プロローグ
やっぱり昼のお供はカップ麺だろ。
我が家には常にダンボール一箱分の蓄えがあるので、そこから一つ取り出してお湯を入れる。待つこと五分と少し長めなのは特に美味いやつだからだ。
「いただきま――ん? このタイミングで来るのかよ」
突然のピンポン連打と俺を呼ぶマイフレンドの声。絶賛腹ぺこ虫が鳴いてるが無視する訳にもいかず、俺は嫌々玄関に赴いて扉を開けた。
「うるせぇ……どした?」
そこには予測通りの目隠れ男子がいたが、何故かやたら汗だくだった。
「ホントどうしたんだよ?」
「お願いだ、ノラ。僕の話を聞いてくれ……っ!」
いつにないマジトーン。ちゃんと聞かずにはいられないけど、寒いから中で話そうや。
その思いを口にするよりも前に、一ノ瀬は捲し立てるように叫んだ。
「信じられないと思うけど、一ヶ月後に世界は崩壊するんだ! だから僕の言う通りに行動してほしい!」
「……はぁ?」
すげぇ真面目な顔でアホみたいな事言ってるぞ。
こやつ脳死作業ゲーし過ぎて頭おかしくなったのかね?
「疲れてんのか? まぁVRはやり過ぎるとちょっとおかしくなるもんな」
「違う!」
「お、おい。とりあえず中で話そうぜ。寒いしな」
何より近所迷惑なので家に上がらせる。
「とりあえず落ち着けって。麦茶しか無いけどさ、いいだろ」
「うん、まだ時間はあるから、そうだよね、ごめん、戻ってきたばかりで頭混乱してた。うん、ゆっくり話すよ」
「おう。こっちも悪いけどカップ麺食いながら聞くぞ」
そうして時間は進み、一ノ瀬から聞かされた話はあまりにも荒唐無稽なくせにたまにリアルで、言うなればアニメのようなものだった。
つまりこういうことか?
自分の中で纏めてみる。
『一ヶ月後、世界はモンスターに襲われる。その中で俺が死ぬのを何度も一ノ瀬は見てきた。そして、一ノ瀬は四回の転生をして今に至る』
……よほどVRにのめり込んだみたいだ。
今はそっとしていてやろうと思い一ノ瀬の話をうんうんと聞いて、今日のところは帰ってもらった。
「掌から炎ねぇ」
さきほど証拠として見せてもらった。
ピンポン玉くらいの大きさで確かに凄い“手品”ではあった。
アイツが落ち着いたら是非タネを教えて欲しい。
何せ、それが出来れば話のネタにもなるし一芸にもなる。ゆくゆくは女子の前で披露してワンチャンあるかもっ!
彼女が居ればつまらない人生に彩りがつくだろう、とくだらない事を考えながら二個目のカップ麺の蓋を開けた。
そして、次の日。
俺は一ノ瀬の話を信じるしかなくなった。何故なら、俺はモンスターを殺して人を辞めたから。




