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Only Life of Arcadia  作者: kaisen
第2章 タルトレット
25/103

24.お使い道中

よろしくお願いします。


週末にまた加筆修正をするかもしれません。

 俺のお使いは、粗雑に扱われるのかと思ってたけど、割とちゃんとサポートしてくれるみたいだった。

 部屋を出て案内されたのは屋上。

 来るときに使った“天馬車”に乗って、お目当ての“クラウン茶葉”が採れる辺りに移動できるらしい。

 1から探せと言われたらさすがに困ってたからありがたい。


 案内役兼御者のお兄さんはプレイヤーだと言うことで、この辺のエリアで注意すべきことを教えてもらったりした。

 ただ、この国に来るために通ったエリアなどは、ほとんど敵性モンスターはいないらしい。


「この国は公式が作ったセーフエリアみたいなものなんですよ。産業はほとんどお菓子関連。現実とのリンクも多数。OLA内のリゾート地です。そんなところに、強力なモンスターや特殊なモンスターを配置したら、損でしかないですから」

「なるほど。確かに攻略目的でここに来る人は少ないかも…」


 観光で来るにはとってもいい場所だろうなと個人的には思う。

 恐ろしい戦闘が起きなさそうってことは、思う存分羽を伸ばして楽しめるってことだからな。

 いや、別に戦闘行為が大嫌いってわけじゃなくて、やばい奴にもう巻き込まれたくないんだよね。

 今はもうオーブが使えるからそこまで絶望感はないけど、精神すり減らすのはこりごりだよ。


「そういえば、お兄さんはどうしてここで働いてるんですか?」

「あぁ、そうですね。普通のプレイヤーの方はこの世界で労働するなんて考えないでしょうね。娯楽なんですから」


 そう。その通りだ。第二の人生だとか言っても、結局RPGのような気分でこの世界を楽しんでいる人がほとんどなのだ。

 自分でお店を開いてる人は、まだ夢があるのかもしれないけど、雇われるってどうなんだろうという素朴な疑問だった。

 お兄さんは、爽やかに続ける。


「まず、このお仕事は一応上級職なんですよ。【王宮付運転手(ロイヤルドライバー)】っていいます。城で働いて対価を得られるだけではなく、上級職になれるのが魅力の一つでしたね。あとは、そこまで時間的な拘束がなく、顔見せなくてもいたら仕事があるよくらいのテンションだったので、逆にいやすくなりましたね。でも、1番は、この国のことが大好きだということです」

「へぇ、どこが気に入ったんです?」

「やっぱり、過ごしやすいんですよ。別に、何が特別というわけでもないんですが、王宮の人たちは優しいですし、私が運転を任されることが多い姫様の遠征は、どこもいいところなんですよね。姫様も素敵な方ですし」


 結構、こういう過ごし方もいいな。

 楽しそうに語るお兄さんを見てると、俺も何かこのゲーム内で見つけたいなと感じた。

 まあ、今日【蒐集家(コレクター)】になっちゃったんだけど。


「ほら、もうそろそろ国の端です。“フルーティオ森林”の北部は、【蒐集家(コレクター)】にとっては宝庫なのだと、姫様も【蒐集家(コレクター)】の皆様も口を揃える場所なんですよ」


 お兄さんの声を聴いて、“天馬車”の窓から外を見る。

 “フルーティオ森林”は、真上から見ると明るく鮮やかな緑だった。

 童話の中に出てくるような、発色が目に優しい。


 “天馬車”の高度が徐々に落ちていく。

 今度は都市の門の内側ではなく、外側に馬車は止まった。

 お兄さんがのんびりとした声で俺に告げる。


「着きましたよ。このあたりに“クラウン茶葉”が群生してるはずですよ。あとは、“フェアリーランプ”もいっぱいあったはずです。【蒐集家(コレクター)】ならほかにもたくさん採集できるものがあるんじゃないですかね」

