第161話 嵯峨州を解放せよ
戦艦『朱雀』が、ようやく前哨基地へ帰港した。御堂が中央デッキに乗り込むと、興田整備主任や山根エリカ軍曹が大袈裟なくらいに無事を喜んでくれた。
(あたしのせいで注意勧告とかされたんだろうな)
そう思うと申し訳ない気持ちになる。しかし、中央デッキの整備班スタッフは誰一人不快な顔をしないで御堂を迎えてくれた。
興田整備主任が、ニヤリと笑って台座を指さした。
「ええ?」
台座にはGV3Xが、完全な姿で座っていた。破壊されたバックパックも新しいものに換装されている。
「バックパックは、GV3型のものと全く同じ規格だからな。直ぐに手配はついたよ」
「ありがとうございます」
礼こそ言ったが、内心は複雑な心境だった。SVを務めてくれる青柳がいないのだ。刀自古の言葉通りなら、二度と御堂の元へは現れないだろう。
戦艦『朱雀』と『胡蝶』は、ナーガオウ州議事堂包囲戦の後、首都・不死鳥京へ向かった。月夜見は、皇城府に赴いて「第4戦団の新設」を強引に推し進めるとともに、第2戦団統括司令官の職を辞す意向を示した。
第4戦団の新設に関しては、予てより計画されていたことであり、単に正式発表を繰り上げたに過ぎないが、月夜見が「第2戦団統括司令官を辞職する」旨の話はあまりに唐突だった。
『冷静になれば、気が変わるかも知れない』
と、第2戦団統括司令官の職を少しの間空席にするとした。
そして……第2戦団は、統括司令官不在のまま次の任務に就くことになる。
「嵯峨州の第3戦団を叩け、ということですよね」
八須賀大佐による説明の後で、御堂は新藤中尉に概略を確認する。いつの間にか新藤中尉が、御堂のアニキ分になっている。
嵯峨州は、第3戦団が守護する西方域の外郭都市である。しかし、外郭都市でも議会には擁帝派が多く、中核都市とも親密な関係を築いている。
第3戦団が「帝の敵」とされた際に、嵯峨州議会は第3戦団に『州からの退去』を勧告した。それに反発した嵯峨州に駐屯する部隊が、州市民を略奪しているらしい。
「それ、普通に強盗団じゃないですか?」
「嵯峨州に駐屯する部隊は、第3戦団の南部方面軍に所属してる連中だ」
南部方面軍と聞いて、思わず納得してしまう御堂。
「第3戦団の本部は対応しないんですか?」
第3戦団が皇城府から「帝の敵」を宣言されてから1週間が過ぎた。当初は傭兵の奇襲に手を焼いたが、現状では軍を立て直し傭兵を撥ね除けている。
「身内同士の戦闘で戦力を消耗させたくないんだろう。周防崎大将は部下思いだからな」
新藤中尉の皮肉は、御堂にも伝わった。




