6-3・目黒くん
朝になったら、頭が痛いのは直っていたけど、まだちょっとダルい。ゲームなら一泊するとHPとMPが全回復するけど、実際は現実世界での回復量と変わらないらしい。そもそも、HP1で血まみれで“しっぺ ”一発で死ぬくらい瀕死なのに、一泊したら完治しているって、どんな状況なんだろう?
「まぁ・・・この世界自体が普通じゃないんだから、
僕の常識で当てはめても答えなんて出るわけがないか」
その日も、いつも通りの依頼をクリアして、冒険者ギルドに戻って報酬をもらう。
「オーガとトロールはまだちょっと怖いけど、
ホブゴブリンやリザードマンなら、そろそろ戦えそうだな」
柴田くんはモンスターとの戦闘に自信を付けてきた。僕1人だったら、オークくらいならともかく、ゴブリンやコボルトとも、まだ会いたくない。
「凄いね、柴田くん」
冒険者ギルドで報酬をもらったあと、モンスターから強奪した所持品を買い取ってもらう為に、真田さんがバイトする道具屋に行く。
「いらっしゃいませ~!・・・・・げっ!尊人くんっ!」
真田さん、道具屋のオーナーの趣味で、(女の子なのに)女装させられて、普段とは違って満面の笑顔で接客してた。美少女ってのは知ってるけど、なんかメッチャ可愛く感じられる。
「や・・・やぁ・・・お仕事頑張ってるね」
僕は小学校時代から櫻花ちゃんオンリーなんだけど、真田さんの笑顔にチョッピリ見入ってしまった。
でも、問題はそこではない。
「真田、その格好はなんだ?」
なんか、平均的な17歳女子と比較して若干幼児体型な真田さんの胸が、大きくなっている。
「安藤の趣味。『パット入れろ』って言われちゃった。
綿本も同意しやがった。
この格好で接客すると、お客さんがケチらずに買ってくれるって・・・
なんかムカ付くよね~~~」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・で、どうなんだ真田?効果はあったのか?」
「男のお客さん、値引き交渉とか全然しないし、
あたしは他の商品を勧めると一緒に買ってくれるから、売り上げは上がってる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「効果あるんだな?」
「お客さん、単純バカすぎっ!」
現実世界、異世界、どちらの男性も「こ~ゆ~のに弱い」ってのは共通らしい。
「尊人くんはどう思うの?やっぱ、胸大きい方が特なのかな?
そんなことないよね?」
「ぼ、僕に聞かれても・・・よく解んない」
言うまでもなく、ニセモノなので魅せる谷間は作れず、真田さんは襟の閉じたドレスを着ている。僕はその膨らみがニセモノと知っている。でも、真田さんが動く度に、ちょっと遅れて付いて来たり軽く揺れたりする膨らみに、目を奪われてしまう。腰は自前なので細い。結果「全部引き締まっている」ではなく、「出るところは出て、引き締まるところは引き締まっている」になっている。
質問されて誤魔化したけど、僕の答えは「うん」です。美少女で胸が大きいなんて反則だよ。
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夜の定期集合の時間、僕と柴田くんと真田さんと安藤さんがベッドに座って待っていたら、綿本さんが少し遅れて珍客を連れてきた。
「お店にご飯食べに来てたから連れてきたよ」
「おおっ!目黒かっ!」
「柴田~!あのあと、どうなったか、心配してたんだぞ」
目黒くんだ。柴田くんと肩を叩き合って再会を喜ぶ。
目黒くんは、柴田くんや綿本さんと一緒に力石先生に保護されていた6人の1人。集まって隠れていたところをモンスターに襲撃されて、散り散りに逃げたんだけど、こうして再合流できた。
僕はベッドの端にずれて空きスペースを作り、柴田くんと目黒くんが並んで座る。
「綿本さんから聞いたよ。
力石(先生)と今川と毛馬内と鰐淵はダメだったんだってな」
「ああ・・・俺も、源から聞いただけで、直接は確かめてないんだけどな。
あのあと、目黒はどうしていたんだ?」
「俺はアーズマの町に逃げてた」
東の都市・アーズマは、例の森からは、僕達の滞在するペイイスの村と真反対にある。柴田くん達6人と力石先生は、元々はアーズマの町にいて、秘境者狩りから逃れる為に、例の森に隠れたらしい。
「よく、狩られずに済んだな?」
「ああ・・・秘境者ってのがバレたのは、今川と鰐淵だからな。
俺はノーマークだったってことだ」
目黒明介。出席番号34番。帰宅部。柴田くんや藤原グループみたく目立つタイプではないけど、ちょっと軽口のところがあって、クラス内での発言力は僕よりはある。一時期は智人と仲良くしてたけど(僕とトモが仲良くなる前)、ゲームのことで喧嘩してから疎遠になったらしい。
「しばらくは町で息を潜めていたんだけどさ、
この村に来て、ダメ元で富醒を発動したら、反応が5個もあったから驚いたよ」
以前、力石先生が「合流した中に転移者の位置を把握できる人がいる」と、柴田くんが「目黒は一定範囲の転移者を感知できる」と言っていた。目黒くんは、その特殊能力で僕達に合流してきたんだ。
力石先生は「感知範囲は半径10㎞くらい」と言っていた。目黒くんがいてくれれば、クラスメイト集めが急激に楽になりそうだ。
「この世界を廻って仲間を集めないか?」
柴田くんが声を上げる。僕も同じことを考えていたので、頷いて賛成をする。




