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早璃

 今話で『モーソー転移Ⅰ』は終了。次からは『モーソー転移Ⅱ』になります。

 小学生の頃は、地域のミニバスサークルに所属をしていた。身長には恵まれてなかったけど小回りが利いたので、ポイントガードとしてそれなりに活躍できた。


 バスケが大好きだったので、中学校に入学して迷わずにバスケ部を選んだ。先輩達が引退をした中2の夏、私はスタメンに選ばれる。チームメイトとの身長差は徐々に開いたけど、身軽さとフットワークを活かして、中3になって引退をするまでポイントガードの座は守りきれると思っていた。

 だけど、中3に成る前に状況が変わる。あたしよりボール廻しが上手くてシュート力もある後輩がスタメンに割り込んできた。ディフェンス力に欠けるあたしか、シュート力が不安定なシューティングガード(同期生)、状況次第でどちらかがスタメンから外される。

 中3の夏、あたしはベンチ要員で最後の試合を迎えた。もうバスケを続ける気は無かった。背が低くて華奢でフィジカルで劣るあたしは、バスケを続けることに限界を感じていた。


 千幸(せんこう)高校に入学後、友達から陸上競技部に誘われた。体力と身軽さには自信があったので、長距離走を選択する。

 小学生時代から続けたバスケを選ばなかったことは「バスケから逃げたのではなく陸上競技に興味があった」と自分に言い聞かせた。


「うわっ・・・あの人?」


 たまたま、男子バスケ部のトレーニングを見た時、周りと比べて運動神経とフィジカルの両方で、あきらかに劣っている人がいた。バスケに見切りを付けたあたしには解る。あの人ではスタメンは取れない。

 だけど、活き活きとした表情で、汗だくになって懸命に練習をしている。特にイケメンではないんだけど輝いて見えた。


「へぇ・・・根性はあるみたい」


 男子バスケ部の練習に遭遇すると、彼を無意識に目で追うようになっていた。「好き」とか、そう言う感情は無かったけど、明らかに周りと比べて劣る彼がやり通せるのか、興味はあった。


「・・・あたしはバスケから逃げたんじゃない」


 彼を見ていると、あたしは負けているような気がした。だから「陸上競技に興味があった」が「嘘じゃない」と証明する為に結果を出せるように練習を頑張った。


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 源尊人。それが、バスケが下手な男子バスケ部員の名前。

 2年生になったら、彼が同じクラスになった。悪く言えば陰キャ。良く言えば控え目で温和しい。第一印象通りの男子。

 クラス内で発言力がある男子の意見に従うだけ。でも、渋々従っているんじゃなくて、いつも一生懸命にやっている。イキってるだけのカラッポ系の連中には小バカにされているけど、中身が整ったクラスメイトは彼の悪口を言わず、キチンと受け入れている。それが彼の人間性ってのは解った。

 人付き合いが良すぎるのか、お人好しなのか、気が弱すぎるのか、いつも、目で追っていた。「どんな性格か?」と興味はあったけど、喋る機会は全く無い。



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 高2の冬、修学旅行の夜に隣のクラスの綿本綿穂が、柴田俊一くんの部屋に遊びに行った。まぁ、修学旅行の前に、あたしが綿本(わた)を煽ったんだけどね。


「綿本(わた)が俊一くん(柴田)の部屋に行ったみたい!

 綿本(わた)の応援しなきゃ!あたし達も行こうよっ!」


 1人で行動をする度胸は無いので、仲の良い縫愛を誘う。 


「えっ!男子の部屋に行くのはマズいでしょ」


 拒否ってる縫愛の腕を引っ張る。


「ちょっと顔を出すだけだから大丈夫だよ!行こうっ!」

「なら代わりに、教えてよっ!」

「なにを?」

「綿穂ちゃんの応援が目的じゃないよね?

 早璃ちゃん、最近、気になる男子いるでしょ?」

「え゛っ!」

「柴田君の部屋に誰がいるから遊びに行きたいの?」

「気になる男子なんて・・・いないよ」

「吉見君?」

「・・・違う」

「吉見君じゃないけど、『いる』のは間違いなさそうだね」


 げっ!何でバレた?今、あたし、ヒントになるようなこと何にも言ってないよね?


