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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第六章

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第92話 切実な弱音

「貴女が戦闘を回避することを考えていたのは意外ですね。敵機の撃破数を増やすチャンスではありませんか?」


「でも……相手は第3戦団です。士官大学校の同期生が何人も仮配属しています」


 第3戦団は、仮配属の士官候補生を最も多く受け入れている。同期生のうちでも重甲機兵のパイロットを志願した者は、ほとんど顔見知りである。

(玲なら、同期生でも気にしないで戦えるんだろうな)

 不意に入鹿のことを思い出した。



 赤塵の丘。

 GS4でA級ペルセウスを撃破した後……御堂は、機体を降りた敵パイロットを殺せなかった。そのため敵の罠に掛かってしまい、GS4を奪われそうになる。

 御堂自身も殺されるところだったのを、入鹿に助けられた。

(玲は、生身の人間を殺すことに躊躇がなかった)

 模擬刀で入鹿と戦っても、御堂には負けない自信がある。剣技でも、重甲機兵でも、入鹿より強い自信はあった。

(でも、真剣で戦ったら勝てる気がしない)

 戦場では、入鹿のような非情さが求められているのだと思う。それを理解してなお、御堂には割り切れないし、そうなりたくない気持ちもあった。



 司令官室に甘い匂いが漂った。コーヒーのおかわりと一緒に、テーブルには焼きたてのクッキーが運ばれた。

 刀自古が「ちょうど焼き上がったから」と勧めてくれ、御堂も「ありがとう」と礼を言ってクッキーを口にする。甘さを控えめにして、とても美味しくできていた。


「美味しいです!」


 思わず声に出してしまう。安全保障局の行政官より、刀自古にはメイドのような仕事の方が似合っているのではないか……と御堂は思ってしまった。

 刀自古は何も言わなかったが、少し得意そうだった。


「それと……撃破数を増やしたいって気持ちは、あんまりないんです」


 独り言を呟くように御堂は言った。


「正直、どうしたら一番良いのか全然わかんないです。急に1人になっちゃったし」


 言わないつもりだった言葉が、思わすこぼれてしまう。一言を口に出してしまうと、そのまま本音が漏れ出してしまった。


「玲とは、いろいろと意見を違えてたんだけど……上手くやっていけると思ってたんですよ。あたしに足りない所を玲に埋めてもらって、玲の足りない所をあたしが埋めて……なのに急にいなくなって、後任の青柳少尉はよくわかんないし」


 御堂が吐き出す初めての弱音……刀自古は、黙って聞くしかない。

 刀自古は、入鹿=大兄皇子おおえのみこが何処に行ったかを知っている。しかし、それは御堂が知るべき情報ではない。

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