第63話 施設攻防戦、夜(1)
予測された工廠施設奪還の攻撃はなく、この日は日没を迎えた。日没後の光量ではゼナ・クリスタルは十分な反粒子を生成できないため、重甲機兵も戦力としては役に立たない。
「施設地下の核融合炉は正常に稼動していますので、それが発生させる電力で機体のバッテリーへ充電できます。3機分も余裕ですね」
インフラも正常なので籠城は可能。3機のB級ジークフリード分隊と制圧部隊は、しばらく寝泊まりをすることになりそうだった。
工兵部隊は、施設に貯蔵されていた武器・弾薬や重甲機兵の交換用部品等のめぼしい物品は既に運び出してしまっている。再び敵側に占拠されたとしても、利用価値をなさないようにするためだ。
30人程度の兵員が集まり、軍用携帯食での食事を済ませて簡単なミーティングが行われた。3交代制で夜間の見張りを行う一方、重甲機兵のパイロットは明日に備えて休むことになる。
入鹿と御堂には、ホテルのツインルール程度の広さの部屋が割り当てられた。
部屋に入ると、御堂はさっさとシャワーを済ませて、入鹿を促した。入鹿はシャワーを出て再び軍服を身につける。
そんな入鹿を見て、バスタオルを巻いただけでベッドに腰掛けている御堂は呆れた。
「何でシャワーの後に、また軍服着るの?」
「敵の夜襲も想定される状況ですから」
「約束、果たすつもりでいたんだけど?ヤらせてあげるって件の」
「……」
「複座型のCユニット操縦者とSユニット操縦者が、そーゆー関係なのは暗黙の了解じゃん。この部屋割りも、それ前提だよ?」
同性同士で同室になる組み合わせが基本だったが、御堂と入鹿だけは異性での同室が指示された。
「帝と太后だって、Cユニット操縦者とSユニット操縦者の関係から始まったのは有名だしね。玲も遠慮しなくていいんだよ?」
御堂の言葉に、入鹿が珍しく驚いている。
「……有名、なんですか?」
「え、知らなかったの?」
「いえ、知ってますが……有名とは存じませんでした」
「太后が、帝を誘惑した……って噂じゃん」
御堂は面白がっているが、その噂の出所を推測すると入鹿は少し目眩を覚える。
「約束を守るとのお気持ちは有り難いですが、僕には婚約者がいますから。その件は、御遠慮させて頂きます」
「ええーーー?」
ベッドから跳ね上がるほど、御堂は驚いた。
「どんな女性? 馴れ初めは? プロポーズの言葉は?」
ほんの少しだけ嫉妬心も芽生えたが、それよりも好奇心の方が遙かに優る。何よりも、朴念仁を絵にしたような入鹿がはにかんでいるのが面白くて仕方ない。




