60.攻城戦準決勝…終幕
第二章終了です!長くしすぎたと反省しております…。
よろしくお願いします。
<YOU WIN!!>
システムメッセージでも、俺たちの勝利が示された。
目的達成だ。
近くを飛んでいたドローンも消滅していく。
俺のコストや状態異常もこの後時計塔にワープすれば元に戻るだろう。
攻城戦は決闘と同じシステムで、中で起こったことはほとんどなかったことになるからな。
攻城戦ならではのシステムと言えば、通常エリアで行なっているため、そのまま徒歩で帰ったりすることも可能だという点だ。
誰が捕獲したのかはわからないが、犯人グループを捕獲した奴は徒歩帰り決定なんだよな。おつかれ。
なんて、呑気にシステムメッセージを待っていた。
攻城戦が終わると、いつもは時計塔に戻るかどうかの選択をするシステムメッセージが来るのだ。
しかし、今回は妙に遅い。
いつもは勝利のシステムメッセージのすぐあとに来るはずなんだけど…。
唐突に、空に信号弾が上がる。
あれは…俺らの陣地の方向?
首を傾げながらも、緊急信号弾に応えるべく歩を早める。
状態異常は、継続中だがすぐに死ぬ程ではない。
最悪戦闘になっても、オーブ無しで勝ちに行く気概を持たなくては。
少し気合いを入れる俺の近くにスッとイケオジが現れ、並走して来た。
俺はこの人の顔好きなんだけど、コータのお使いで来たりするから怖いことしか言わないんだよなあ。
俺はそう思いながら、カインの話に耳を傾ける。
「ご主人より伝言です。カゲツ、キャロンは呼べるか?呼べるなら呼んで早く来て欲しい。呼べないなら普通にダッシュで来てくれ。結構まずいかもしれない。とのことです」
いやまじか。
よりによってこんなコンディションの悪い時に…。
「コータに伝えてくれます?俺はもう誰も呼べないって。急いで行くけど」
「かしこまりました。それでは」
現れた時と同じように唐突に姿が消える。
俺は、結構まずいかもしれないという言葉に危機感を覚えて更に足を速めた。
仲間の位置を確認するためにマップを開く。
しかし、このマップも攻城戦の時と同じ仕様のままで、敵味方問わず、自分の位置以外が表示されないようになっていた。
多分カインに聞いておけば確実だったのだろうが、俺にもなんとなく状況が掴めてしまった。
恐らく、攻城戦はまだ終わっていない。
フラッグを取ったからこちらの勝ちは決定しているし、ドローンも消えたから、運営的にもそれで問題ないはずだ。
ただ、ゲームが終わっていないだけ。
それだけだが、コータの言葉にはそれ以上の何か恐ろしいものがあるという意味が含まれている気がする。
段々と自陣の方向に近づいてきた。
様々な音が聞こえる。
つまり、恐らく戦闘中だ。
あちらのフラッグを取ったのに、もうゲームは終わっているのに。
そう考えると、嫌な感じしかしなかった。
藪を一つ掻き分けて前に出る。
俺の目に映ったのは、開けた自陣の中で二体のモンスターと6人のプレイヤーが乱戦になっている光景だった。
「何が起きてるんだ!」
思わず叫んだ俺に、コータから大声が返ってくる。
「知らねぇよ!!ただ、目的はパンナ姫だ!!」
「パンナちゃんが!?」
そちらの方向を見ると、ユーカとクーレさんがプレイヤー一人とモンスター二体からパンナちゃんを守っている。
「カゲツ!あんた早くこっちに来なさい!パンナちゃんが回復してくれるわ!」
「回復貰ったら手伝って!流石にスーパーアイドルでスーパー強くっても人を守りながらは厳しいんだよね…!」
クーレさんはパンナちゃんを後ろに隠すようにして戦っていた。
彼女の守りは堅牢だが、いかんせん基本的に一人用のオーブである。
守れる範囲が狭いのだ。
加えて、相手は広く配置できるほど数がいる。
クーレさんのオーブの弱点は、長時間の範囲攻撃と、短いスパンでの多段攻撃だ。
敵の数が多いということは常にそれをされる恐れがある。
他者を守るというハンデが無ければ、それでも余裕なのだろうが、今の彼女は苦しそうだった。
俺は走ってパンナちゃんの元へ向かう。
怪鳥のモンスターとそれに乗った男が何やら攻撃する素振りを見せた。
たちまち、ユーカの戦闘斧がふるわれる。
そうして奴らの妨害がないままに、俺はパンナちゃんの元へたどり着いた。
「大丈夫?」
「うん、私は大丈夫よ!二人のおかげ!カゲツの怪我も治してあげるね!」
いつも通りの明るいパンナちゃんだった。
俺の方へ右手をかざし、左手で胸元のブローチを握る。
「“聖なる光よ、今集え。幻想の姫の名の下に”<祝想気>」
左手からまばゆい光が溢れた。
俺の状態異常は消滅し、体力もほぼ回復している。
驚きの効果である。
「カゲツお兄ちゃん、無理しちゃダメだよ!」
笑顔で送り出してくれるパンナちゃんに尊さを覚えながらも、槍を構えてユーカたちの対峙する敵に向かう。
「うぉぉ!」
掛け声とともになぎ払った一撃は、怪鳥型モンスターのかぎ爪を弾き飛ばした。
少し余裕の生まれた戦場で、ユーカは言う。
「遅い。とりあえず、状況はなんとなく見えたの?」
「悪いんだけど、パンナちゃんがすごいってことと、こいつらが襲って来てる現状しか分からない」
「カゲツくんはそういうの向いてないねー。奴らは多分狙ってるんだよ、パンナちゃんを」
なるほど。
これだけの力があれば狙われても仕方ない…のか?
