さあ、夢の続きを歩もう
ーーーーーなんて、絶望してる場合か?
散々泣いた。泣き喚いた。
でも、自分の意思で歩き出したんだろ?
立ち止まる事なく歩き続ける事。それをもう決めたんだ。悲劇のヒロイン気取ってる場合じゃねーだろ、私!!
作れない筈がない。だって、覚えてる。
知識が、レシピが、頭に
技術が、体に
道具は、手元に
何より、作りたいという想いが、私の心に!!
「ヴァニラ、泣いてばかりでごめん。」
崩れ落ちた足元に力を入れる。震える足に、震える声。大きく深呼吸をした。
大丈夫。まだ諦めるな。
「証明するわ、私が私である為にも。お菓子を作れる事を。」
「ハッシー……、でもよ……。」
「ヴァニラ、信じてなくたっていいの。不審者の戯言だと思ってくれても構わない。頭のおかしな奴だと思われても仕方がない。でも、チャンスをちょうだい。」
顔を上げる。
心配そうな表情のヴァニラ。その瞳にうつるひどい顔の私。
笑え、声をはれ、それだけで世界は私の味方だ。
「一度だけでいい。私にお菓子を作る場を提供して欲しいの。お父さんは食堂屋さんなんでしょう?調理場を少しの時間、貸して欲しいの。」
「それぐらいなら、頼み込めば貸してくれると思うけどよ……。」
「ありがとう!! 」
思わず抱きついた。
尻餅つくかと思われたヴァニラは意外と力があるのか、私を受け止め、抱きしめた。
「ヴァニラ??」
「ハッシーが嘘言ってるとは思ってねーよ。でも、信じられないんだ。……だから、証明してくれ。俺もハッシーを信じたい。」
ああ、何を絶望していたんだ。
ここに一人だけだけど味方がいる。
信じたいと言ってくれる人がいる。
私は大丈夫だ。
さあ、夢への第一歩、踏み出したなら立ち止まるな。