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1-5・転移~意味が解らない






「・・・あれ?」


 僕は真っ暗な空間に浮かんでいた。


「ここ・・・どこ?智人トモは?櫻花おーちゃんは?真田さんは?

 みんな無事なの?」


 背後から光に照らされたので振り返る。


〈今のキミは仮死状態になっている〉


 声は光から発せられていた。


「・・・カシ?なにそれ?」


 僕が置かれている状況、喋る光、どちらも理解不能。


〈キミは対象ではないが、誤差として扱う〉

「・・・誤差?なんの?」

〈今から君は現代とは違う世界=モーソーワールドに転移をする〉

「・・・はぁ?」


 モーソーワールドは、中世ヨーロッパに似ている。

 モーソーワールドは、モンスターが存在する剣と魔法の世界。

 学べば剣や魔法を使えるようになるが、転移をした時点では熟練度はゼロ。幼少時から剣や魔法が身近にあったモーソーワールドの住人には適わないので、代わりに特殊能力=富醒フセイを与えられる。


「・・・あの?」

〈仮死状態なので、望めば現実世界リアルワールドに戻ることは可能だ〉


 リアルワールドに戻る場合は、同時に転移をした者のうち、生き残っている全員の多数決により「帰りたい」が多数派になる必要がある。モーソーワールドで死んだ者は、多数決を棄権した扱いになる。

 多数決の状況は「オープン」と叫べば把握できる。ただし、転移者全員ではなく、転移者のうちモーソーワールドで出会えた数値のみ。


〈モーソーワールドで死亡した場合、リアルワールドでは瀕死の仮死状態になる〉


 転移者全員が3日分の生命力をBETする。モーソーワールドで200日が経過した時点で、リアルワールドで停止をしていた時間が動き出す。その時点で、モーソーワールドで脱落した者は、帰還する権利を失う(瀕死者の死が決定する)。


「だれが?」


 転移の時間と場所には誤差がある。つまり、全員が同じ場所からスタートするわけではない。

 誤差として転移に巻き込まれた者達は、一定の優遇措置として、「○○に会いたい」という思いが転移場所に反映される。


〈リスクに巻き込む代わりに、相応の報酬は用意する〉

「なんのリスク?なんの報酬?」


 多数決によるリアルワールドへの帰還を果たした場合、多数派の意見を纏めた代表者は、1つ願いを叶えられる。知能、運動神経、金、容姿、権力、どんな願いでも可能。ただし、リアルワールドの常識の範囲内。つまり、「大統領になりたい」という願いは叶えられるが、「世界を征服する」という世界常識を覆す願いは叶えられない。


〈転移者それぞれ、その性格や才能に適合した富醒フセイを持つ。

 キミの富醒フセイは、条件付きで他者の富醒を借りる【レンタル】。

 汎用性は非常に高い富醒フセイだ。

 ただし、効果は正規使用者の1/3に制限されるから、使い処は考えたまえ〉

「ふせい?不正?すきる?3分の1?なんかレンタルすんの?いくらかかるの?」


 富醒は熟練度が上げるほど高い効果を発揮できるようになる。


〈一通りの説明は終わった。さぁ、行きたまえ〉

「どこに?」

〈何処に行くかはキミの自由。

 降り立つのは、東の都市・アーズマの北の平原だ〉

「い、意味が解りません。これは夢?」

〈理解力の乏しい少年だ。これは直ぐに脱落しそうだな〉

「脱落?どこから?・・・落第のこと?」


 背後に光が注してきた。振り返ると、真っ暗な空間に穴が空いて、その先には広い平原が見える。


「どこ?学校じゃないよね?近所にあんな野原あったっけ?」


 状況は一切把握できないまま、気が付いたら、だだっ広い草原に立っていた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 周囲を見廻す。200mくらい向こうに林が見える以外は何も無い。


「え~~~~~と・・・隕石にぶつかって野原まで吹っ飛ばされた?」


 普通なら死ぬと思うけど、運が良かったのかな?奇跡的に助かったみたい。


「学校はどっち?どっちに歩けば家に帰れるの?」


 ヤバい、迷子になってる。僕、泣きそうだ。

 なんか良く解らないけど、足元に鞘に収められた剣と袋が置いてある。言うまでも無く僕の物ではない。


「剣?忘れもの?学校にあったのかな?こんな物騒なの、誰が持っていたんだ?

 待ってれば誰かが取りに来るかな?」


 日本で剣なんて持って歩いていたら違反になるはず。こんな物を学校に持ってくるのは、遠藤くんか加藤くん?藤原くん?近藤くんは剣道部だから、持ち込むとしても日本刀だろうな。持ち主と会いたくないけど、状況が一個も解らないので、とりあえず誰かに会いたい。取りに来た人に聞けば、ここが僕の住む玄滋津げんじつ市のどの辺で、どっちに行けば帰れるかくらいは解るだろうか?


「みんな、どうしただろう?

 補習は中止かな?それとも、僕以外は補習受けてる?」


 隕石と激突してどこかの野原まで吹っ飛ばされたから補習を受けられなかった・・・と言えば、両親や先生は納得してくれるだろうか?それなりに真面目に授業に参加して、テストでは赤点が無いんだから、留年になるのは困る。


 0-1と対比してあります。ルールを解っていない主人公・源尊人の視点でスタートさせると世界観が説明できない為、第0話として徳川智人視点でのストーリーを入れました。

 普通に考えて、突然「あなたは死にました」「特殊スキルをあげるので異世界で頑張ってください」と言われて、何割の人が対応できるのだろうか?

 徳川智人は即座に対応しましたが、源尊人は1つも対応できず、夢を見ていると思って、光のガイドの説明は殆ど聞き逃しています。

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