「ありがとうございます!ちなみに帰りはどうしたらいいですか?」

「迎えに来ますよ。すぐそこの門から中に入ると、王宮に連絡できる装置がありますから、それを使ってください」

「わかりました」


 お兄さんは、“天馬車”に乗って颯爽と去っていった。

 正直、この国には詳しくないので、門の中に何があるのかはしっかりわからないけれど、行けばすぐわかるようになっていると聞いたから、多分大丈夫でしょう。


「よし、まずは、“クラウン茶葉”を探そうかな」


 俺はコマンドで呼び出した“蒐集図鑑(コレクションリスト)”を片手に、周りを見渡し始めた。

 あたり一面には、正体のわからない草が沢山生えている。


 OLAではアイテム採取の基本的な方法は、採取したいアイテムがドロップするオブジェクトを破壊することだ。

 しかし、【蒐集家(コレクター)】は技能を使うことで、破壊せずともアイテムを採取することができる。


 オブジェクトの破壊は、一応武器を使ったりして、ダメージを与えなければいけない。

 しかも、基本的には一部のみの破壊はできず、ドロップ確率があるため自分の欲しいアイテムが確実に手に入るわけではない。

 この問題は、【蒐集家(コレクター)】の技能で解決することができる。

 確定で狙ったアイテムを獲得することも、技能が高まればできるのだ。


 要するに、アイテム採集に関しては、【蒐集家(コレクター)】という【職業】はサポート要員として相当に優秀な【職業】なのだ。


「だからって、知らない植物探せって言われてもねえ…」


 “蒐集図鑑(コレクションリスト)”には確かに記載があるけど、草の特徴なんて見ただけじゃわからん。

 とりあえず片端から適当に採ってはアイテムの名前を確かめるという作業を続けることにした。


「これは時間がかかりそうだな」


――数分後。

 案外簡単に、“クラウン茶葉”は見つかった。

 一度見つけてからは、何の効果か見わけが簡単につくようになったので、目に見える範囲のものをできる限り採取していく。

 そうすると、知らないアイテムがわんさか出てきた。

 結構レアそうなものもあって、個人的には採取作業が楽しくなってきてしまっていた。


 ふと、前方からガサゴソと物音がした。

 頭が急に冷め、槍を取り出す。


 一応、ここはモンスターの出現してもおかしくないエリアなのだ。

 警戒はしてしかるべき。


 ゆっくりと近づいてくる何かを、息をひそめて待つ。

 すると、前方の比較的開けた場所に、見知った顔が現れた。

 思わず俺は声を上げた。


「あ!あの時の!キャップ!」

「誰だ!」


 おびえるように片手剣を前に構えている様子は、どこか滑稽だ。

 俺は槍を構えたまま、確かキャップと呼ばれていたはずの男を見据えた。


 アイツは俺のことが分かったのか、少し安堵した表情になった。

 片手剣を構えたままだが、若干先ほどよりも強気の声で俺に話しかけてくる。


「あの時の初心者か。“森の王者”に勝てる初心者なんて聞いたことはなかったが。よかったな。生還できて」

「あんときはよくもやってくれたな。別に死んでないからいいけど。…そういえば、一つだけ気になったことがあったんだ」

「あん?」


 あの対決の時も色々俺にはわからない話が出てきたが、そんなことよりも知りたいことがあったのだ。今の今まで忘れていたけど。


「俺が“アルカディアドラゴン”の親子について聞いた時になんでほんとのことを言わなかったんだ?誤解しなかったら、あんたを怒鳴りつけることもなかっただろうに」


 そう。俺がアリスの安否確認をしたとき、こいつは誤魔化すような言い方をしたのだ。

 知らないなら正直にそういえばいいのに。


 キャップは、口元をゆがめて言う。


「お前は馬鹿なのか?俺はあの時戦闘をするためにあそこにいたんだよ。怒りは一番手っ取り早く真剣勝負に持ち込める材料なんだから、さらにムカつくようにいうに決まってんだろうが」

「…謎理論」


 俺にはこの男の考えていることはやっぱりよくわからないようだった。

 しかし、俺のつぶやきを聞いて、キャップは静かに怒りながら語った。


「俺たちだって、好きであんなことしてたわけじゃねぇんだよ。攻城戦には出られないし、今回だって、出られると思ったらなんでこんなにやばい状態になってんだかもわからねぇし…。なんだかんだで助けてほしいのはこっちの方なんだよ」


 なにか、深い事情がありそうなのは、さっきの様子と表情から感じ取れる。

 同時に、いやな予感がした。


「なぁ、お前のとこにはめちゃくちゃな戦力が二人もいただろう。ちょっと、俺たちを助けちゃくれねーか。結構、本気でやばいんだよ」

「…まじかよ」


 予想って、当たってほしくない時にこそ当たるものなのか。

 くだらないことを考えている場合じゃないな。


 ただ、武器を互いに構えながら、助けを求められているこのカオスを、誰かにどうにかしてほしい。

 そう、切実に思った。


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