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5-2・部屋割り交換は反対

 比較的スムーズに薬草集めが終わったので、夕方になる前に村に帰る。夜までにはまだ時間が有るけど、もう一つ依頼をクリアするほどの時間は無い。

 僕は、昨日怒られたお詫びを兼ねて、安藤さんの手伝いをすることにした。


「はぁ?クビにしたのに手伝うのか?」

「だって、お店のオーナーに無理言って働かせてもらえることになったのに、

 たった1日だけなんて申し訳ないからね」

「クソ真面目というか・・・バカというか・・・バカというか・・・」

「2回言わなくても良いじゃん」

「しかたねーな。手伝わせてやるよ」

「ありがと」


 なんで僕がお礼を言ってるんだろ?


「じゃあ、クソらしく馬糞掃除をしてくれ」

「・・・また?まだやってなかったの?」

「文句あんのか?手伝うって言ったのはオマエだぞ」

「まぁ・・・そうだけど・・・」


 一番嫌な仕事を押し付けられちゃった。御機嫌取りは難しいなあ。

 でも、少し機嫌が直ったらしく、夜になって招集がかかった。綿本さん、いつものニコニコ顔をしてるけど、なんか目が怖い。


「へぇ~・・・源でも役に立つことがあるんだ?

 本を読みながら草を探すなんて、根暗にピッタリの仕事だな」

「薬草を探す人が、みんな根暗なわけじゃないよ」

「俺達だけで、2組もモンスターを倒したんだぜ。なぁ、源」

「うん・・・まぁ・・・」


 ゴブリンのあと、犬人間3人組に遭遇してやっつけた。・・・とはいっても、僕は囮役&牽制役で、1人も倒してないけど。


「・・・・・で、どうする?」

「うん」

「え~~と・・・」

「・・・・・・・・・・」

「もうしばらく今の生活を続けんのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×4


 柴田くんの武勇伝を説明する為に、僕達の部屋に集まったわけではない。今後の方針を決める為に集まったんだ・・・けど、上手く会話が繋がらない。

 安藤さんは、僕と柴田くんに話を振る。柴田くんは、僕と綿本さんに話を振る。僕は基本的に会話のイニシアチブを取るのは苦手。綿本さんは柴田くんとしか話さない。・・・というか、安藤さんと綿本さんが一言も直接会話をしないし、目も合わせない。


(うわぁ~~・・・仲直りしてないんだ?)


 僕と柴田くんが気を遣うんだけど、安藤さんと綿本さんに歩み寄る姿勢が無いので、悪い空気は全く解消されない。

 全然話が進展しないので、柴田くんが「有益な情報を得られるまでは、もうしばらく今のままを維持しよう」と提案して、皆が「それで良い」と納得をする。


 安藤さんのお給料は僕達が宿でお世話になってる費用と相殺する。僕と柴田くんが得る報酬と、綿本さんのお給料は、今後の皆の共通の支度金として蓄える。宿の費用が安藤さんのお給金だけで相殺できない時は、支度金から出す。そう決まった。

 皆が「ワガママを言ってチームから弾かれるのはマズい」と思っているので、「自分だけが○○欲しい」と勝手なことを言う人はいない。


 相変わらず、安藤さんと綿本さんは、直接会話をしない。他に決めることも無くて、雑談をする雰囲気でも無いので解散になった。


「なぁ、源?」


 安藤さんと綿本さんが退室して直ぐに、柴田くんが話しかけてきた。


「・・・ん?」

「あの2人(安藤&綿本)、たぶん、部屋に戻ってもあのまんまだよな?」

「うん、そう思う」

「マズいよな」

「うん、ヤバいよね」

「解消する為に部屋割りを替えないか?」

「・・・ん?」

「俺が、綿穂(綿本)と同室になって機嫌を取るからさ・・・」

「えっ?僕は?3人で一緒の部屋?」


 女の子と一緒の部屋になるのは恥ずかしい。


「いや、そうじゃなくて、源は安藤と一緒の部屋」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」

「ダメかな?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 柴田くんは、僕に「死ね」と言ってる?安藤さんと同じ部屋で2人きりで寝た場合、僕は明日の朝まで生きているのだろうか?


「ゴメン・・・それはちょっとイヤ」

「・・・だよな」

「そーなった場合、僕は一般の客室で寝るか、野宿するよ」

「スマン、今のは忘れてくれ」


 柴田くんと綿本さんにはチョット申し訳ないけど、僕は安心をする。



 朝は安藤さんが忙しいから、僕と柴田くんと綿本さんの3人で食べる(だから昨日の朝は安藤さんと綿本さんが険悪のままって気付かなかった)。食べている僕の後を、お客さんの飲み物を運ぶ安藤さんが通過した。


「源、オマエの得意な馬糞掃除を残しといてやるから、早く帰ってこいよな」

「・・・ぶっ!」


 飲んでいたミルクを吹き出してしまう。


「オマエ、馬糞担当なのか?」


 柴田くんが不思議そうな表情をして質問する。もちろん、得意でも担当でもない。

 もしかしたら、安藤さんなりの「死なずに帰ってこい」ってエールなんだろうか?


「そんなわけないか。」


 朝食を済ませたあと、出勤までもう少し時間が有る綿本さんは自室へ。僕と柴田くんは身支度をして、冒険者ギルドに仕事をもらいに行く。


  ・○○伯爵の護衛(内地)

  ・ドラゴンの牙を持ち帰る(外地)

  ・サラマンダーの皮を持ち帰る(外地)

  ・洞窟に行って鉱石を持ち帰る(外地)

  ・○○山に行って鉱石を持ち帰る(外地)  

  ・ユニコーンの角を持ち帰る(外地)

  ・ドラゴンパピーを捕獲する(外地)

  ・エルフの少女を捕獲する(外地)

  ・薬草集め(内地)


 他にも様々な依頼がある。依頼が寄せられると、冒険者ギルドの人が難易度に応じた数値を付ける。もちろん、難易度が高い仕事ほど報酬が良い。時々、難易度は高いけど報酬が安い仕事もあって、そーゆーのは見向きもされない。


「ドラゴンパピーってなんだろう?」

「ドラゴンのパピーだろ」

「パピーってなに?子犬のこと?ドラゴン子犬??」

「解らん。俺に聞くな」

「難易度は高いね」

「そもそも、難易度の高い仕事は、俺等には関係無い」

「エルフって耳の長い人だっけ?」

「解らん。俺に聞くな」

「捕獲って書いてあるけど拉致なんじゃない?」

「オマエ、そんな仕事がしたいのか?」

「・・・したくない。やっぱ、薬草集めかな?」

「俺等ができそうなのは、それくらいだよな。」


 身の丈に合った「薬草集め」の詳細を確認。今日は一件しかない。依頼主が要求する薬草の種類を、本で確認する。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 草の生育地は村の南東にある森。

 昨日は、幾つか有った「薬草集め」の依頼の中から、意図的に排除していた地域。僕や柴田くんが逃げてきた森。つまり、力石先生や今川くん達が亡くなった森だ。



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