2-2・力石先生
いつものスーツ姿とは違って、変な民族衣装みたいなのを着ている。だけど、強面の顔とオールバックの髪型は、間違いなく力石先生だ。
5人いる小っちゃいオッサンのうちの2人が飛び掛かってきた!力石先生が剣を大きく薙いでオッサン達を弾き飛ばず!
「力石先生っ!」
「怪我は無いか、源っ!」
「は、はい!大丈夫ですっ!」
後衛の小っちゃいオッサン3人が構え、弾き飛ばされた前衛2人が立ち上がる。力石先生は油断無く構えながら、僕をチラ見した。
「剣を取れ!」
「・・・剣?」
「ゴブリンは決して強いモンスターではない!一匹くらいなら倒せるはずだ!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「どうした?自分の身くらいは守れと言っているんだ!」
「あの・・・剣、ありません!」
剣、さっきまでは有ったけど、どこかに捨てちゃった。
「なにぃ!?
そ、そうか・・・なら下がっていろ」
力石先生は、やや呆れた感じの表情をしたあと、小っちゃいオッサン達に飛び掛かっていく。
「す、すいません」
特に悪いことをしたつもりはないんだけど、僕は、つい謝ってしまう。
先生は先頭の小っちゃいオッサンを叩き切り、2人目に飛び掛かる!その間に別の小っちゃいが先生の横の横に廻り込んで襲いかかった!
「先生っ!危ないっ!!」
オッサンが小っちゃい所為で、樹木に隠れて先生からは死角になってしまう!
「ぐうぅっっ!」
先生は2人目のオッサンを倒しつつ、横移動で回避!だけど、避けるのが遅くて、3人目のオッサンが振った斧が先生の腕を掠めた!
先生が剣を振るってオッサンが持っていた斧を弾き飛ばし、返す刀で切り捨てた!
「先生・・・すごい」
5人いた小っちゃいオッサンのうちの3人を倒した。残った2人のオッサンは、「ヤベー」みたいな表情になって逃げていく。
剣を鞘に収めて一息付いた先生が、僕に寄って来た。
力石倫太郎先生。僕達のクラスの担任で英語の教師。基本的に顰め面で、髪型はいつもオールバック。暴力は振るわないけど、今の時代にはそぐわない高圧的で強権を発動させるタイプの先生。クラスメイトに問題児の藤原くんがいるから、怖い力石先生が担任に当てられた・・・と、皆が噂している。
「無事で良かった」
「隕石にぶつかってワケの解らないところに飛ばされちゃって・・・
どうしようかと思っていました」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
先生は呆れ顔をしたあと、腰に下げていた袋から葉っぱと布を引っ張り出して僕に渡す。
「何も説明を受けていないのか?
まぁいい、俺が解る範囲で説明しよう。
だがその前に・・・腕の止血を手伝ってもらえないか?」
いっぱいではないんだけど、先生の腕から血が流れている。さっきの戦いで小っちゃいオッサンにやられた傷だ。
「ああ・・・はい」
先生が腕の傷に葉っぱを充てたので、布を受け取って葉っぱごと巻いて縛る。
「なんの葉っぱですか?」
「傷の治癒をする薬草だ。植物の名称はわからん」
「へぇ・・・薬草ですか。なんかゲームみたいですね」
なんて名前の葉っぱだろう?生物の授業は苦手ではないけど得意でもない。「雑草という草はない」と言った過去の偉人がいるけど、その人だったら「薬草という草はない」と言っちゃうのかな?その人が見れば、この葉っぱの生態とか、どこに生えてるとか、ちゃんと解るんだろうか?
止血をした布に血が滲んでいる。ゲームだと「使う→HPが○○回復」と即効性が有るけど、現実世界はそんなに甘くない。そもそも論として、敵の剣で切られて瀕死になった人が、アイテムや魔法で即座に元気になるのってどういう現象なんだろうか?致命傷の切り傷がみるみる塞がったり、骨折が無かったことになる?
前に智人に質問したら、「それを考えちゃいけない」と言われたっけな。
「・・・で、ここはどこで、学校はどっちなんですか?
みんなは無事なんですか?
あの隕石はなんだったんですか?
さっきの小っちゃいオッサンは誰なんですか?
3人殺したみたいですけど大丈夫なんですかね?」
「ややこしいことを一度に質問するな」
先生は、小っちゃいオッサンが持っていた小さい斧と大きいナイフと丸い革製の盾を拾って、僕に渡す。
「護身用だ。丸腰よりはマシだろう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そのあと、小っちゃいオッサンの所持品を物色して、汚らしい物以外を剥ぎ取って自分の腰袋に詰め込んだ。
「あ・・・あの・・・強盗・・・ですか?」
「町で売るんだ。あまり気分は良くないがな」
「・・・な、なんか、荒廃した世界が舞台のアニメに登場する小悪党みたい」
「そう言うな。生きる為には割り切るしか無い。
今の俺達では、こうでもしなければ、満足に食いつなぐこともできないからな。
そもそも、俺が倒したコイツ等は、人間ではなくモンスター・ゴブリンだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・ゴブリン・・・ですか?」
なるほど確かに、 “ゲームに登場するゴブリン”に似たオッサンだと思った。空想上の生き物だと思ってたけど実在したんだ?全然知らなかった。
「皆が無事かどうかは、まだ解らん。
とりあえず、他のクラスの生徒を含めて6人とは合流済み。源で7人目だ。
皆、近くの小屋で休んでいるから、今から合流する」
6人の中に、智人や櫻花ちゃんはいるのかな?他の人が「安否不明で良い」ってわけじゃないけど、気になってしまう。
「隕石については俺にも解らん。
現時点では、不運な事故に巻き込まれた・・・としか言いようが無い」
そりゃそうだ。先生だって万能ではない。何でもかんでも即座に理解するなんて不可能だろう。
「それからな・・・『ここはどこで、学校はどっちなんですか?』、
これが最もややこしい質問なのだが・・・・」
「・・・ややこしい?」
先生は僕の眼を見て一呼吸して、「驚くなよ」と前フリをしてから説明をする。
「この世界にオマエ達の通う千幸高校は存在しない。
ここは俺達が住んでいた世界ではない。
ここは、モーソーワールドという異世界だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」
先生が何を言ってるのか理解できない。




