表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺だけドロップ率∞のバグスキル持ちだった ~底辺探索者のダンジョン配信が、いつの間にか世界最強チャンネルになっていた~』  作者: やまご


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/94

第72話 定義の外側へ、触れる手

夜の街は静かだった。だがそれは“平穏”ではなく、張り詰めた均衡に過ぎない。

空は閉じている。それでも、向こう側は確実にこちらを見ている。


「……来る」


アリアの声が落ちると同時に、世界の輪郭が“にじんだ”。


音が薄くなり、光が一段階だけ遠くへ引く。

現実の表面に、見えない膜が一枚重なる。


――観測が始まった。


「……完全観測、開始」


声は静かだった。だが、前回とは違う。

逃げ場がない。


次の瞬間、街の“意味”が剥がされる。


道路は道路であることをやめ、建物は建物である理由を失う。

そこに在るはずの“役割”が消え、ただの形だけが残る。


「……っ」


呼吸が浅くなる。

世界が“軽く”なる。存在の重さが抜けていく。


カイが歯を食いしばる。「定義を外してきたか……!」


リゼが低く吐き捨てる。「存在の許可、取り上げてるってわけね」


その通りだ。


“それ”はただ見ているだけじゃない。

見たものを“存在させるかどうか”を決めている。



俺は一歩踏み出した。


足元が消える。

だが落ちない。落ちるための“意味”が消えている。


「……なら」


俺は息を吸う。


「自分で決める」



存在干渉、発動。



だが、今までのやり方じゃない。



“戻す”のではなく、“宣言する”。



「ここに立ってる」



言葉にした瞬間、足場が“成立”する。


バキッ、と遅れて世界がそれに追いつく。



「……自己定義、確認」


“それ”の声がわずかに低くなる。



次の瞬間、圧が変わる。



今度は“削除”じゃない。



“無視”。



俺の存在そのものが、観測から外される。


視界から、音から、世界から。



「……っ!」


自分が薄くなる。

“そこにいない”扱い。



だが。



「……まだ繋がってる」



手の中の温もり。


アリア。



それだけは消えない。



「アリア」



「分かってる」



言葉と同時に、彼女が踏み込む。



ザンッ!!



斬撃が空間を裂く。

だが、“それ”には届かない。



「……観測外対象の干渉、無効」



俺は歯を食いしばる。



「……そういうことか」



見えていないものは、存在しない。

なら――



「見せればいい」




存在干渉。



“アリアを軸にする”。




彼女の認識に、自分を重ねる。



「ここにいる」



その瞬間。



俺の輪郭が戻る。




「……再観測」




“それ”が反応する。




俺は踏み込む。




今度は迷いがない。




「見えてるなら、触れる」




線が見える。




世界の繋がり。




“それ”へと続く、一本の流れ。




「……そこだ」




手を伸ばす。




触れない。




だが。




“重ねる”。




その瞬間。



“それ”が初めて大きく揺れる。




「……干渉」




「不可能領域、侵入確認」




俺は押し込む。




「定義、外す」




世界が震える。




観測の基準が、わずかに崩れる。




アリアが叫ぶ。



「今!!」




ザンッ!!!!!!!




一撃。




今度は確かに。




“それ”に届く。




沈黙。




空間が揺らぐ。




「……接触確認」




“それ”の声が、わずかに変わる。




「危険度:再設定」




そして。




初めて。




“退く”。




空間が戻る。




街が戻る。




音が戻る。




すべてが元に戻る。




俺は膝をつく。



「……はぁ……」




呼吸が荒い。




アリアが支える。




「大丈夫?」




俺は頷く。




「……はい」




だが。



理解する。




今のは。




“当てただけ”。




致命じゃない。




その証拠に。




空の向こう。




“それ”はまだいる。




そして。




声が響く。




「……確認した」




「お前は」




「“定義の外側に触れる存在”だ」




その言葉。




完全に。




認められた。




俺は息を吐く。




「……どうも」




だが。




次の言葉が来る。




「ならば」




「排除ではなく」




「再構築する」




空気が凍る。




リゼが呟く。



「……それ最悪じゃない?」




カイが一言。



「存在ごと書き換える気だ」





俺は空を見る。




「……いいですね」




自然に笑う。




アリアが呆れる。



「ほんとに」




だが。




手を握る。




強く。




「……やるわよ」




「はい」





次は。




本気で来る。





第72話 完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