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Only Life of Arcadia  作者: kaisen
第2章 タルトレット
53/103

52.直前会議

よろしくお願いします。

 二回戦と三回戦は、地力の差が出た形で順当に勝ち進んだ。

 やはり、プレイヤーの一人として、コータやユーカ、守りの要であるクーレさんの力は大きかった。


 俺は死んでこそいないものの、三回戦ではユーカに助けられる形になってしまった。

 正直、ユーカが二人同時に粉砕してなかったら死んでた。

 それでも、やはり成長はするものなようで、当初に比べればだいぶ戦況を見ながら行動をすることができるようになっていた。


 問題は、次がキャップのチームと当たるということだ。

 実質、優勝よりも大切な依頼の時間である。


 キャップのチームはここまでずっと、三人組の一人が繰り出すボス級の驚異的な暴力で敵を粉砕してきている。

 幸いなことに、三回戦では二体のうち一方を倒しきることができていた。

 ただし、更なる追加戦力がいないとも言い切れないのが歯がゆいところである。


 俺の死者蘇生的なオーブですら、対話してしっかりと契約を結ばないと何度も召喚することができない。

 いくら不正な能力だったとしても、そのような不可逆的な仕様について反抗することはできないのではないだろうか。

 正直こうやって考えて心の安定を保たないとやってられない。

 この依頼があってこそ攻城戦に出たこともあり、びっくりするほど不安なのだ。


「なにを辛気臭い顔してんのよ。仮面の上からでもわかるわよ?」

「ユーカ…。ちょっと不安だったんだよね。失敗しちゃうかもって。ボス級なんて、俺は一人じゃ相手できないし」


 ユーカに正直にそう打ち明けてみた。

 何か解決法があることを期待して。

 しかし、帰ってきたのは斜め上を行く言葉だった。


「それは最もね。私だってあなた一人で相手ができるなんて考えてないわよ。寧ろ、ゲームオーバーになるんだと思ってるわ」

「それは正直すぎるし、辛辣じゃない?」

「ここで取り繕っても意味ないから。でもね、あなたの呼び出せるシャロンは間違いなくボス級に対抗できる手段の一つよ。今回の私たちの目的は犯人の身柄確保。ある程度ダメージを与えて、殺さないように情報だけ吐かせるのが仕事なの。そんな時に囮や時間稼ぎとしてのあなたの能力は優秀よ。コータも多分そういう作戦を使うでしょう」

「で、結局何が言いたいわけ?ちょっとは役に立つってこと?」

「そんなに怒らなくていいじゃない。役目を果たすまで死ぬなってことよ。つまりは、ずっとね。サポートはするわよ」


 ユーカは言いたいことを言い終えたという空気を出して去っていった。

 途中ムカついたけど、結局はエールを送ってくれたってことでいいんだよね?


 若干釈然としない思いを抱えながら、俺は試合の作戦を聞きに行った。

 攻城戦開始前のミーティング的なものだ。


 全員が集まってコータからの指示を聞くのがこれまでの通例であったが、今回はラトさんが作戦を話すようだ。

 依頼人だし、運営の人なので適任中の適任である。

 俺たちは今までよりも少し緊張した面持ちでラトさんの言葉を聞いた。


「皆さん、ここまでお疲れさまでした。ようやく私たちの本命である相手と当たることになります。心の準備はよろしいでしょうか」


 いつもの微笑みもなく至極まじめな顔のラトさんに、今回の依頼の重要性を感じる。


「ご存知とは思いますが、あの三人組のうち一人がイレギュラーな力を用いてここまで圧勝してきています。恐らく、彼らの動きは今回も変わらないでしょう。また、キャップ様の仲間の方に関しても、私たちに協力してもらえることになっております」


 よかった。仲間なのにキャップと戦うのはなんとなく嫌な気がしてたんだよね。

 共闘できるってことなのかな?


