第267話 会談準備
S33中継基地に、第4戦団の『胡蝶』が入港してから1週間が経過した。
第3戦団中央本部の東城准将と柳沢大佐は、カイザーに先導されてS33中継基地の空中移送機発着路に移動していた。
東西に走る機甲路。
その北側に建造されたS33中継基地は、管制施設を中心に南側に陸上港を備え、西側には空中移送機発着路を備える。 南北に伸びる主発着路と45度の角度を取って設置された副発着路は、垂直離着陸のみならず滑走路としても機能するよう長めに敷設されている。
その空中移送機発着路が日嗣皇子との会談の場となる。南北に長い主発着路と副発着路の交点を取り囲むようにラインゴルドのB級ジークフリードが立っていた。
ロケット砲を装備した、対重甲機兵戦を想定した実弾兵装だ。
「完全な臨戦態勢ではないか。このままS33中継基地で戦闘に突入するつもりか」
「第3戦団は、過去に幾度も日嗣皇子を襲撃しています。ラインゴルドとしては当然の警備態勢ですよ」
カイザーの言葉で、東城准将の頭を過ったのは『ナーガオウ州議事堂包囲戦』で、南部方面軍とガルーダ部隊が第2戦団と衝突した件である。
「あれはナーガオウ州都への被害を最小に留めようとする非常時の対応であり、日嗣皇子に危害を加える意図は一切なかった。それが、第3戦団中央本部の公式見解である」
第3戦団の公式見解は、ラインゴルドに取って意味はない。この場で、東城准将と見解の相違を争うつもりもカイザーにはなかった。
ここで、これから起こるかも知れない戦いから「東城准将と日嗣皇子を守る」こと、そして「嵯峨州に被害を生じさせない」ことが重要だった。
S33中継基地は、帝国の敷設した機甲路にあって、嵯峨州に一番近い地点にある。そのためラインゴルド傭兵機団の嵯峨州派遣部隊が仮本部として使用しているのだが、東城准将と日嗣皇子の会談の場所とすることに嵯峨州議会から苦言もあった。
南部方面軍により都市機能を破壊された嵯峨州としては、都市周辺に南部方面軍の陸上戦艦が展開することを危惧する、と。
しかし、会談場所を嵯峨州から離れた場所にすることは、嵯峨州派遣部隊の戦力を分散させることになる。州議会にカイザーが頭を下げる形で、S33中継基地での会談を実現させた。
8機のB級ジークフリードに守られた発着路……その、南方向にある陸上港に、青い戦団機の陸上戦艦が小さく見えた。
「あれが、日嗣皇子の旗艦『胡蝶』か」
東城准将は、懐に持った周防崎統括司令から預かった親書に触れ、会談への心の準備をする。




