濡れ衣の断罪と婚約破棄
やっと3年という学園生活を終わらせ、卒業後である明日からは王妃としての修行の日々を過ごすはずだった。
レグルス王太子の隣に立つ少女、アイリ・マクリール様が現れるまでは___
「アイリに対しての嫌がらせの数々、ここで断罪させてもらう」
会場中に聞こえるほどの高らかな声で告げられた言葉は想像通りのセリフ。
「申し訳ございません、レグルス様。おっしゃっている事の意味が分かりかねます」
「何をとぼけた事を、貴女がアイリに元平民である事を理由に酷いことを言ったり、挙句にはアイリを階段から突き落としたという人としてあるまじき行為を働いた事を言っている」
今上げられたことのどれもした記憶が無い。
むしろリディメリアはアイリとほとんど接点を持とうとしなかったし近づこうともしなかった。
今初対面と言っても過言では無い。
「どれも記憶にございません。私とマクリール様は今が初対面のようなもの、そのような事をする理由もございません」
「戯言を!アイリが突き落とされた時、リディメリアを見たという証言も上がっている!言い逃れは出来ないと思え」
入口に控えていた兵士がリディメリアの周りを囲み拘束される。
「婚約破棄の手続きは既に終わっている。あとはリディメリア、お前の残酷さはこの国の危険因子になる。なのでお前には国外追放を言い渡す!」
告げられた罰に会場中がさらにざわめいた。
そして、レグルスの隣で彼女が小さく微笑んだ。
リディメリアの言葉は誰の耳にも届かない為、なすす術もない。
アイリの証言と噂だけの不明確な証拠。
そんなもので私の積み上げてきた全てが無くなってしまうのか。
ふと、意識が遠のいた
『よし!なんとかクリア出来た!』
脳裏に過ぎる知らない映像。
見たことの無い物で溢れかえった部屋に1人の女性がいた。
『それにしてもレグルス様かっこいいなぁヒロインが羨ましすぎる!』
ベッドの上でゲームをしていた女性は先程終えたばかりの筐体を胸に抱えのたうちまわっていた。
『でも国外追放かぁ、悪役令嬢といえどリディメリアにはちょっとだけ同情するな…』
『やば!時間!バイト行かないと!』
あぁ、これは前世の記憶だ。
そう思えたのはこの後の展開を『知っていた』から。
そう、この後の急いでバイト先に向かったこの女性は信号無視をしたトラックに引かれて___
ハッ……と目が覚めた。
薄暗い石造りの部屋で私は硬いベッドに横たわっていた。
膨大な記憶が蘇ったせいかまだ頭がズキズキしていた。
「ここは……そっか、断罪…されたんだっけ」
城内の独房だろうと1度だけ見る機会があったので覚えていた。
まさか自分が捕えられ入る事になるとは夢にも思っていなかった。
「とりあえず状況を整理してみましょう」
こちらの物語はアルファポリスさんでも公開させて頂いております。