「システム上、キャップ様たちの攻撃は三人には意味がありません。しかし、私たちへの妨害攻撃はされないことになっています。今までの試合においても、彼らはおとなしくしていたのであまり怪しまれることはないでしょう。ここまでが、状況の説明です」


 なるほど。ここまでで状況の説明なのね。

 かなり話が重くなってきそうだと、覚悟を新たにする。


「では、ここからは作戦の概要になります。私とコータ様で相談して決めました。ですから、老骨は下がりまして、この後はコータ様に説明してもらいましょう」

「老骨ってほどでもないですよね。まぁ、説明は俺がしますけど」

「待ってました!」

「合いの手どーも」


 ラトさんに代わって出てきたコータは今までよりも照れくさそうだ。

 クーレさんも合いの手入れてるし、ノリノリだなあ。

 それとも、クーレさんはみんなの緊張を解こうとしたんだろうか。


 コータの気だるげで照れくさそうな印象も相まって、なんとなく雰囲気が緩和された。

 コータもそれを感じ取ったのか、少しだけ和やかな口調で話し始めた。


「えーと、俺たちは今まで、守備三、攻撃三のバランスのとれた構成で戦ってきた。だが、今回は守備二、攻撃四にして攻めに重きを置いていく。ただし、戦線を前ではなく自陣付近まで下げて構築することにした」

「それは、どうして?」


 俺は素直に疑問を口にした。

 コータは変わらないトーンで答える。


「攻撃を増やしたのはボス級の撃退に一番手をかけたいからだ。あいつをどうにかしないとこちらの作戦もどうにもならない。そして、攻撃に手を割きすぎて自陣が瓦解するのを防ぐために、前線を下げて、迎撃態勢を敷けるようにするわけだ」

「なるほど。そういうことか」

「あとは、各自の役割も変わったりしているからもう一度確認する」


 さっきユーカが言ってたやつだな。

 俺は何をしなきゃいけないんだろう。

 真剣に聞かなければ。


「まずはクーレ。クーレには今まで通りにパンナ姫を守りつつ、フラッグを確保しておいて欲しい。これは守備最強のオーブの宿命だと思ってくれ」

「ラジャー。まっ、もともとそのつもりだったし、私的には全然オッケーだよ!」


 クーレさんの明るい声が響く。


「それから、俺とカゲツとユーカ。完全に俺たちはボス級モンスター専用要員だ。初めに俺のオーブが効くのかを試して、無理であればユーカとカゲツの呼んだキャロンでごり押しだ。オーブが効かなかった場合の俺と、キャロンを召喚した後のカゲツは他の敵を戦闘不能に追い込み、確保するのが役目だ。少し変則的だが大丈夫か?」


 最初は、ボス級モンスターのほうに行って、キャロンを召喚したら他の敵を探して戦闘…。

 うん。大丈夫そうだ。

 できるできないは別としてだけど。


「オッケーだよ。頑張る」

「私もいいわ。要は私はボス級とずっと戦ってるんだものね。任せなさい」

「頼んだ」


 コータが頷いた。

 パンナちゃんも真剣に聞いている。

 コータはそんなパンナちゃんの方を向いて言った。


「パンナ姫には、チームのメンバー全員の回復を頼みたい。もしかしたら、自陣まで戻ってこられないかもしれないが、戻ってきた奴は確実にパンナ姫の力を必要としている。初めはクーレと一緒に留守番だが、重要な役目だ。任せていいか?」

「もちろんよ!私はそのためにここにいるもの!みんなでここまで戦ってこられて本当に嬉しいの。だから、できることは何でもするわ!」


 パンナちゃんはいつもの調子で明るく答えた。

 俺たちは自然に頷きあっていた。

 やっぱり、無邪気な子の言葉は何か心を落ち着かせる作用があるのかもしれないな。


「ラトさん、人数と能力的に一番大事な部分を依頼人のあなたに頼むのはちょっと気が引けるんすけど、改めて犯人の確保、任せてもいいですか?」

「ええ、もちろんですよ。どちらかといえば私が無理を聞いてもらっているようなものですからね。最良の結果が得られるように、粉骨砕身、死力を尽くしてまいります」

「いやいや、大げさですよー。私の中ではこの試合も、優勝への道の途中に過ぎないの!もう準決勝だから、緊張するのもわかるけど…みんな!私とパンナちゃんについてきて!なんたってこのチームの名前は『姫とクーレとスタッフ』なんだから!!」


 クーレさんの言葉にみんなが笑った。

 そういえばそんなダサい名前だったななんて、思い出したりして。


 場が収まると、朝焼けの前のような空気がチームを包んだ。 


 外の実況が大きく聞こえる。

 メンバーの顔色は明るかった。


「カウントダウンが始まるわ。行くわよ」


 クーレさんの一言でそれぞれが配置に着いた。


 システムメッセージがポップアップする。


 攻城戦イベント準決勝が、今、始まる。


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