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Only Life of Arcadia  作者: kaisen
第4章 キョウゴク
102/103

101.sideA仲間のための試練 sideB追いつくための試練

ちょうど一か月ではないでしょうか。

お待たせいたしました。

よろしくお願いします。


 小鬼の群れは中級フィールドに出てくる雑魚モンスター程度の強さであった。


 上位層のプレイヤーと並ぶために鍛えた俺たちなら簡単に倒せるような相手だった。


 俺がハルバードを振るい、コータがサーベルを振るう。

 一つ振るえば数体がなぎ倒される。


 だが、順調に敵を倒しているのにも関わらず、数が減っている様子はない。


「くそ! 無限湧きか!?」

「困るな、全くあちらの支援に入れない」


 ボスの足元で戦闘をしているメンバーは無数の腕に対処するので精一杯といった様子で、ろくにダメージを与えられていないようだ。


「まずいな。今はまだ敵の様子もうかがわなければいけない序盤だから、ダメージが通ってなくても焦りはないけれど、ここから全力で削りに入るとき、このままだとちょっと厳しいな」

「こいつらそんなに強くないくせに、数が多すぎる」

「めんどくさいな、キャロンの制圧力で多少はポップスピードに勝っている気がするけど」


 開始直後の小鬼の群れに比べると、今の状態はとても処理がしやすいように思える。

 キャロンのブレスは一度放つだけで数十の小鬼を焼き尽くしているし、そもそも物理的に俺たちの安全地帯を確保してくれている。

 これで俺たちの戦いやすさは段違いになっている。


「私だけではあのボスにまで対処することはやはり難しいものがあります。なにか戦力を増強できるような策があればいいのですが」

「そうか、なら、コータのオーブで小鬼たちを操ってみるか?」

「確かにそれなら簡単に戦力は増強できるが、カゲツのオーブのための犠牲はそろったのか?」


 そう。確かに俺たちが雑魚を処理するのに時間を奪われていることは確かだが、俺のオーブの効果的な利用法として、雑魚モンスターの大量召喚がある。

 前回の海竜帝戦でも大いに役に立ったこの能力は、こういったボス戦の時には役立つものとしてチームの全員に認識されていた。

 俺自身もそれには共感していたから、この群れを相手取るのも全く気にならないのだが、今回は早めに討って出る必要があると考えた。


「このままやってもあっちが進まないんじゃ話にならない。軍勢の数は大体揃えられてきたし、コータと俺だけでここをおさえられるなら、イェルカさんがあっちに行ける。なら、ここでコータのオーブを使った方がいいだろ」

「わかった。僕もその案に乗ろう」

「了解だ」


 イェルカさんと俺がゴーサインを出した。

 コータは一度前線から下がり、オーブを発動する。


「“召喚型(サモン)”! 〈囁き拾い(ウィスパー)(オブ)大悪魔(ナイトメア)〉!」


 いつもの通り、黒炎からイケオジの悪魔が登場した。


「お呼びでしょうか」

「ああ、いつも通り、よろしく頼むよ」

「オプションは?」

「なしでいい」

「かしこまりました」


 イケオジの登場後、囁きを聞いた小鬼どもが錯乱したようにフィールドを暴れまわるようになる。

 この攻撃の効果はやはり、乱戦でこそ実感しやすい。


 効果範囲も広いため、かなり処理がしやすくなった。

 イェルカさんがタイミングを見て、ボスの方へ走る。


「今回の敵はあまり支配力の強い者ではないようですね」

「何の話だ?」

「いえ、私の攻撃がとてもうまく決まっているので」

「なるほど……で、それをわざわざ言うってことは何かあるんだよな?」

「大したことでは

ございません。ただ、こういう手合いは本体が強いことが多いなということを思い出したまでです」

「本体が強い、ね」


 コータはそういいながら、近くの小鬼を切り飛ばした。


「まあ、強くないと困るわけだ。俺たちのチームの主砲を成長させるための敵なわけだからな」


 そう言ったコータの視線の先には、多数の腕を相手に戦闘斧を振り回すユーカの姿があった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ほんっとに鬱陶しいわね!」


