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調査-6

朱音が伸ばした手が肩に触れるも、男は微動だにしない。

一瞬の静寂の後、朱音はため息をつくと少し強く男の肩を揺さぶった。


「先生、紫藤先生。」


揺さぶりつつ声も徐々に大きくしていくと、紫藤はびくっと大きく肩を跳ねさせて朱音の方に顔をむける。


「えっ!?あ、周防くん!?す、すいません。集中していて......。」

「紫藤先生、集中すると周りが見えなくなるのどうにかした方がいいっすよ。」


呆れたような朱音の声に紫藤はへらりと笑うと頭をかいた。


「気を付けるようにはしているんですが、中々治らなくて......周防君は僕に何か用かな?」

「あぁ、あの、春日井さんの件でちょっと先生の話を聞かせてほしい人がいるんすけど、今時間大丈夫っすか。」

「春日井君の件で?それは、君の後ろにいる彼に話せばいいのかな。」


紫藤が朱音の後ろを手で示すと、朱音はぎょっとして勢いよく後ろを振り向いた。

いつの間にか距離を詰めていた玲が、朱音の背中越しに二人のやり取りを一部始終見ていたのだった。


「おまっ!待ってろって言ったのに。」

「あんまり人もいないようだしいいかなって。それよりも、先生にお話しきくんでしょ。」


あっけらかんと言い放つ玲に朱音はため息をつくと、紫藤に体を向け直す。

二人のやりとりを見ていた紫藤はもともと柔和な瞳を更に和らげた。


「周防君に仲のいい友人がいるようで先生は嬉しいです。」

「いや、別に友人では......。」


気まずそうに頭をかく朱音に、玲は朱音の後ろからすぐ横に並び立つと、紫藤に向けて右手を差し出す。


「初めまして、神月玲といいます。朱音さんとはちょっとした知り合いでして。」

「あぁ、これはこれは。僕は紫藤巳鶴といいます。民俗学を専攻しています。どうぞよろしく。」


差し出された手を握り、自己紹介する玲と紫藤に、朱音は「ちょっとした知り合いってなんだよ」とこぼしつつも、周りの教員の視線が一斉にこちらに向かっていることに顔をしかめた。

そんな朱音の様子をみてか、紫藤が思いついたように手をあわせる。


「そうだ、周防君にみせたいものもあるし、研究室に行こうか。」

「みせたいもの?わかりました。」


にこやかに告げる紫藤に朱音は首を傾げながらも頷いた。

玲はちらりと職員室を見渡し、ふんと鼻を鳴らす。

紫藤が朱音を研究室に誘った途端、職員室の空気が和らいだのを感じたのだ。

表情にださないようにしているようだが、朱音がいなくなるのがここの教員たちには余程嬉しいらしく、それを隠そうともしない様子に玲の眉間に皺がよった。


「なら、はやく行きません?ここ空気悪くて、僕ちょっと気分悪くなってきました。」


周りの教員にも聞こえる声量で言い放つ玲に紫藤と朱音が目を見開く。

玲の言葉に教員たちは肩を少し震わせるとばつが悪そうに顔を俯かせたりわざとらしく咳きこんだ。


「うん、それじゃあ行こうか。」


紫藤の誘導で三人は職員室を出て研究室に向かって歩きだした。

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