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着信  作者: 夏世 篤
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真夜中の呼び掛け

※実際に起こった出来事に基づいていますが、登場人物名、地方は事実と異なります。ご了承下さい。

 夏のホラー2021参加作品。 


 これは、本当に私の会社で起こった事を元に書いています。


私が、とある九州の田舎の葬儀社に勤務して2年目位に起こった出来事でした。その会社は、以前から有った別の葬儀社が店仕舞いする時に建物と従業員を何人か引き継いで店舗を増やしたそうです。


最近でこそ、葬儀社がいくつも有り競争も激しいのですが昔は、葬儀社も少なく葬儀社の言い値で葬儀費用も決まっていた様です。亡くなった方の家を見て葬儀費用も決めていた何て話も移って来られた勤務年数の長いパートの方に聞きました。


そんな昔の葬儀社のやり方を引き継ぐ人物が、向井田さん(仮名)です。葬儀の担当になると担当手当が付きます。その手当は、葬儀費用に比例するので、葬儀プランを決める打合せの時にかなり強引に葬儀費用の高いプランに進めて行き、又客商売とは思えない程態度も悪いので苦情も度々来ていました。


ただ、会社の上の人には低姿勢で上手くやっていた様です。会社側も成績は悪く無いので黙認とは言えないまでも放置していた様に見えました。


前置きが長くなりましたが、そんな向井田さんと私に実際に起こった出来事を話そうと思います。



 それは盆に近い、まだ蒸し暑い晩でした。その夜、私は当直をしていました。夜間にも当然亡くなる方がおられる為、会社(葬儀斎場も兼ねる)に交代で泊まり「お迎え」に備える為です。


「お迎え」は、亡くなった方を病院や施設などに迎えに行き、自宅や葬儀斎場に安置する事です。葬儀依頼が来ると、当直と自宅待機の2人一組で「お迎え」に行きます。その夜の待機当番は、向井田さんでした。


深夜、2時前位に会社の電話が鳴り、


『○○と言います。父が亡くなったので葬儀をお願いします。』

『△△さんに、相談をお願いしていました。』


と葬儀依頼が有りました。△△さんは、会社の社員で、○○さんは葬儀の事前相談に来られていたのです。葬儀費用も余り出せないとの事で△△さんと金額を決めての葬儀予定になっていました。私は、


『葬儀依頼が入りました。●●病院に行きます。』 

『依頼者の○○さんは、△△さんに事前相談されたお客さんです。』


と向井田さんに伝えます。2人で搬送車に乗り、病院に行きました。○○さんに同乗して貰い葬儀斎場に向かいます。向井田さんは、斎場での打ち合わせが待てないのか葬儀について○○さんに話し掛けます。○○さんは、


『△△さんと話して有ります。』

『それでお願いします。』


と事前相談した旨を話しますが、向井田さんは、関係無いとばかりに葬儀プランの話しを○○さんにしていきます。余りにもしつこいので終いには○○さんは、


『△△さんに聞いて下さい!』


と悲鳴にも似た声で返してました。向井田さんは、ぶっきらぼうな物言いをして明から様に不機嫌になって行きました。私は、何とかして上げたかったのですが入社2年目のペーペーがベテラン社員に意見出来る筈も無く、○○さんに申し訳無く、気の毒に思っておりました。


斎場に到着し、○○さんのお父様を安置させて頂いた後も諦めない向井田さんは○○さんに葬儀プランの話をしていた見たいですが、翌日に△△さんが出社して来て担当を引き継ぎ事前相談通りの葬儀プランで事は進んで行きました。


私は、良かったなとホッとしたのを覚えています。○○さんの葬儀も無事に終り、数日後の晩の事です。その日は、お盆で私は当直でした。深夜過ぎに仮眠中の私は、


『すいません!』


と言う声で起こされました。その声は、明瞭に当直室のすぐそばで聞こえました。私は、


【誰だろう?】

【正面玄関は、鍵が掛かっているのに、裏口から入ったのかな?】


と寝起きのぼんやりした頭で考えていました。裏口は、急な出入りの為にいつも施錠はして有りませんでした。(田舎なので、施錠しなくても何か起こった事は無い)私、


『はい!』


と返事をして当直室隣の事務室にいきますが誰も居ません。事務室の周りを見てみますが誰の姿も有りません。私は、不思議な気持ちになりました。私に呼び掛けた声はかなり大きく、その声で起こされたからです。


その為心霊的な現象では無く、本当に誰か訪ねて来たと思ったのです。以前ですが、近所の方が深夜、直接会社に来られ葬儀依頼をされた事が有ったのでまたそうかなとも思ったのです。


私は再び仮眠を取りますが、少しすると事務室に人の居る気配がします。起きて、事務室を確認しますが誰も居ません。この頃になると、私も怖くなっていました。


明日も仕事なので、取り敢えず仮眠しますが少し経つと事務室の外からやや早歩きの足音聞こえてきます。事務室の周りを行ったり来たりしている様です。私は、怖くて当直室の電気を点けるとずっと朝まで起きていました。






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