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赤塵のサンダーバード -機兵戦記-  作者: 星羽昴
第七章

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第160話 人を見る目

 月夜見が手を付けなかったポタージュスープが入った汁椀を手に取り、太后おおきさきは振袖の警務官を呼んだ。


「もう、下げていいわ」


 振袖の警務官は、汁椀を受け取ると庭園を出て行く。



 月夜見は目障りなもの(・・・・・・)が消えて、少しホッとする。そんな月夜見を、太后は面白がるように笑う。


「ところで、月夜見様のお気に入りのパイロットはどうなさるんですか?」


 御堂のことだ。太后のもとには、刀自古からの情報がそのまま伝わっている。


「御堂准尉に関しては、私の責任は大きい。彼女の可能性の一つを潰してしまった」


 御堂が優れた操縦技術を持ち、才能あるパイロットであることは間違いない。その点に関しては、射流鹿の評価も同じである。


「他人からも好かれる性質だ。周囲の者も、多少の無理は利かせるよう努めてくれる。天性のカリスマ性と言って良いだろう」


 だが、だからこそ御堂が身に付けなければならないモノがあったのだ。



 新型機の慣熟中の所属不明機による襲撃への対処。フラッグ戦でのイルドラ軍の奇襲攻撃に対する対応。

 御堂は、明らかな判断ミスを犯した。


「若さ故の経験不足から、判断ミスをすることはある程度は仕方のないことだ」


 失敗は挽回すればいい。第2戦団は、規律に厳格ではあるが、失敗を挽回する機会を奪うことはしない。


「失敗に対する寛容(・・)甘さ(・・)は、似て異なる。私は、甘い対応をしてしまったようだ」


 ルージュピークの工廠施設での命令違反は、判断ミスでは済まされない。そして、州議事堂包囲戦での再出撃も。


「私が御堂に目をかけている、との噂も流れていた。間違いではないのだが……それが、彼女やその周囲の者に、やって良いことと悪いことの判断を誤らせてしまった」


 自身の降格も更迭も、当然の処分だと月夜見は思っている。


「お前や刀自古の言った通りだ。私には『才能を見る目はあっても、人を見る目がなかった』と言うことだ。私は、彼女に不足するものが自制心(・・・)だと気づけなかった」


「あら、珍しい」


 自嘲的な月夜見を見て、太后は大袈裟に驚いて見せる。



 月夜見と太后の会話が微妙なタイミングで途切れた頃、振袖の警務官が庭園に戻ってきた。


「茉莉花。月夜見様がね、ご自身の『人を見る目がない』」のをお認めになったの。だから、貴女と射流鹿の結婚を反対する人はいなくなりました」


「待て、それとこれとは話が違う!」


 この、太后の護衛を努める振袖の警務官が、射流鹿が16年前に結婚を申し込んだ女性である。

 月夜見だけ(・・)が「この女は、射流鹿に相応しくない」と反対していた。


ー第七章 おわりー


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