第231話 幹部会議・思惑
結果として、ガルーダ作戦に参加した中央本部部隊は壊滅してしまう。藤崎自身も傭兵団に捕囚されてしまい、身代金を支払う手筈を整えたのは神津である。
しかし、解放された後に彼女が准将から少将へ昇進したことは、神津も納得しかねる対応だ。つい先ほど行われた各方面軍司令が参加した幹部会議でも、それは問題視されていた。
「藤崎副司令の昇進は、ガルーダ作戦以前からの決定事項だった」
周防崎は統括司令として、彼女の昇進をそう説明した。しかし、そんな事実はなかったし、周防崎の思惑は全く別のところにある。
第2戦団統括司令の月夜見が大将から大佐へ降格した。それにより、近衛軍では女性の将軍がいなくなったのである。
このタイミングで藤崎を昇進させれば、近衛軍唯一の女性将軍の存在を、第3戦団のイメージアップに利用できると判断したのだ。勿論、反対意見もあった。
「叛逆を企てた南部方面軍に加担して、日嗣皇子と敵対した将を昇進させるのは、皇城府への叛意と受け取られないか?」
神津も反対する1人であったが、最終的には「ナーガオウ州都の破壊を最小に留めるためのやむを得ない対応」であった周防崎は結論づけた。
周防崎統括司令の判断は裏目に出た……と、神津は判断している。
「周防崎統括司令。我々は、根本的なことを考え違いしているのではないでしょうか」
「考え違い、とは?」
「我が第3戦団は、帝国の西方域を守護しています。そして西方域には外殻都市が多く、その外殻都市同士の利害の調整は大変難しいものです。第3戦団が長い時間をかけて築いた信頼関係がなければ、西方域を治めるのは不可能でしょう」
「その通りだ」
「帝は、西方域を治めることを放棄した可能性があります」
帝国が、その一部の統治を放棄するはずがないではないか……神津が何を言いたいのか、周防崎には読めなかった。
「神津中将。君の言わんとすることが理解できないのだが?」
直轄領と違い、外殻都市は自治を行う州政府を有する。独自の防衛軍や守備隊を組織して都市を防衛している。
その中で西方域の外殻都市は、第3戦団に都市防衛を委ねている。
「西方域に対する認識に変化があるなら、最初に第3戦団と協議を行うはずだ」
都市防衛と言う大任を引き受けることで、外殻都市に第3戦団は影響力を持つ。逆に第3戦団も外殻都市の利害関係に配慮し調整する。第3戦団は、単に「西方域を守護する戦力」の域を超え、西方域との窓口の任を果たしている。
第3戦団の長として、周防崎はそのように自負していた。




