めても来ますよね」



「当然」



少し笑う。


このやり取りにも、もう安心する。



手を握る。



接続開始。



白い世界へ沈む。




次に立っていたのは、古い研究施設だった。


コンクリートの壁。

非常灯。

無機質な通路。



「……ここが起源?」



観測者の声だけが遠く響く。



「記録層:初期時代」




通路の先。


ガラス越しの部屋。



そこにいた。



一人の青年。



俺と同じ顔。


だが、目つきが違う。


疲れている。

何かを何度も失った顔だ。



「……あれが」



「初期継承者」



観測者が答える。



青年――“最初のユウト”は端末に何かを打ち込んでいる。


画面には、無数の未来予測線。



その奥のモニターには。



街が崩壊していた。



炎。

裂ける空。

人々の悲鳴。



アリアが息を呑む。



「未来映像……?」



観測者が訂正する。



「高確率到達未来」




最初のユウトが、呟く。



「何度やっても、ここに収束する」



背筋が冷える。



何度も?



その瞬間、別のモニターが点く。



別の街。

別の時代。

別のユウト。



死んでいる。



さらに別のモニター。


また別のユウト。



戦っている。



倒れている。



消えていく。



俺は立ち尽くした。



「……継承って、まさか」



観測者が答える。



「世界崩壊を回避するため、干渉核を次世代へ移植」



「失敗のたびに、記録と適性を残し継続した」




リゼの声が遠くで震える。



「それ……ずっとやってたの?」




最初のユウトが笑う。


疲れ切った顔で。



「才能じゃない」



「積み上げだ」



その言葉が、胸に刺さる。



俺が特別だったんじゃない。



何度も負けて。

何度も託して。

何度も繋いで。



その果てに、今の俺がいる。




最初のユウトが、こちらを向く。



記録なのに。


目が合う。



「やっと来たか」



息が止まる。



「……見えてる?」



「少しだけな」



記録再生ではない。


これは、意志の残滓だ。



彼は椅子にもたれたまま笑う。



「何代目かは知らん」



「でも、お前はたぶん一番マシな顔してる」



「失礼ですね」



自然に返してしまう。



アリアが横で小さく笑った。



最初のユウトは彼女を見る。



「……隣にいるのか」



アリアが真っ直ぐ答える。



「ええ」



「なら勝てる」



即答だった。



俺は思わず聞く。



「何に?」



彼の目が、少しだけ鋭くなる。



「観測者じゃない」



「そのさらに上だ」



空気が凍る。



白い観測者ですら沈黙した。



最初のユウトは続ける。



「観測者は装置だ」



「本体は、“世界を繰り返させてる側”にいる」




頭が真っ白になる。



今までの敵は、本体ですらなかった?



「だから俺たちは何度もやり直させられた」



「失敗したら次」



「成功率が上がるまで、ずっとな」



怒りが込み上げる。



人の人生を。

選択を。

積み重ねを。



試行回数みたいに。




俺は低く言った。



「……終わらせます」



最初のユウトが笑う。



「言うと思った」



そして、最後に静かに告げる。



「でも忘れるな」



「お前は俺の続きじゃない」



「お前は、お前で勝て」



その瞬間。



施設全体に警報が鳴る。



記録層崩壊。



「戻る!」


アリアが手を引く。



白い世界へ引き戻される。




屋上。


現実。



膝をつく。



息が荒い。



リゼが叫ぶ。



「何見たの!?」



俺は空を睨んだ。



「……今までの全部、試行回数だった」



カイが目を細める。



「なら敵は一段上か」



白い観測者が静かに言う。



「我々も知らぬ層だ」




アリアが俺の手を握る。



「どうするの?」




俺は立ち上がる。



怒りはある。


でも、それ以上に。



決めた。



「繰り返しごと、壊します」



夜空の奥で。


見えない何かが、初めてこちらを見た。



第4部。


本当の敵が、姿を現し始める。

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