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もっともfamousで最悪最弱、と人類史に記されたモンスター


色彩を失った街路樹に人は寄り付かない。

クリスマスの時はあんなにチヤホヤされていたのを知ってる身としては可哀想に思うが、世の中そういうものだ。一生一緒に居てくれる人なんてそうそういない。

かくゆう俺も幼なじみと疎遠になっている。同じ学校なのに見向きもされんのだ。あれ、もしやこの関係は俺の妄想なのか? だとしたら、親友のこと笑えねぇ。


「はぁ虚し」


半日授業も終わり、待ちに待った放課後。

撮り溜めたアニメを消化するべく帰路に着いた俺を引き止めるように、内ポケットでスマホが震え出した。

一ノ瀬か。

そういえば、あれから五日経つ。その間、なんの音沙汰もなかったので久しぶりの連絡だ。


「げっ」


幽霊屋敷に来てくれ、だと。

この時間に肝試しでもするのかね? それとも、まだ厨二病なのか?

うーん、いよいよ医者を探さないといけないのかもしれない。アイツの両親海外だって聞いてるし気づいてないと思うし。

とにかく、電話口で言われた通り幽霊屋敷――都市外れの廃墟に向かった。


「うへぇ」


アレだ。見るからにドラキュラ城の。


「おーい、ノラ!」


「遅かったわね、伊武王君」


なんとマイフレンドとは別にもう1人いる。

――腰まである濡れ羽色の髪。衆目を集める美貌とすらりとしたスタイルはまるでモデルのようだ。

芸能人顔負けの美少女、なんて久しぶりに思った。

制服からして、一ノ瀬と同じ学校の子か?


「おい一ノ瀬、そっちの美人さんは誰だ?」


「彼女は……」


「冬月 凪沙よ。あなたからすると“初めまして”になるわね」


「えっ?」


「実は彼女も僕と同じ“転生者”なんだ」


「なるほど。ちょっと、冬月さん来て」


「……何となく言いたいことがわかるわ」


そう言いつつも来てくれる。


「まさかとは思うけど、アイツの厨二病に付き合ってるのか?」


「彼、あなたに魔法を見せたと聞いたけれど。やっぱり信じてないのね」


質問の答えじゃないけど、患者が増えたのはわかった。

嫌だよ、俺。厨二病の相手とか痛たたた。


「それにしても、少し苛立ちを覚えるわね。この私が厨二病ですって?」


「い、いや! だってさ、高校生にもなって魔法やらモンスターやらってね」


その目怖い!


「はぁ、決めたわ。伊武王が可哀想だと思って色々と考えてきたけれど、総司君に任せるわ」


「えっ、何を?」


「ふふふ。覚悟は決めておきなさい、伊武王君」


冬月は踵を返すと一ノ瀬の横をすり抜けて廃墟に入っていく。

当たり前のように黄色のテープは無視なのね。


「ノラ、僕達も行こう」


力強い言葉。本当にらしくない。いつものお前なら『危ないしやめようよ』って言うだろうに。

あークソっ、わけわかんね。

そう思いながら、一ノ瀬の後を追う。


「へぇ……」


入ってすぐに目にしたのは、ダンスホールのような広間だ。穴の空いた天井や壁から差し込む光もあって、思ったより薄暗くなく、何なら秘密の場所っぽさがありワクワクする。

でも、ここ曰く付きなんだよな。


「そういえばここって幽霊出るとか聞いたけど」


「幽霊は出ないけど、モンスターは出るよ」


「何が違うんですかねぇー」


「緊張感無いわね、二人とも」


ギロリと睨まれて縮こまる男達。

マジでこの美人さん怖いんだけど! 俺や一ノ瀬と住む世界違いそうなのに、ホントどうゆう関係だ?


「ここよ、この地下」


地下室に続くと思われる短い階段がある。


「この先に何があるんだ?」


「あなたが厨二病と馬鹿にするものがあるわ。楽しみね」


「凪沙、根に持つね」


「総司君、別に私は根に持ってるわけじゃなくて現実を見せてあげたいだけよ」


「まぁ僕もそれには一理あるけどさ。とりあえず行こうよ。ノラもね」


黙って聞いていたけど、この二人付き合ってるのか? 驚くほど息ピッタリだ。


「何してるの? 早く行こう」


「お、おう」


俺は二人の後ろから階段を降りていく。何故か、冬月は当たり前のように地下室の鍵を持っていて扉を開ける。

もはや突っ込まないよ。電気が通ってることも。

一ノ瀬達に続いて部屋に入ると、満遍なく満ちる蛍光灯の光を浴びてすぐに気づく――小さな子供が部屋の奥で鎖に繋がれていたことに。


「な、なんだ?」


いや、これは子供じゃない!?

一見するとやせ細っていて可哀想な姿だが、顔は人のそれではなく鬼そのものだ。そして、なぜすぐ気づかなかったのか、子供の服を着ているが露出した肌は緑色だった。


「――ゴブリンよ、それは」


「ゴブリン……マジか」


「一応、コスプレじゃないよ。起こせばわかると思うけど」


一ノ瀬は床に転がっていた鉄の棒でゴブリンをつついた。

瞬間、部屋の中に奇声が轟いた。


「ギャアアア!!」


ゴブリンは鎖が千切れないか心配になるほど暴れている。


「相変わらず煩い。今すぐ凍らせたいわね」


「正直、僕も我慢出来ないんだけどダメだよ。コレはノラのために取っといた奴なんだから」


「ちょっと待て待て待て!」


コスプレ? 馬鹿言え、あんな醜悪な叫び声を出すバケモノが人なもんか。だからって、ゴブリンだと。


「あんなのファンタジーの中だけだろ!?」


「落ち着いてノラ!」


「厨二病じゃないとわかった? コレが現実よ。現実にもうモンスターの侵食は始まっていて、一ヶ月後には崩壊するのよ」


冬月はゴブリンを見据えて言う。


「愛おしくて退屈な日常がね」


その表情には諦めが見えていた。

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