調査-5.5(回想4)
「新!ねぇ、しっかりしてよぉ!!」
「今、救急車呼んだんで、だ、だいたい10分くらいかかる、らしい......です。」
電話を終えた朱音が倒れた新に声をかけ続ける日葵に向けて告げると、日葵の大きな瞳から涙をぼろぼろとこぼし、嗚咽が漏れ始めた。
そこへ、3階の階段の扉が勢いよく開き、教員である紫藤 巳鶴が息を切らせながら朱音たちの方へ駆け寄ってきた。
「く、黒藤さんから、春日井くんが階段から落ちたみたいだってきいて!」
「先生、救急車は呼んだんですけど......。」
朱音の言葉に紫藤は頷くと、新の様子をくまなく観察する。
「黒藤さんにはそのまま事務局に行くように伝えてあります。周防くんが救急車を呼んでくれているので、救急車が到着するまで待ちましょう。」
紫藤はちらりと朱音の顔を見たが、すぐに日葵たちに向き直る。
「せ、先生、新大丈夫かな......。」
日葵は顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくりながらすがるように紫藤をみつめる。
紫藤は顔を曇らせると、新の口元に手を近づけた。
「先生は医者ではありませんから、春日井くんの状態については大丈夫って断言することはできません。でも、今春日井くんの呼吸は止まっていない。みたところ、頭を強く打ちつけているようだから、素人が動かすのは危険です。今は、救急車を待つしか......すみません。」
紫藤の言葉に日葵は嗚咽を漏らしながら新の体にすがりつく。
日葵の様子に朱音は俯き、佑介は顔をそむける。
日葵の嗚咽だけが響く階段の踊り場に、かすかに遠くから音が聞こえたような気がして朱音はばっと顔を上げる。耳をすますと、かすかに救急車のサイレンが徐々に近づいてきている。
朱音がサイレンの音に気づいたすぐ後、紫藤も小さく息をのんだ。
「……救急車が来ましたね。すぐここまで来てくれるはずです。」