 私はさすがに攻撃が入らないことにいら立ってきていた。


 二十本もある腕というのは反則過ぎる。

 面倒なこと極まりない。

 こちらの攻撃はことごとく余っている手に防がれてしまう。

 逆に人数でも勝っているはずの私たちが攻撃をしのぐ側に回ってしまっているのがとても苦しい。


「どうにかして戦況を変えないと……」

「ユーカさん、私のくっしょん使って特攻してみますか?」

「結構リスクの高い提案ね」


 とはいえ、現状を打破するには何かしらのリスクを背負う必要があった。


「その案、実行するなら今かもしれないわね」


 スピニーさんの声が近くから聞こえた。

 唸る鬼の腕をいなしながら、彼女は私たちのそばに駆け寄ってくる。


「どうして今なんです? 確かにパターンは見えてきて、くっしょんがあるというなら試してみる価値はあると思いますけど」

「簡単よ、お兄ちゃん……イェルカがこちらに向かってきているから」


 そういって彼女が目線で指した方には、巨大な竜と紳士の悪魔が小鬼を屠る姿。

 そこから走ってこちらに向かってくるイェルカさんの姿があった。


「あっちもどうやら短期決戦を仕掛ける方に舵を切ったらしいわね」

「確かに、このままじゃどうにもならないのも事実ですね」

「ユーカさん! ここはバシッと、攻撃をぶち込んで、イェルカさんの分析にかけてみましょう!」

「そうするほかなさそうね。クーレ! 支援頼んだわ!」


 スピニーさんと入れ替わるように、私は前に躍り出た。

 戦闘斧を構えて、ねらいを定める。


「必要なのは、鬱陶しい腕を一本でも多く切り落とすこと」


 心に念じながら、私はオーブを発動した。


「〈女王の乱獅子(ストレングス)〉!!!」


 私がいるのは、ボスの右半身の足元。


 この二十本の腕はすべてが何かしらの武器を持っているけれど、なんとなくその特性が決まっていることはここまで戦ってきてつかんだ。


 左右どちらも、上部に行くほど最近接領域での攻撃が得意な武器を装備しているのだ。

 逆に言えば、下の方は中距離程度が最適なリーチの武器が装備されている。


 私たちは基本的に中距離の間合いから逃れられず、かといって近づくことも容易にできずに足踏みをしていた。

 だが、サポート特化のイェルカさんが来てくれるというなら、少しばかり賭けに出ても悪くはないだろう。


 中距離の間合いに入る。

 といってもボスにとっての中距離であるため、私にとってボスはまだ遠い。

 だが、ボスの攻撃は容赦なく繰り出される。


 右手の下から四番目。

 長槍の一撃が私の目の前に迫ってきた。


「こんな攻撃をバカ真面目に食らうわけにはいかないのよ!」


 繰り出された突きを横っ飛びすることで回避する。

 伸びきってがら空きになった腕に、最大出力にした戦闘斧の一撃を叩き込む。


 ダメージエフェクトが発生し、切りつけた腕が半ばまで切断できたのが見えた。

 しかし、このボスの腕は一本ではないのだ。


 後方から、他の腕の攻撃が迫ってくるのを感じた。

 ただ、そう簡単に離脱もできない。

 

「クーレ! お願い!」

「任せてください!」


 私の後ろに柔らかなものが現れた。

 きっとクーレのくっしょんである。


 こんな特攻をして身体が無事なのは彼女のオーブがあるからである。

 さっきまでも何度かこの攻撃を試みたけど、リスクが高くてカウンターにしか使ってなかったのよね。

損してたわ。


 クーレに作ってもらった隙を利用して、私は間合いから逃れる。


「さすが! あれは裂傷ダメージが継続的に入るパターンの傷の深さよ」

「そうですね。結構、頑張りましたから」

「お見事。この作戦を続ければ、体力ゲージの三割は簡単に減らせそうだね」


 いつの間にか来ていたイェルカさんにも合流し、今後の攻め方を考える。


「今はとりあえず、右と左に分かれてる状況かな」

「そうよ。左はボルトガ、シャウラ、タテハの三人で遠距離からダメージを稼いでるわ」

「そっちは安定しているけどダメージが少しずつしか入らない。こちらはダメージ量は多いもののそこまでアタックの回数が稼げないってところか……」

「長期戦になりそうだなと思っていたんですけど、コータとカゲツがオーブを使って戦闘しているということは短期決戦に持ち込むつもりなんですね?」

「そう。ちょっと雑魚が無限湧きだったから作戦変更ってとこだよ」

「なるほど」


 こうやって話し合っている間にもガンガン攻撃してくるボスの手数が鬱陶しすぎる。

 

 ふと、イェルカさんがポンと手を打った。


「わかった。ちょっと僕もオーブを使って試してみるよ」

「え、でも、イェルカさんのオーブって戦闘系じゃないですよね?」

「うん。だけど、手数は誰よりもあるからね」


 そういってイェルカさんがオーブを発動する。

 イェルカさんのオーブは大量の微細なムシを召喚して、それらと意識を共有したり、それらを媒介にして自分の意思を伝えたりできるというサポート特化の能力だったはずである。


「サポート能力をどうやって戦闘に……」

「ちょっと試したいことがあるんだ」


 イェルカさんはそういうと、ムシたちをボスの方へ一斉に突撃させた。

 それも、幾つかの塊になって、私たちの目にも知覚できるようになっている。


「あれはいったい……?」

「んー、撒き餌ってところかな」


 ムシたちはスーッとボスに近づき、何かをするかと思いきや、あっさりと腕を振るわれて消滅した。


「やっぱり戦闘能力はないんですね」

「うん。でも、これでもっと楽に進めることがわかったね」

「え?」

「なるほど! 囮!」

「そうか。お兄ちゃんのムシがボスに認知されるのであれば、ターゲットが分散してユーカちゃんが攻撃しやすくなる!」

「そういうこと」


 なるほど。

 確かにその通りだ。

 これで、クーレのサポートがあれば、今以上に体力を減らし続けることができる。


「さすがですね」

「いやあ、そんなことはないよ。大量召喚やかく乱はきっと、彼らの方が得意だ」


 そういって目で示された私の仲間たちは、小鬼の大群を前に未だ奮闘中だった。


 私も、頑張らなければ。

 これは私の試練なのだから。


「イェルカさん、ナビゲートお願いしていいですか?」

「もちろん」

「クーレはもう一回あれをよろしく」

「任せてください!」

「スピニーさん、私と一緒に攻めをお願いしていいですか?」

「うん。あんまり火力でないから許してね」

「ありがとうございます。では、もう一度……」


 そういって私は走りだした。

 先ほどよりも、心なしか体が軽い気がする。


 さっさとこいつを倒して、あの二人に並べるように。


 いつしか、私はそんなことを考えるようになっていた。


今後も不定期ではありますが、完結まで頑張るのでよろしくお願いします。

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