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Only Life of Arcadia  作者: kaisen
第1章 アルカディア
14/103

13.アリス

よろしくお願いします。

 あの初依頼を終えた翌日。

 俺たちはまた、OLAにログインして集まっていた。


「結局、あの人たちはそんなに悪い人じゃなかったわね」

「確かに。“アルカディアドラゴン”の親子を傷つけてたのは、ほとんど密輸組織の連中だったみたいだし…」

「とりあえず、俺が気になるのはお前にくっついてるそれだ」

「キュイ?」


 俺の頭の上には、白い子竜がちょこんと乗っかっていた。


 実はあの後、親の“アルカディアドラゴン”からいろいろな話を聞いた。


 まず、“アルカディアドラゴン”という竜種について。

 コータは最初から知っていたらしいが、彼らは竜種の中で最弱なだけであり、そうそう人には負けないらしい。ただ、竜種を簡単に倒せるプレイヤーも存在しているようで、キャップに接触していた男もそうだったらしい。

 さらに、彼女(竜種は基本的に雌雄同体らしいが、声色から女の人だと判断した)は、どういう経緯でキャップに首輪をはめられたのかを詳細に語ってくれた。


『彼は本当に何もしなかったですね。首輪をはめただけ。私にオーブの能力がはじかれるとわかってからは特に。ただ、私も完全に無効化できたわけではなく、命令を無視することができたくらいだったので、獣人たちにいいようにやられてしまったわけですが…。巣から私を探しに来たこの子が無事でよかったですよ』


 そうして子どもを愛でている彼女は、本当に生きているかのようで、AIだということを忘れかけた。

 そんな彼女は、こうも呟いた。


『オーブという力は驚くほど強力です。首輪の男は私との実力差がありすぎて本来の性能を使えずにいましたが、それでも私の力を封印するくらいは簡単にやってのけました。カゲツさんのオーブも、こうして一時的とは言え、死者蘇生を成し遂げてしまう。これは、私たちモンスターには考えられないことです。繁殖率は圧倒的にモンスターのほうが上ですし、純粋な戦闘になればほとんど実力通りの結果に落ち着きますが、やはり、オーブはこの世界の強さとは別格の存在であるようです』


 こうした話を重ねながら、大方、彼女のおかげで依頼の背景に何があったのかを聞くことができた。

 コータが大きな鎌を持つというプレイヤーの話を聞くたびに苦い顔をしていた以外は、特に目立ったことはなかった。

 けれど、最後に彼女は爆弾を放ってきたのだ。


「竜種の子どもを親の魂に預けられたとか、状況が特殊過ぎて誰にも説明できないじゃねえか」

「そうなんだよね。でも、ちゃんと預かってればまた助けてくれるって言うし、しょうがないよ」

「確かに、竜種の戦力はでかいわよね」

「そうはいっても目立つんだよな、そいつを連れて歩くと」


確かに周りのプレイヤーの視線がいつもよりも刺さる気がする。

だけど、こればかりはどうしようもない。


「もういいじゃん。開き直ってれば多分大丈夫!」

「お前なぁ…」

「そんなに心配なら、子竜を連れていてもおかしくない【職業】になればいいのよ。モンスターを連れていることが不自然じゃなくなるし、何よりも【職業】用の服装が貰えたりするから。カゲツが目立ってる最大の理由は、服装と子竜を連れていることのアンバランスさだと思うわ」


 言われてみればそうなのかもしれない。俺はまだ最初に買った初心者用の装備しかしていない。まあ、実際初心者だから良いかと思っていたのだけど。


「確かにそうだな。変に目立っている感はある」

「でしょう?やっぱ私の作った服を着るべきだと思う」

「ちょっと待って、あの服はちょっと厳しいし、なんなら、服装で目立ってるのは2人も同じじゃないか!」


 そう。

 ずっと思っていたが、2人の服装も大概目立つ。

 黒の軍服っぽい装備と、全身フリフリのゴスロリってどんなやつだよ!ってなってもおかしくない。


「それなのに、俺だけ言われるのは不公平だと思う!」

「いや、俺はこれが一番性能いいから」

「私もよ。それに、イベントで上位入賞経験してると何も言われないのよ?」


 なんて、なんて卑怯な…!

