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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第六章

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第91話 脳天気な期待

 戦艦『朱雀』の司令官室。2番機との3回目の模擬戦を終えて、御堂は戦闘記録を刀自古とじこに届けに来ていた。

 御堂が部屋に入ると、刀自古は食堂の厨房からコーヒーを取り寄せる。紅茶よりコーヒーを好む御堂のための心遣いである。

 心なしか……最近の刀自古は優しくなったような気がする。御堂は、思い切って「考えていること」を切り出してみた。


「大きな戦いになりそう……って言いましたよね?」


「はい」


「工廠施設で武力衝突は起きたけど、まだ誰も死んでません。第2戦団と第3戦団での話し合い次第で、戦いは避けられるんじゃないでしょうか?」


 入鹿に伝えたのと同じことを刀自古に伝えてみる。刀自古は、御堂の双眸を覗き込んで真剣なのを確認してから口を開いた。


「死者は出ていますよ。たくさん……」


「え?」


「同盟議会の議員150名のうち、逮捕に抵抗した42名が死刑になっています。議長を含めた、逮捕の108名も終身刑です」


 同盟議会の議員を逮捕したのは安全保障局である。安全保障局は裁判権を有するため、逮捕の時点で判決……死亡すれば『死刑』として扱われる。

 一部議員による「議会の私物化」と「違法な決議」が根本的な問題なのである。第2戦団と第3戦団の武力衝突は、その連鎖の一つでしかない。


「その同盟議会の議決を根拠として、軍事行動を起こした第3戦団に正当性はありません。戦闘を避ける唯一の方法は、第3戦団の武装解除と無条件降伏だけです」


「……」


「第3戦団との交渉は有り得ません。小さな要求を一つでも受け入れるなら、違法な暴力に秩序が屈した前例を残すことになります」


 御堂の脳天気な期待を、刀自古は完全に否定する。



 しばしの沈黙。2人のコーヒーと紅茶はおかわりが注がれる。


「ああ、もう一つだけ可能性はありますね」


 俯き加減だった御堂が反射的に顔を上げた。


「今回、第2戦団と衝突したのは第3戦団の南部方面軍でしたね。『第3戦団自らの手で南部方面軍を殲滅すれば、第3戦団に弁明の機会を与える』との帝の詔が出されました」


「それ、逆に残酷ですよ、第3戦団で同士討ちなんて……。第3戦団だって、帝や帝国を守る同士なのに」


「前に言ったことです。『真に怖れるべきは優秀な敵ではない。無能な味方である』と。無能な味方は、共食いでもしてくれればちょうど良いんです」


 刀自古には、御堂が知りえない第3戦団に関する情報がもたらされている。刀自古にとって、現在の第3戦団は『帝や帝国を守る同士』とは考えられなかった。


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