それならプレイヤーに対してそういう事件が起きてても不思議じゃないけど…。
「カゲツ!余計なこと考えないで!ほら、次来るわ!」
ユーカの声かけで我に返る。
空から大きな翼を羽ばたかせ、怪鳥が迫っていた。
俺はユーカの前に出て、攻撃を防ぐ。
「ユーカ!追撃!」
「わかってるわ!」
俺の地力は弱くても、ユーカは地力から攻撃力が高い。
彼女に任せれば、怪鳥モンスターくらい、地に落とすことができる。
「はぁぁぁっ!」
戦闘斧をふりかざすユーカ。
しかし、その足元が突然隆起した。石柱である。
ユーカはぎりぎりバランスを保ち、そのままの足で跳躍した。
空中に躍り出て、彼女は思い切り戦闘斧をふるった。
怪鳥モンスターの体が思い切りひしゃげる。
打ちのめされた状態で、背中に男を乗せたまま地面に落ちていった。
それを最後まで認める前に、ユーカの体も明後日の方向に飛んでいった。
原因は大きく突き出たこの石柱だ。
ある男の顔が脳裏に浮かぶ。
そうして木陰から現れたプレイヤーはやはり見たことのある顔だった。
「…あなたも、敵なんですか?」
「久しぶりだな、あんたら。キャップが最近世話になってるんだって?」
“南の密林”でのキャップの仲間。ブルトンである。
彼の表情は若干やさぐれて、何か重いものを背負っているようであった。
「どうして攻撃するんです?」
「キャップには頼まれたけどな、俺はあくまでも勝つために攻城戦やってるのよ。自分が戦闘向きじゃなくても戦えるこのステージに立とうとしてるの。それを邪魔されたくはないんだよな」
「それなら、攻城戦自体で勝てばよかったじゃないですか!」
俺の声を聴いた途端、ブルトンの目が座った。
トーンダウンした重い声になって俺を責め立てる。
「攻城戦で勝てだと?調子に乗るなよ?お前たちみたいに【特殊上級職】を何人も抱えてるチームに勝つのはそれだけで至難の業!さらにはバケモンみたいに暴れて勝ちを作ってきた奴らが今回だけは変な動きをしやがる!負けたとわかった後も時計塔には帰れない!追いかけてみた先に俺たちを倒した理不尽な存在がいて、どうして倒そうとしちゃいけねぇのか、理由を教えてくれよ!!」
正に烈火のごとく怒鳴り散らす様子に、俺は言葉をなくした。
何を言えばいいのかわからなかった。
しかし、ここにはユーカ以外にもう一人、自分の世界を生き続ける人がいた。
「そんなこと、私が知るわけないでしょう?八つ当たりして、それで満足?満足したなら消えなさい。私は早くここから帰りたいの」
高飛車で不遜な態度。
言葉は悪辣、冷徹。
だがしかし、彼女の言葉は火に油を注ぐどころか、空気を凍らせた。
沈黙の空間が一瞬だけ現れる。
静寂を壊したのは、少し離れたところにいたコータだった。
「おい!パンナ姫が!!」
コータの視線は俺たちの後ろに注がれている。
振り返れば、クーレの後ろにいたはずのパンナちゃんが、蜘蛛の糸のようなものに簀巻きにされていた。
蜘蛛と蝙蝠の混ざったようなモンスターがそれをくわえている。
「パンナちゃん!!」
俺とクーレさんの声が重なる。
俺はすぐさま一歩を踏み出して、そちらに走り出そうとした。
「させるかぁぁあぁぁぁっ!!!」
ブルトンの声が聞こえる。
「<瓦礫錬成>!!!!」
俺の目の前に石でできた絶壁が現れた。
思わず足を止める。
壁の向こうでけたたましい鳴き声がした。
その後に俺が見たのは、大きな羽音とともにどこかに消えていく男と、狂ったように高笑いをするブルトン。
そして、崩れ落ちるチームのメンバーだった。
金曜日から第三章に入ります!
クーレのライブ、もう片方のイベントなど、片付けるべきことが沢山…。
もう少しコンパクトにまとめられるように頑張ります。
読んで下さり、ありがとうございます!!