 真顔で言い返され、何も言えない俺にコータが言った。


「お前もイベント上位を目指せばいいじゃないか。俺たちに負けたままでいいのか?」


 こいつ…。

 楽しそうにニヤニヤしやがって。


「そうね、それがいいわよ。ほら、丁度次のイベントの場所と日程が公式からのメッセージで来てるわ」


 ユーカが、メッセージを俺に見せてきた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

〈次回イベントのお知らせ〉

 次回のイベントは、○月□日から、お菓子の都“タルトレット”で行われます!

 今回は、攻城戦イベント、大規模依頼イベントの二本立てです!

 さらに期間中、“タルトレット”では『スイートフェスティバル』というお祭りが開催されます!なんとこちらには、バーチャルアイドル『クーレ』ちゃんが参戦!

 彼女のLIVEなどのチケットは現在絶賛販売中です!詳しくはこちら。

 もちろん、その他『スイートフェスティバル』限定アイテムもご用意しております!

 こちらは…………

ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「へえ。お祭りみたいな感じで、イベントがあるんだね。結構面白そう」

「このゲームのイベントは大体こんな感じだ。イベント期間もそこそこ長いから、かなりの人数がイベント会場に集まる」

「今回はイベントを2つもやるから、いつもより人が多いかもしれないわね。それに、バーチャルアイドルも出るし…」

「クーレって人?」

「そうよ。私、闘技場イベントではクーレに負けたの。話したこともあるわ」


 なんか、色々面白そうだな。

 俺も行ってみようか。


「よし、じゃあ、俺はこれに行ってみることにする。上位が狙えるかはわからないけど、楽しそうだし」

「決まりね。大規模依頼イベントなんて久しぶりだから楽しみだわ」

「攻城戦イベントだと、この前の奴らもいるんだろうな、もう一回脅しとくか?」

「え、なになに。これって3人で行く流れなの?」


 俺の言葉に2人がキョトンとした顔をする。


「何を今更…」

「そうよ。リアルで友人なのに折角の機会で一緒にプレイしないなんて、あるわけないでしょう?」


 2人とも、なんて優しい…。

 VRMMOの醍醐味が味わえる!


「ありがとう!俺、まだ初心者だけど足を引っ張らないようにするね」

「そんな大げさなものじゃない。楽しくやればいい」

「そうよ、なんならチームでも結成しましょうか。無駄に重く考えないように」


 チーム…。

 このゲームで、依頼などを一緒に受けるフレンドの集まりだ。

 情報や物資の共有が楽になるらしい…。

 他のゲームでもそういうシステムはあったけど、実現できたのはこれが初めて。

 嬉しいなあ。始めた甲斐があったよ。


「チーム名はどうするの?」

「トレードマークになるものがいいんじゃない?」

「それなら、こいつか。この子竜は、なかなかお目にかかれない」

「キュイ?」


 コータが子竜の頭を撫でる。

 なんだかんだで、気に入ってるじゃん。

 可愛いからね、仕方ないよね。

 でもね、コータ。


「この子には、ちゃんと名前があるんだよ」


 竜には名付けの慣習はないらしいけど、俺はちゃんと親竜と相談して決めたんだよ。


「アリスって名前がね」

「なんでアリスなの?」

「“アルカディアドラゴン”からしたら、この子は不思議な運命に迷い込んだ存在だ、って親竜が言ってたから。だから、アリス。この子の可愛さも表現できてると思うし」


 すると、ユーカが楽しそうに言った。


「それなら、チーム名は『白うさぎ』がいいわ。アリスを導いてあげなきゃ」

「少し可愛すぎないか?」

「俺は、可愛いくらいがちょうどいいと思うけど…」

「2対1よ。諦めなさい。可愛いが似合わないのはあなただけなんだから」


 なんやかんやと言い合って、結局俺たちはチーム白うさぎとしてプレイしていくことになった。

 アリスが俺の頭の上でうたた寝を始める。


 この日は休日の昼下がりのような、のんびりとした空気を3人と1匹でたっぷりと味わった。





本話で、第1章終了となります。

第1章を全体的に加筆修正するので、明日は投稿致しません。

次回投稿は、明後日になります。


明後日からの第2章は本格的にゲームを攻略していく3人が見られるかと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

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