「モロに顔に出てるよ!」

「・・・・・・・・・・」


 好きな男子はいないけど、気になる男子はいます。気になる男子=好きな男子なのか、自分でもよく解らない。

 小学校の時はクラス内のリーダー格で足の早い男子が好きだった。中2くらいまではイケメンな部活のエースが好きだった。どっちも“あたしだけ”が好意を持ってたんじゃなくて、周りの皆が好きだった男子。当時がミーハーだったって自覚はある。でも、中2の冬、大好きだったバスケに対して限界を感じるようになって、現実が見えてきた頃から、人を見る目も堅実になった。


「もうっ!しょうがないなぁ~!

 一緒に行ってあげるから、ちゃんとお話しするんだよ!」

「・・・うん」


 勇気を出して男子の部屋に行ったけど、綿本(わた)と俊一くんはいなかった。2人でどこかにバックレちゃったかな?縫愛が背中を押してくれて部屋には入ったけど、気になる男子は迷惑そうにしていて全然話せなかった。縫愛に「ちゃんとお話ししろ」と言われて、逆に意識しすぎちゃった。しかも、力石先生に見付かって、頭にげんこつされて、しばらく正座させられちゃった。


「早璃ちゃん、隠れる時に取った布団、源君のだよね?」

「うん、多分」

「布団取られてなかったら、源君、寝たふりできたんじゃない?」

「・・・かもしんない」


 興味を優先させて縫愛と男子を巻き込んだこと、源の布団を取っちゃったこと、反省しています。でも、多分だけど、源だったら、上手く寝たふりをできたとしても、そのまま罰から逃げたりしないで、みんなと一緒に正座したんじゃないかな?・・・あんまり話していないから、よく解らないけどさ。


・

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 3学期の席替えで、隣の席が源になった。「これも縁」ってことで時々話しかけるんだけど、彼は女子と話すのが苦手っぽくて、全然会話のキャッチボールができない。そこであたしは一計を案じた。

 予習や宿題で解らないところがあっても、授業をちゃんと受ければ解るようになる。それでも解らなければ、先生に質問をすれば良い。でも、彼との接点を作る為に、彼が得意な数学について、彼に質問をする。

 最初の頃は質問をされて驚いていたけど、とても解りやすく教えてくれる。彼がお人好しってゆーのが解った。


 頻繁に話すようになったら、何故か徳川が「尊人(ミコ)は織田に一途だよ」と言ってきた。織田(おうかっち)、超可愛いもんね。なんとなく、納得できちゃう。でもさ、なんで徳川は、そんな余計なこと言うのかな?


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 春休みの補習日、教室に隕石が突っ込んできて・・・気が付いたら、あたしは真っ暗な空間に浮かんでいた。

 背後から光に照らされて声が聞こえる。


〈今のキミは仮死状態になっている。

 今からキミはモーソーワールドに転移をする〉

「はぁ?」

「合流したい者がいるならば、その者を念じたまえ。

 そうすれば、その思いが転移場所に反映される」

「・・・会いたい人?」


 隕石が教室に突っ込んできて私は弾き飛ばされた。すぐ隣にいた源が受け止めてくれたけど、衝撃が強すぎて一緒に弾き飛ばされた。

 だから・・・かな?この時のあたしは、源のことを考えていた。


〈一通りの説明は終わった。さぁ、行きたまえ。

 キミが降り立つのは、北東の村・ペイイスの南にある森だ。


 背後に光が注してきた。振り返ると、真っ暗な空間に穴が空いて、その先には広い森が見える。


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 この2日後、あたしは源&俊一くんと合流する。知ってる人と会えて、その人が誠実を絵に描いたような人だったので安心をした。

 この時にやっと、光が言った「合流したい者を念じれば、転移場所に反映される」の意味を理解できた。

 小学生や中学生の時は男女ともに身近なアイドルに好意を持つんだろうけど、高校生くらいになると堅実に成る子がいる(早いと中学生くらいから堅実路線もいる)。早璃はその過渡期。自分が早い段階で挫折をしたので、視野は現実的。

 どの世界でも突出する天才タイプがいてトップを張る。これが現実。だけど天才タイプを除いた場合、案外強いというかキチンとした伸び代を持っているのが、手を抜かず、負けを怖がらずに、失敗を糧にするタイプ。陰キャより陽キャの方がアピール力に優れるが、陰キャが実力で劣るわけではない。努力を「当たり前のこと」にしているタイプと、たいして頑張っていないのに「努力してますよ」アピールをして「頑張ってる感」を出しているだけのタイプの差は、見抜かれている。

 他人の足を引っ張って格上を演出するタイプ、所有物の性能を自分の力と錯覚するタイプ、皆と同じ土俵で戦うことから逃げるタイプ、これらは堅実タイプ&人を見る目があるタイプからは徐々に相手にされなくなる・・・と思う。

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