第75話 決まらないという選択
“拒絶”は、完全だった。
目の前に広がるそれは、壁というよりも**“結果そのもの”**だった。
そこに到達する未来は存在せず、触れるという過程すら最初から排除されている。
――届かない、と決まっている。
「……最終防御」
“それ”の声が響く。
「対象:干渉個体。排除ではなく、収束を選択」
空間が静かに収束していく。
世界が一点へと畳まれ、すべてが“ひとつの答え”へとまとめられる。
逃げ場はない。
抵抗する意味も、最初から定義されていない。
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だが。
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「……それ、つまらないですね」
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俺は、そう言った。
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その瞬間。
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わずかに。
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“それ”が止まる。
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「……評価不能」
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当然だ。
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“決まっている世界”にとって、選択そのものが異物だからだ。
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俺は一歩踏み出す。
足場はない。
だが――
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「ここに立つ」
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宣言と同時に、足場が成立する。
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バキッ、と遅れて世界が追いつく。
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「……自己定義、拡張」
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“それ”が呟く。
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だが、止まらない。
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俺はもう一歩踏み出す。
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「俺はここにいる」
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世界が揺れる。
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決まっていたはずの“結果”に、ノイズが混ざる。
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アリアが隣に並ぶ。
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「……一人でやらないで」
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その声は、静かだが強い。
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俺は頷く。
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「はい」
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手を握る。
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その瞬間。
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何かが“繋がる”。
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断片だった記憶。
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感覚。
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すべてが。
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一本の線になる。
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――世界を繋いだ
――存在を戻した
――外側に触れた
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「……ああ」
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思い出す。
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全部じゃない。
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だが。
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“核”は戻った。
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「……これか」
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理解する。
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俺の力は。
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“干渉”じゃない。
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“選択”だ。
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“それ”が言う。
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「……変化確認」
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「干渉から逸脱」
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「危険度:最大」
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空間がさらに圧縮される。
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世界が一点へと収束する。
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終わりへ向かう。
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だが。
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俺は笑う。
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「……いいですね」
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アリアが呆れる。
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「ほんとに」
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だが。
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手は離さない。
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「アリア」
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「ええ」
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同時に踏み込む。
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存在干渉。
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いや。
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“存在選択”。
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「ここは終わらない」
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宣言。
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世界が揺れる。
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“それ”の収束が、わずかに止まる。
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「……不整合」
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俺はさらに押し込む。
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「まだ決まってない」
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アリアが続く。
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「私たちは消えない」
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二人の意志が重なる。
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その瞬間。
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収束が“止まる”。
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完全に。
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「……停止」
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“それ”が初めて。
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動揺する。
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俺は踏み込む。
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あと一歩。
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届く。
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そのとき。
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“それ”が最後の手を打つ。
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「……強制確定」
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世界が一瞬で固まる。
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完全に。
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すべてが決まる。
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動けない。
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終わる。
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だが。
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その中で。
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一つだけ。
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動くものがある。
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“選択”。
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俺は、目を閉じる。
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そして。
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決める。
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「……それでも」
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目を開く。
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「俺は選ぶ」
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その瞬間。
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世界が“弾ける”。
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完全固定が崩壊する。
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“それ”の定義が、壊れる。
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「……!」
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初めて。
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“それ”が明確に揺らぐ。
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俺は踏み込む。
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今度こそ。
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手を伸ばす。
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“中心”。
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触れる。
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「終わりです」
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その瞬間。
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アリアが動く。
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ザンッ!!!!!!!!!!
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完全直撃。
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“それ”が崩れる。
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だが――
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まだ、消えない。
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「……あと一歩」
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俺が呟く。
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“それ”が言う。
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「……理解」
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「お前は」
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「“決まらない存在”だ」
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俺は笑う。
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「どうも」
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だが。
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まだ終わらない。
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最後の一撃が必要だ。
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最終決戦。
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クライマックスへ。
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第75話 完




